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バリ島グリーンスクール視察レポート(1):百聞は一見にしかず!世界が注目するサステナブル教育の最前線へ潜入取材!

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こんにちは!greenzコミュニティディレクターの松原広美です。毎月のgreendrinks Tokyoや各種イベントでちょっとずつ言い始めているのですが、greenzはメディアアクティビスト(行動するメディア)として、greenz villageなるサステナブルコミュニティを創ろう!、というビジョンがあるんです。

それは、greenzのオンラインコンテンツと連動するようなオフラインのリアルな場をもつことで、「言っていることと実際の生活のギャップを少なく」し、よりサステナブルで、ワクワクする暮らしを実現させようというものです。そこで、先日サーフトリップでバリ島を訪れたついでに、最近気になっているコミュニティ、未来のアントレプレナーたちを育成するグリーンスクールを視察してきました!その様子を全3回のレポートでお届けします。

グリーンスクールの概要については、以前の記事を読んで頂くとして、写真を見ながら早速グリーンスクールを覗いてみよう!

greenschool-gate

グリーンスクールを語るには、まずそのスケールの大きさを語らずにはいられない。自然に富み壮観な景色で名高いアユン川(Ayung River)沿いに、10万㎡(東京ドームのおよそ2倍!)のキャンパスが広がる。キャンパスはアユン川で西と東に分かれており、西側は教育の場として、教室、多目的ホール、運動場、東側は、地域コミュニティとの共有の場として、コミュニティキッチン、教師用の住居が設置され、「クルクル橋」というオール・バンブー(竹製)の橋で行き来できるようになっている(広大な敷地図は、コチラ

ayun-river
左側奥に囲いでつくられたのは、天然のプール!。子どもたちにとって大自然の中の水遊びは気持ちよさそう。

bamboo-bridge
学校建設にあたり、最初に造られたクルクル橋。文字通り、地域コミュニティと学校を橋渡しする役割。村人も日常的に行き来する。

green school campus overview
東側の高台から西側を臨む。元は(いまでも?)熱帯のジャングル

オール・バンブーへのこだわり

これほど壮大なスケールとなると、気になるのが環境破壊や環境負荷だ。しかしグリーンスクールに一貫する哲学は、「自然と人との共生」。創設者のジョン・ハーディーは、ABCニュースのインタビューに対して、こう語っている。

Children need to experience the physicality of greeness. Teaching green in an unsustainability concrete box may not be so effective.

(子どもたちは、自然を愛するココロや環境への関心(greeness)を実体験としてもつことが大切だ。グリーンやサステナビリティについて学ぼうとするとき、サステナブルではないコンクリートの教室だと気持ちよくないし、効果的じゃないだろう?)

次世代のモデルとなるような理想の学校を創るなら、デザインもクオリティも環境性能も徹底的にこだわりたい、そう考えてジョンがたどり着いたのが、竹だ。

green school founder - John and Cynthia Hardy
(c) greenschool. 創設者のJohn, Cynthia Hardy夫妻

ハーディー夫妻は30年前からバリ島に住み、ハンドメイドのジュエリービジネスで大成功をおさめたカップル。そして、ジュエリービジネスを手放し、その売却益(およそ500万ドルをバリ政府に寄付したとか)を資金源に土地を購入したことが、グリーンスクールのはじまりだ。

二人は、まず、グリーンスクールの建設にあたり、2007年にPT Bambu というデザイン会社を立ち上げ、グリーンスクールの建物はもちろんのこと、教室をはじめ、机や椅子など使われている竹製品を、すべてこのPT Bambuでデザイン、制作することから始めた。気になる学校建設にかかった費用は、なんと全体で10億円程度!!(現在未着工、未完成のものも含めて)。

すべてが世界初の取り組みで試行錯誤の繰り返し、結果、建物自体は完全な投資(赤字建築)になってしまったらしいが、キャンパス全体がバンブー建築の一大展示場となり、常識を覆すユニークな流線形のバンブー校舎はメディアのみならず、環境活動家や著名作家など世界中からたくさんの人が視察に訪れる。そのパブリシティのおかげもあってか、グリーンスクールの建築スタイルを取り入れたエコリゾート開発など新規プロジェクトの受注も順調とのことだ(現在は、セイシェル島のエコリゾートを手がけている)。

pt-bamboo
グリーンスクールの敷地に隣接するPT Bambuのオフィス

pt-bamboo-factory
現在85名のフルタイムスタッフが働くPT Bambuの工場。村人への職業訓練や雇用創出と地域と密接に連携している

heart of school
完成間近の世界最大級のバンブー建築 ”Heart Of School”。将来は、図書館、コンピュータールーム、カンファレンスセンター、アートミュージアムなど、多目的ホールとして使用される予定だ。

heart-of-school-computer-lab
ここがコンピュータールームとなる予定。オープンエアで気持ちよさそう!

