greenz記事「ビジネス志向で社会的課題に挑むフロンティア!『社会起業家』って最近どうよ?」でも触れたとおり、社会起業家を取り巻く環境はますますホットだ。米国では「Acumen Fund」や「Bay Area Equity Fund」など、ソーシャルビジネスに特化する投資ファンドも増加しており、社会起業家の資金調達は従来よりも柔軟になってきている。とはいえ、この環境は一朝一夕で形作られたものではない。そこで、これまでの代表的な取り組みとして、世界60カ国以上2000人を超える社会起業家を支えてきた団体「アショカ財団(Ashoka: Innovators for the Public)」について取り上げてみよう。
「アショカ財団」は、社会起業家と市民セクターの育成を目指し、経営コンサルティング会社・マッキンゼー(McKinsey&Company)に勤務していたウィリアム・ビル・ドレイトン氏が1980年に設立した団体だ。「社会変革を推進するためには社会起業家に投資することが最も効果的である」との考えから、設立当初より「アショカ・フェロー(Ashoka Fellow)」という社会起業家への支援プログラムを運営している。このプログラムでは、毎年フェローと呼ばれる”門下生”を選出。彼らに給与を支払うことで経済的に支援するとともに、専門的なアドバイスや世界的なネットワークを提供している。設立時には5万米ドル(約470万円)程度だった年間予算も今では3000万米ドル(約28.2億円)を超えた。
greenz記事「米大学生の人気就職先!次世代リーダーと子供が共に育つ『Teach for America』」で紹介した「Teach for America」の創設者・ウェンディ・コップ氏(Wendy Kopp)をはじめ、これまでに「アショカ・フェロー」を通じてサポートを受けた社会起業家は世界60カ国2000人以上。次の動画で紹介されているように、人権・健康・経済開発・教育・市民参加・環境など様々な分野で社会的課題の解決に取り組む人材を育てている。
さらに、2009年、アショカ財団に新たな仲間が加わった。スラム街の居住者が安い費用で住宅を買えるようにする新しい住宅スキームを作ったパキスタンのTasneem Siddiquiや、貧困層を対象とするケニアのマイクロファイナンス機関「JamiiBora」を設立したIngrid Munro、オープンプラットフォーム「mySociety」を立ち上げた英国人・Tom Steinbergなど、世界の社会起業家24名がフェローとして選出されている。
今でこそメジャーな存在となりつつある社会起業家を30年も前から地道に支援し続けているアショカ財団自身こそ、社会的な課題に果敢に立ち向かってきた真の社会起業家ともいえよう。Ashokaが社会起業家をサポートすることで、社会変革のための”エンジン”が育ち、この”エンジン”が世の中をよりよい方向に着実に変えている。社会変革を実現するひとつの方策として、アショカ財団の歩んできた軌跡には学ぶべきものが多い。
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