一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

バリ島グリーンスクール視察レポート(3):すべての人をハッピーにするコミュニティ

(c)greenschool

(c)greenschool

バリ島グリーンスクールレポート最終回!
1回目2回目の記事では、グリーンスクールがパーマカルチャーの考え方をコンセプトに、植物や動物だけでなく、建物、食、水、エネルギーなど、生活に必要なモノすべてをデザインの対象とし、そのどれもがかなりかっこよくデザインされ、子どもたちが大自然というキャンパスの中でのびのびと生きる知恵を学んでいる様子をお伝えした。最終回となる今回は、「自然との共生を目指す」ことを哲学に掲げているグリーンスクールが地球・地域への配慮、かかわり方として具体的に取り組んでいるプロジェクトを紹介しよう。

通勤ストレスなし!働く人もハッピー?になれる職住隣接のライフスタイル

グリーンスクールは、その名の通り「学校」としてのコミュニティがあるわけだが、今回私が実際に視察して一番驚いたのが、実際にキャンパス内で暮らしている人たちがいることだ。彼らは、10万㎡のキャンパスの東側に建てられたサステナブルホームといわれる9戸の家に住む教師や職員、そしてその家族たち。今回、1時間半にわたり広大なキャンパスを余すところなく親切に案内してくれた、グリーンスクールのスポークスマン ベン・マクローリー氏も、2歳の娘(グリーンスクール最年少)と奥さんの3人で暮らしている。ベンと家族は、グリーンスクール設立の際、当時のディレクターから誘われ、ニューヨークからバリへ移住してきた。その際、提示された雇用契約の中に、福利厚生としていま住んでいる家がもれなくついてきたというから驚きだ。

sustainable-homes

大都会から自然あふれるジャングルへの移住は、「通勤のストレスもなく、環境にも優しくて、さぞかし気持がいいだろね!」と羨む私に、「実際に暮らしてみると、見たこともない巨大昆虫や動物が家の中を這いずりまわり、慣れるまでに相当時間がかかったよ」と苦笑いのベン・・・。そりゃあ、そうだ。だって、ほとんど家の中と外の区別がない造りですから(開けっ放しで盗難とかはないんだろうか?笑)。

bens-family
一応、家の中です。窓はありません

img_3577
ベンの愛娘マギーちゃん(2歳)。毎朝自分で靴をはき、学校に行くのが待ちきれない様子。最近インドネシア語を話すようになってきたとか。

地球と地域をハッピーにするコミュニティプロジェクト

2008年9月に開校したばかりのグリーンスクールだが、計画段階から地元住民と密接にコミュニケーションをとり、新しい雇用を創出し、コミュニティに還元してきた。これまで、熱帯のジャングルの中で農業に従事することしかできなかった人たちに、役割と責任を与え、生産した作物の管理、正しい販売の仕方を教え、農業を通して健全なビジネスマインドを育てたり(キャンパス内の畑を管理するフルタイムスタッフは20名)、PT Bambu社で働く竹職人85名に対して職業訓練を行っている。

guardman1
守衛さんもかっこいい。流暢な英語で出迎えてくれた

雇う側と雇われる側、という利害関係ををつくってしまうことを、グリーンスクールでは極力避けている。グリーンスクールにかかわるすべての人がハッピーに共生、共存し、壮大なビジョンを実現させるための対等なパートナーだととらえている。その一例として、「資源の共有」がある。1回目の記事で紹介したとおり、現在グリーンスクールで使われている竹は、ジャワ島から輸入していて、カーボンフットプリントが高くなっている。それを解決する、竹の地産地消ソリューションが、コミュニティ・バンブー・プロジェクトだ。

bamboo-community-project

このプロジェクトの仕組みは、こうだ。

1)竹の苗を地元住民に無償貸し出し、住民はそれを栽培する。
2)竹の繊維膜に、GPSを取り付け、Google Earthで植生をモニタリングする。
3)毎年、生長に応じて最終的な買い取り額(あらかじめ市場価格をベースに取り決めておく)から分割して支払い、収穫時に残格を払う。

このプログラムによるメリットは、

1)グリーンスクールに欠かせない素材を永続的に手にいれ
2)コミュニティの経済を支援し
3)木材にかわるオルタナティブでサステナブルな建材の市場をつくり
4)森林伐採などによる環境破壊の悪化を食い止め
5)みんなで自然を守り、育てていくという連帯感がコミュニティにうまれる

