ゲリラ豪雨や台風で、電車が止まったり、まちに水があふれたり……。「都市機能って案外脆い?」と気になるニュースを近年よく耳にします。地震大国・日本にあって、日本の各都市も地震の被害を免れることもできないでしょう。都市での暮らしは、その利便性とは裏腹に、実は大きな危険をはらんでいるものなのかもしれません。
そこで今回は、都市で災害を生き抜くためのいろいろな方法を紹介します。でもその前に、災害が起きると都市はどうなるか、東京を例に見ていきましょう。
ハザードマップいろいろ
「ハザードマップ」という言葉を聞いたことがありますか?地震や豪雨が発生した時の災害危険度を表した地図のことです。国や都道府県、市区町村が作成しています。
地震(建物倒壊危険度)
こちらは、地震による建物の倒壊危険度を示したハザードマップです。東京北東部に危険度の高い地域が集中しているのが分かります。古い木造や鉄骨造が多いという建築事情もさることながら、地盤の弱さも危険度の高さにつながっています。次の図を見ての通り、東京北東部は地盤が弱いとされる沖積低地のただなかにあります。
地震(火災危険度)
こちらは、地震による火災の危険度を記したハザードマップです。環状7号線沿い、JR中央線沿いに危険度の高い地域が分布しています。木造建築物が密集していることと、道路・公園といった火除け地が少ないことが影響しています。
洪水
こちらは、城南地区(大田区・品川区・渋谷区・世田谷区・港区・目黒区)の河川流域浸水予想区域図です。川沿いの浸水危険度が高いのはともかくも、渋谷の街中の危険度が高いのはなぜでしょうか?
渋谷は、実に起伏に富んだまちです。谷・泉・坂・台・山・丘といった地形を表す地名が多いことと、坂道の多さが、そのことを物語っています。高低差があれば、水は当然低いところに集まります。
実は、渋谷の地下には川が流れています。裏原宿・キャットストリートの地下を流れる渋谷川と、井の頭通りの地下を流れる宇田川です。今では地上部分は蓋をされ、暗渠になっていますが、キャットストリートは「旧渋谷川遊歩道路」という道路名に、宇田川は町名に、川の記憶をとどめています。
そして、ハチ公前のスクランブル交差点は、渋谷川と宇田川が合流する地点に位置しています。ゲリラ豪雨で水があふれるのは地形の宿命、渋谷がまさしく「谷」であることを物語っています。
海面上昇
縄文時代、地球の気候は今よりも温暖で、海面は今より数メートルから10数メートル高かったと言われています(縄文海進)。試しに海面を5メートル上昇させたときの東京の姿を表したのがこちらの図。江戸時代以来埋め立てを続けてきた東京東部と沿岸部が、見事なまでに海に沈んでいます。「地球温暖化による海面上昇が現実になったら……」と思うと恐ろしい限りです。
いざ、サバイバル!
情報収集
まずは情報収集から。自治体(都道府県・市区町村)では、今回紹介したハザードマップの他に、避難場所を記した防災地図をはじめ、さまざまな情報を提供しています。災害の発生をメールで知らせてくれるサービスや洪水時に備えた土嚢の無償提供など、知っておくと役立つ情報もあるので、まずは自治体の防災情報をチェックしましょう。
日ごろの備え
家具転倒を防止したり、勤務先や学校からの避難経路を確認したり、日頃の備えが安心につながります。どこぞのテレビCMではありませんが、防災グッズも、いざというとき慌てないための強い見方です。なお、食料や医薬品、生活必需品の類は、自治体や大規模な商業施設でも備蓄しています。ご近所やよく行く施設の備蓄状況も調べておきたいところです。
引越し
情報も集めたし、備えもした、でも心配で心配で眠れないという方にお勧めなのは、お引越し。人類の文明が進歩したとはいえ、自然や地形の影響から自由になることはできません。だとすれば、災害に強い地形を見極め、そこで暮らすのが、人類の知恵の見せどころではないでしょうか。高コストですが、高い効果が見込めます。ちなみに、ハザードマップからは、多摩地区がいずれの災害にも強いことが分かります。地形の問題をクリアしたら、家の構造のチェックもお忘れなく。
神頼み!
万全の備えをしても、それで本当に災害を生き残れるかは分かったものではありません。どれだけ地盤がよくても直下型の地震が来たら一たまりもありません。そもそも、災害が起こるかどうかは、神のみぞ知る世界。災害が起きないに越したことはない、とういわけで、最後は神頼みといきましょう。
地震
昔の日本人は、地震は大鯰(なまず)が引き起こしていると考えていました。日本の聖地として名を馳せる鹿島神宮(茨城県)と香取神宮(千葉県)の両宮には、大鯰を押さえ付けて地震を防ぐと言われる要石が祀られています。この両宮の御祭神は、国譲りの神話に登場する武甕槌神(タケミカヅチノカミ)と経津主神(フツヌシノカミ)。二神が協力して大鯰を押さえたと言われています。「大鯰と要石」の伝承です。由緒正しい両宮にお参りし、要石を拝み奉り、日本列島を取り巻くプレートを動かしている、かもしれない大鯰が暴れないことを祈りましょう。ちなみに、鹿島神宮では地震除けのお守りを授かることもできます。
遠くて行けない、という方もご安心を。関東・東北地方を中心に全国に御霊(みたま)を勧請した分社があるのでご自身で探してみてください。
火除け
古来より、火伏せの神様として信仰を集めているのが秋葉神社(静岡県)と愛宕神社(京都府)です。どちらも、火の神・迦具土神(カグツチノカミ)をお祀りしています。迦具土神は、火産霊神(ホムスビノカミ)の御名のほか、秋葉神社では仏教や山岳信仰と習合して秋葉大権現と呼ばれることもあります。
「秋葉」の字から連想するのは「秋葉原」の地名。明治2年(1869年)、現在の秋葉原駅周辺は大火で焼け野原となりました。防火を祈願し、東京都(当時は東京府)がその地に秋葉神社を勧請したことをきっかけに、「秋葉の原」から「秋葉原」の地名となったと言われています。その秋葉神社は、秋葉原駅建設時に、現在の台東区松ヶ谷(上野駅の北西)の地に移転しました(東京の秋葉神社の由来については異説もあります)。
東京で、秋葉神社より歴史が古いのは愛宕神社です。徳川家康が江戸幕府を開いた慶長8年(1603年)、江戸の町の防火を祈願して現在の港区愛宕山に愛宕神社を勧請したのが始まりと言われています。
火は人間の生活に欠かせないものであると同時に、あらゆるものを焼き尽くす恐ろしい一面もあります。火のありがたみに感謝して火の神の荒ぶる心を鎮めて、まちと家を火災から守りましょう。
秋葉神社・愛宕神社も全国各地に分社があるので、お近くの神社へお参りください。
ところで、神社でぐるぐる渦を巻いた紋様を見たことはないでしょうか?瓦や垂木に多く使われています。巴の紋様です。巴の形が渦を巻く水に見立てられ、巴の水が火災を防ぐと昔の日本人は考えていました。渦の向きが逆向きだったり、巴の数が一つだったり二つだったり、さまざまなバリエーションがありますが、そこに込めた思いは同じです。これから家を建てるという方は、防火の思いを巴の紋に込めてみてはいかがでしょうか。
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