秋には黄金色に輝き頭をたれる稲穂、「田んぼ」は日本人の原風景である。そして、その田んぼはただ私たちの食生活を支えるだけでなく、水に生きる昆虫をはぐくみ、鳥たちの餌場にもなっている。そして、それは日本のみならず、広くアジア各地にもあてはまることなのだ。その「田んぼ」をテーマにしたドキュメンタリー映画、その名も『田んぼ』がこのたび完成、11月23日には国内初の一般上映会が行われた。
この作品はNPO生物多様性農業支援センターが企画制作、日本と韓国の田んぼを通して生物多様性の維持と食糧生産の両立について考える意図で作られた映画である。そしてこの映画が作られる背景にはラムサール条約の存在があった。
11月4日に第10回ラムサール条約締約国会議で採択された日韓共同提案による「水田決議」は、水田が多様な生物の生息地であることを認め、水田を保全し生物多様性に配慮した持続的な農法や水の管理の推進を奨励することを決めた。また、田んぼは人工的な湿地としてラムサール条約の登録対象であり、実際に宮城県の蕪栗沼は周辺の水田とともにラムサール条約に登録されてもいる。この映画「田んぼ」はこの「水田決議」の採択を支援することも目的の一つとし、映画の中には蕪栗沼ももちろん登場するのだ。
その採択がなされた今、この映画を見ることで「田んぼ」がいかに環境とサステナブルな社会に貢献しうるかを考えるというのは、日本とアジアが世界の環境にいかに貢献できるかを考える大きなヒントになるのではないだろうか。