キミの体はコーンで出来てるね
そんな不思議な一言から始まる映画「キング・コーン」が、4月25日から公開されている。
主人公は2人の大学を卒業したばかりの青年。親友同士の2人は、コーンが大好きなことから土地を借りて、コーンを育ててみることに。すると、なんと「育てる」だけで国からお金がもらえることがわかってウハウハ。しかし、その構造を調べてみると、驚くべきことが……。そして、2人のコーンをめぐる旅が始まり、最終的に彼らがとった結論は……。
元々はテレビのドキュメンタリー番組であるこの映画は、アメリカの優れた放送作品に贈られる、ピーポディ賞も獲得した作品。現在のアメリカにおける農の現在を、非常にわかりやすく、実感を持って知ることができる。中にはアメリカでは容認されている遺伝子組み換えの話にも少しだけ触れられたりしているが、その扱いが「ほんの少し」なのも、かえってリアルだ。
黄色いコーンの山
そしてこの記事の冒頭の会話があらわすとおり、実際、コーンは驚くほどの食品の「原料」となり、私たちの口に入っている。コーン自体を食べているほかに、家畜の飼料にもなっているし、清涼飲料水や、飴などの甘味料「コーンシロップ(果糖ぶどう糖液糖など)」も、コーンでできている。実際、映画の中で主人公たちの髪の毛から分析した炭素の成分を比べると、コーンと同じ仕組みの炭素でできているという結果が出ていた。
編集部でも、さっそく駅のキオスクに行き、一体どのくらいの商品にコーンシロップが使われているのか、調べてみた。あっという間に、10種類程度の食品が集まったがそのほとんどは、清涼飲料水。炭酸入り、スポーツドリンクなどが大半を占めるが、中には紅茶の甘味料としても使われているようだ。その他はパン、ソフトキャンディ、グミキャンディなど、食品にも使われていた。
だが、この作品は「だったらこれらを摂るのをやめよう」という映画ではない。知らない間に私たちの生活の奥深くに染み込んでいる「現代の農」をしっかりと捉え、そこから私たちに何ができるかを、改めて考えようとする映画だ。この映画を見た日本の農家の方は「これは日本の米とまったく同じ構造だ」と言ったという。そういう観点でも、興味深く見てもらえると思う。
キング・コーン~世界を作る魔法の一粒~
編集・製作 アーロン・ウルフ/主演 イアン・チーニー カート・エリス マイケル・ポーラン他
2007年/アメリカ/カラー/90分/提供・配給 インターフィルム/配給協力・宣伝 エスパース・サロウ
シアター・イメージフォーラムにて上映中
【特別トークショーも!】
5月12日(火)19:00~ 辻信一さん(文化人類学者・環境運動家)
コーンシロップを作る過程での微生物にも遺伝子操作が!
それでもウマい! 韓国の麦茶コーン茶