・・・まさに、greenzが提唱しているgreen thinking一石n鳥モデルそのもの!。

credit_gs-bamboo-project
数cm~30cm程度の苗を栽培中

bamboo-donors
寄付者や生徒・職員の名前が刻まれているバンブー。将来的には、ここにバンブーの育て親となる地域住民の名前も刻まれ、コミュニティ全体でグリーンスクールを造っていく予定だ

グリーンスクールを訪れてみて感じたことは、(あたり前だが)理屈ではなく、自然の中に身を置き、自然を感じ、感覚的にサステナブルとはどういうことかを身につけること。多角的な視点をもち、多様な価値観を受け入れて、常に全体をみてホリスティックに考えること。

昨今、「自然との共生を目指します」、的フレーズはバズワードのように世の中にあふれていて、コチラでも人間がとるべき行動としていくつか意見がでているが、もっとシンプルに考えると、大事なのは、まず人間が自然の中で暮らしてみて、自然を感じる、ということが重要なのではないかと思う。自然を理解する、なんてことは、そう簡単に、短期間にできることでもない。むしろ、誰の所有物でもなく、(人間の願いなんておかまいなしに)刻々と移り変わりゆくものが自然だとするならば、そもそも自然を解しようなんて思うこと自体、大人たちの勝手なエゴかもしれない。ただ、少なくとも、グリーンスクールの大人たちは、次世代を担う子どもたちのために、彼らがもつ感受性、自然への順応力、理解力、想像力を最大限伸ばすさまざまな工夫を凝らし、いまを生きる大人の責任として、あるべき持続可能な未来の姿を示し、共に歩んでいるように思えた。

翻って我が国、ニッポンの教育。
経済協力開発機構(OECD)の『図表でみる教育』によると、日本の初中教育の公的支出はGDP比2.6%、高等教育0.5%(いずれも2008年度データ)、OECD諸国中それぞれ最下位から3位、並びに最下位。ちなみに初中教育で成績がよいフィンランドは、4%近い。もちろん、GDP比だけが指標ではないが、受験や競争を前提した効率重視、詰め込み型の日本の教育システムでは、「何を学ぶか」ということより、「どの学校で学ぶか」ということが重要視されているように思う。その結果、子どもたちが本来もっている豊かな感受性を引き出し、、自然への順応力・理解力を高め、想像力を伸ばす環境は残念ながらまだまだ少ない。

子どもの発想力は無限だ。大人には考えつかない斬新なモノの見方やイノベーティブなアイディアがあり、子どもの感性にこそ未来が詰まっていると思う。地球のサステナビリティやサバイバビリティを語るなら、大人たちは、まず、子どものクリエイティビティを育てる環境を用意してあげることが必要なのかもしれない。

世界中から多様な人材を集め、壮大なビジョンを掲げるグリーンスクールの挑戦は始まったばかり。今後の動きもgreenzでアップデートしていくし、連携しながら共同プロジェクト?なんて話しもあるかもしれない。そして、greenz も自分たちのサステナブルコミュニティのビジョンをしっかりと描き、すべての人、生命がハッピーに生きられ、世界が注目するgreenz villageの実現を目指して頑張っていきたいと思います!

【お知らせ】
全3回グリーンスクールの記事を読んで頂いて、できることなら我が子をグリーンスクールに!!と思った親御さんもいらっしゃるのではないかなと思い、嬉しいお知らせを!

いくらかわいいわが子のため!といえど、家族そろってバリに移住はちょっと現実的ではない・・・・そんな人のために、来年度(2010年8月~)には寄宿制と高校がはじまり、将来的には生徒数を400名まで受け入れ可能だ。いやいや、それもちょっと・・・なんて方は夏から始まったばかりの、グリーンキャンプがおススメ。

詳細のプログラムは、コチラの通りだが、1日70 ドルから参加できるようなお手軽フィールドキャンプのものから、中長期(最長18日。7月20日から開催)滞在型のサマースクールを開催している。クラスルームでのレクチャーだけでなく、山や川、海での各種アウトドアアクティビティや、バンブー建築ワークショップ、バリの伝統文化を体験し、リーダーシップや、サステナビリティについてホリスティックに学ぶ絶好の機会だ。今年の夏休みはバリで決まり?!

さらに将来的には、各国の教育機関、学校と提携し、その学校のニーズにあわせた滞在型プログラムをコラボレーションする予定だ。来年には、英語が苦手な日本人にとって嬉しい、英語を母国語としない人たちのためのESLプログラム(ESL = English As Second Language)を開始することも検討中!greenz.jpでも引き続きその動向をウオッチしていくし、コラボ企画を作っちゃうかも?!

詳しくは、green schoolに問い合わせを!

夏休みは家族そろってグリーンキャンプに参加してみよう!