今年の4月、グリーンピースのスタッフ2名が、鯨肉を運送業者の倉庫から持ち出し、逮捕された。このことについて、さまざまなメディアによるさまざまな記事をまとめ、考えてみたい。
まずはgreenz.jpの立ち位置の表明だが、greenz.jpでは過去、グリーンピースが中心となって開催した「9条世界会議」や、「スイスの氷河で600人がヌード撮影!ストップ地球温暖化!」などをニュースにしてきたり、渋谷や恵比寿で憲法9条をテーマにしたクラブイベント「peace9.org」を共同で開催したりしてきた。グリーンピースの活動や主張すべてに対して、無条件で賛同しているわけではないが、基本的には彼らの考え方と一致する部分が多い。ただ、マーケティングやリーチの手法、活動の手法について、よりよい方法があると考えていて、彼らにもそれはたびたび伝えていたりする、という関係である。
しかし今回に関しては、まずは冷静に全体を把握するためのリンクを掲載していき、機会があれば彼らから本音を聞いていきたいと思っている。
この事件は、調査捕鯨船「日新丸」の乗組員が、大量の鯨肉を横領しているという内部告発により、グリーンピース・ジャパンが調査を開始。乗組員が送った荷物の伝票番号から青森の運送業者倉庫におもむき、鯨肉の入った荷物を持ち出した。そして6月20日、窃盗容疑などでグリーンピース職員2名は逮捕。それに続き、事務所と職員の自宅、事務局長の星川淳さんの家が家宅捜索された。
今までの動きは時系列順にまとめたこちらのページ(JanJanNews)を見るとわかりやすいと思う。
まずは、マスメディアの報道から。
グリーンピース職員を「活動家の男」とアナウンスしているところが特徴的。
それに対してグリーンピース・ジャパンは下記のような動画で、自らの立場と、職員の即時釈放を主張している。また、世界へ向けて、釈放を求めるオンライン署名を開始している(グリーンピース公式Webサイトより)。
事務局長の星川淳さんや、今回逮捕された佐藤潤一さんも登場。
また、農水省が乗組員の鯨肉横領の疑いがあることについて「透明性を確保」したほうがよいというコメントを公開している(時事ドットコム)。
そして、オーマイニュースに書かれた、20日の星川淳さんの会見。
今回の経緯について、星川さんの視点からの情報が詳しく掲載されている。
―――今回の侵入は、GPJでは事前に知っていたのか?
知らないと思う。私も知らなかった。「中身を確認して返すつもりだったが、証拠物の迫力は大きく、これが目に触れることが日本で固定化した調査捕鯨を正すために必要と判断した」と本人達は述べている。
21日の星川淳さんの会見(産経ニュース)。
政府や大企業の犯罪行為を防ぐ緊急性がある場合、結果として法を犯すこともあるのは世界のNGO活動のスタンダード
持ち出した鯨肉は乗組員の横領の証拠品として東京地検に提出した、としていたが、東京地検は乗組員を不起訴処分とした、というニュース(asahi.com)。しかし星川淳さんは21日の会見にて、誤報であると指摘している。
が、「不起訴は理解に苦しむ」とコメントした、という記事も(時事ドットコム)。
メディアの論調としては、事実を淡々と伝えながらも、社説などで「やりすぎではないか」とするところが複数見られた。こちら(読売新聞)やこちら(愛媛新聞社)がそうだ。
また、鯨肉を持ち出したことについて、タイトルなどで「窃盗」という言葉を使うメディアと「持ち出し」という言葉を使うメディアとにわかれた。その一方「NGOいじめだ!」とするもっともグリーンピースを擁護する記事がJanJanNewsに掲載されている。
そんな中、23日青森地裁は、グリーンピース2人の拘留を10日間延長したと発表(AFPBB News)した。
同日には、今回の逮捕の背景にあると報道されているIWC(国際捕鯨委員会)の総会が、チリにてはじまった(産経新聞)。このIWCにおいて日本は、小規模な商業捕鯨の再開を求めるとされている。IWC総会の開幕において、いやがうえにも捕鯨問題がクローズアップされていく。まだまだ波紋は広がりそうだ。
そして、今回の件を受けて「日本のメディア操作を心配するNGO有志の集まり」が、既存のメディアに頼らず、冷静に検証していく「で、ホントのところはどーなのよ、調査捕鯨って」というブログを立ち上げた。greenz編集長、鈴木菜央も呼びかけ人としてメッセージを寄せる予定だ。
また、この事件をうけて、本当のところ何が起きたのかを考えるイベントが東京で開催される予定だ。続報が入り次第、イベントについてお伝えしよう。