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greenz.jpに寄せられた「日本版グリーンニューディール」のアイデア、ご紹介します!

Creative Commons, Some Rights Reserved, Photo by Massimo Valiani

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2月16日に締め切られた日本版グリーンニューディール構想のアイデア募集。環境省によると、800件を超える提言が寄せられ、3月に入って早々、政策の骨子が設けられたとの報道もありました。

greenz.jpでは、積極的な政治参加は、国民の権利であり、義務であり、より良い未来を築くチャンスでもある、という考えのもと、みなさんに日本版ニューディール政策へのアイデア投稿を呼びかけました。今回は、その呼びかけに応えてくれた方の提言を発表!さらに、友人と共にアイデアをまとめて提言を投稿した私自身の体験談もご紹介したいと思います。

まずは、寄せられた提言の紹介から。

タラレバさん

車社会からの脱却の第一歩としてのタクシー利用促進案。
個人所有の車を売却した人に対して割引タクシーチケットを与える。そのタクシーチケットの利用率の高い会社に対し、車種の多様化、低燃費化する場合に法人税を一部免除することで車の買い替えを促す。メリットとして個人の自動車需要が減っている日本の自動車業界に対してビジネスモデルの変化を促すこと、タクシー業界での雇用の創出や活性化、渋滞の緩和、自動車所有にかかる費用を抑えられ可処分所得が増えることなどが挙げられる。

みわさん

環境ボランティア・ポイント制度。2012年までの日本の温室効果ガス削減目標達成のためにも必要とされる荒れた森林の経営。でも、森林を整備するボランティアはまだまだ足りない。そこで、森林整備や植林、ゴミ拾いなどの環境ボランティアに参加した人に、環境に配慮したアウトドア用品やエコツアーへの参加費用が割り引いてもらえるポイントを与えては?環境配慮型商品の開発やエコツーリズムの振興にもつながり一石二鳥!

メタン君

・生活者の視点から生まれる自発的なグリーン経済
・国土と制度の改変を伴う中長期のグリーンな社会改革
・世界の生活者のサステイナビリティーで支えあうグローバルグリーン経済の構築

タラレバさん、みわさん、メタン君、ご投稿ありがとうございました!

今回greenzに寄せられた提言は、以上の計3件となりました。greenzスタッフが投稿した5件を合わせて計8件。全国から寄せられた提言の1%に当たります。

自分一人ではどうもアイディアが浮かばない……という人は、家族や友達やパートナーと一緒にアイデアをつくってみてはいかがでしょうか。楽しんで議論しているうちに、自分でもびっくりするようなアイデアが浮かぶこともあります。ということで、ご参考までに、私が今回、異業種の友人と共にアイデアづくりをした際の主なステップをご紹介します。

(1) まずは、目指す社会を想像して、その状況(または特徴)を挙げてみる。(『~が、~する/しない。』という文章をつくると、次からのステップが比較的スムーズに進むと思います。)
例)みんなが、環境や社会に悪い影響を及ぼす商品、サービスを買わない。

(2) (1)の実現に必要な「機能」を考える。
例)環境や社会に悪い影響を及ぼす商品、サービスを見分けるための事業所・店・公共施設等のモニタリングと地域住民への情報発信

(3) 「機能」を果たすための「しくみ」を考える。
例)地域の事業所・店・公共施設等の環境パフォーマンスをモニターし、評価し、公表する機関の設立

(4) (3)の「しくみ」で兼ねることのできる追加機能や効果を挙げる。
例)グッドプラクティスの共有、グリーンビジネス創出の支援、など

(5) 「しくみ」が果たす機能と、その効果(社会への影響)を図にしてみる。矛盾やもれが見つかれば訂正する。

そして、このようなステップを踏み、できあがった案は、以下の通り。

■『グリーン評価員制度による雇用拡大、景気浮揚、環境保全の実現』■

【目的】

1.雇用創出(評価員選任およびグリーンビジネス創出による雇用)
2.景気浮揚(グリーン企業の収益向上およびグリーンビジネス創出)
3.環境保全(企業活動のグリーン化および消費者のグリーン消費意識の向上)

【概要】

違法駐車撲滅に高い効果を発揮した駐車監視員制度 を参考に、事業主などの持続可能性を評価し、パフォーマンス向上の支援をするグリーン評価員制度を構築する。

【機能(1)所轄企業の持続可能性パフォーマンス評価】

地域ごとにグリーン評価機関を設置し、グリーン評価員を配備する。グリーン評価員は、法に定められた権限に基づき(みなし公務員)、地域のすべての企業、事業主、公共施設などの持続可能性パフォーマンス(環境法規制遵守、環境配慮設計、CSR調達など)を定期的に現地調査する。 グリーン評価機関は、現地調査結果に基づきパフォーマンスレベルを評価・公表する。

【機能(2)パフォーマンスが低い組織への支援】

グリーン評価機関は、上記パフォーマンスレベルが低い組織に対して以下を含む支援を行う。
・パフォーマンス向上に向けた効率的な施策のアドバイス
・融資、調達などに有効な制度・支援組織の紹介・情報提供
・環境と利益の両立につながる施策のアドバイス(地元他企業との共同物流・共同購買など)
・環境配慮製品の開発加速およびグリーンビジネスの創出支援
・グッドプラクティスを学ぶセミナー等の開催

【機能(3)評価結果の公表と消費者啓発】

以下の効果を期待して、パフォーマンスレベルを公表する。
・パフォーマンスの低い企業に対する市民の目の厳格化
・パフォーマンスの高い企業からの購買意欲の向上
また、市民に対してセミナー等を積極的に開催し、グリーン消費意識の向上を図る。

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大統領主導で動いている米国や韓国とは異なり、日本版グリーン・ニュー・ディールは環境省主導の制度です。そこで、環境省の制度でありながら他省の関連制度や融資を活用できる制度づくりを目指しました。また、地域のビジネスや公共施設が抱えるリスク、機会、可能性、ニーズを把握し、その地域に合った新しいグリーンビジネスを提案できる専門家の育成を念頭に置きました。

ディスカッションを開始してから提言が完成するまで、約半日。その間、お互いが思い描く「持続可能な社会」について語り合ったり、既存の制度を調べたり、異なる立場の視点から制度案の効果や役割を検証したり。身の回りで起きていることを、当事者意識を持って振り返ることができたような気がします。そう考えると、アイデアづくりこそ、持続可能な社会形成に貢献するアクティブ・シチズンになるための大切な過程なのではないかとさえ思います。

少し話題がずれてしまいますが、先日、「エルサレム賞」を受賞した作家、村上春樹さんが、授賞式のスピーチでこんなことを言いました。

We must not allow the System to exploit us. We must not allow the System to take on a life of its own. The System did not make us: we made the System.
(「システム」が私たちを食い物にすることを許容してはいけない。「システム」が独り歩きするのを許容してはいけない。「システム」が私たちをつくったのではなく、私たちが「システム」をつくったのだから。)

村上さんはスピーチの中で、「壁」(または「システム」)と「卵」というメタファーを用いて、体制(国家、政府、制度など)と個人との関係について語りました。私たちは、「壁」に常に直面している「卵」で、「壁」にぶつかると容易にこわれてしまう。でも、私たちは、その「壁」をつくってしまった張本人でもある。「卵」を割らない「壁」をつくれるのは、私たちだけなのだ、というメッセージだと私は受け取りました。今回のように、政府が国民に政治参加を求めたとき、それに応じるのは、「卵」が安心して孵化できるような「壁」をつくっていくことではないでしょうか。