bamboo ceiling
3階建で吹き抜けの天井が気持ちいい

写真を見て頂くとお分かりの通り、キャンパス全体がオール・バンブーで、窓も扉もなく、開放感たっぷり。では、そもそも何故、竹を選んだのだろうか?実は、ここにもハーディー夫妻のビジョンが反映されている。

PT Bambuのウェブサイトによると、竹のメリットとして以下のような点が挙げられている。

  • 竹は、生長が早く簡単に栽培できる。熱帯のバリ島では、3~5年で25m~35mほどに成長し、建材として利用できる
  • 同じ重さの鉄や鉛よりも強度がある< li>
  • 弾力性、耐久性に優れ、日本の原爆投下後、最初に蘇生した植物と言われている
  • 抗菌作用があり、悪臭防止になる
  • コットンと比べて倍の吸水性がある
  • アジアでは、竹は神秘的な植物として考えられている
  • 窒素固定能力により、土壌の肥沃度を増進させ、排水の浄化も行う
  • 繊維、紙、燃料としてもつかえ、余すところなく活用できる
  • 確かに、竹は、その性能が優れているだけでなく、従来建材として使用されてきた手間のかかる木材と比べて低コストで管理がしやすく、はるかに自然環境への負荷が少ないと言う主張も一理ある。しかし、実際のところ、グリーンスクールで使われている竹は、現在お隣のジャワ島から輸送しているので、カーボンフットプリントが高くなってしまっている。ただ、そこは、壮大なビジョンを掲げるグリーンスクール。竹の地産地消、地域経済の活性化を目指したソリューションとして、バンブー・コミュニティ・プロジェクトなるものを立ち上げている。これについては、3回目のレポートで詳しく述べるとしよう。

    学校建設に欠かせない竹の現在の調達方法は、(輸送のことを考えると)100%環境に配慮しているとは言えない。ただ、計画・設計・施工の段階で周辺環境との循環・調和を重んじ、未来の象徴ともいえるサステナブルな素材(竹)にいち早く着目し、革新的且つ、かっこいいデザインを創りだしたPT Bambu社とグリーンスクールのコラボレーションは、学校や教育のあるべき姿という本質的なメッセージとビジョンを、自らのプロダクトで実践、検証、発信していく、という、まさに冒頭で述べた「やっていることと言っていることを一致させる」いい実例だ。グリーンビジネスやグリーンビルディングの参考事例として覚えておきたい。

    次回は、こんな素敵な学校の気になるキャンパスライフを紹介予定。お楽しみに!

    【お知らせ】
    できることなら我が子をグリーンスクールに!!と思った親御さんもいらっしゃるのではないかなと思い、嬉しいお知らせを。

    いくらかわいいわが子のため!といえど、家族そろってバリに移住はちょっと現実的ではない・・・・そんな人のために、来年度(2010年8月~)には寄宿制と高校がはじまり、将来的には生徒数を400名まで受け入れ可能だ。いやいや、それもちょっと・・・なんて方は夏から始まったばかりの、>グリーンキャンプがおススメ。

    詳細のプログラムは、コチラの通りだが、1日70 ドルから参加できるようなお手軽フィールドキャンプのものから、中長期(最長18日。7月20日から開催)滞在型のサマースクールを開催している。クラスルームでのレクチャーだけでなく、山や川、海での各種アウトドアアクティビティや、バンブー建築ワークショップ、バリの伝統文化を体験し、リーダーシップや、サステナビリティについてホリスティックに学ぶ絶好の機会だ。

    さらに将来的には、各国の教育機関、学校と提携し、その学校のニーズにあわせた滞在型プログラムをコラボレーションする予定だ。来年には、英語が苦手な日本人にとって嬉しい、英語を母国語としない人たちのためのESLプログラム(ESL = English As Second Language)を開始することも検討中!greenz.jpでも引き続きその動向をウオッチしていくし、コラボ企画を作っちゃうかも?!

    詳しくは、green schoolに問い合わせを!