「未来のケータイは匂いまで伝える!?」こんな夢みたいな話が、Nokiaで実際に検討されているという。匂いの発信/受信ができるガジェット(携帯用の電子機器)を手にしたら、いったいどんな使い道があるだろう。例えばレストランのモバイルサイトから匂いをストリーミング?あるいは旅先から匂い付きモブログ?まだまだ無限にアイデアが思いつきそうだ。
そんなフレイバー送信機能付きケータイに限らず、ネットワーク技術の進歩に支えられた未来のガジェットの登場は、僕たちのライフスタイルを一気に変えるほどのパワーを持っている。もはや新たな当たり前となったiPodはその最たる例だ。
だが最近、ガジェットの進化について負の部分も見えてきた。最新モデルは1年経たないうちに旧モデルとなり、僕たちはどんどんハイペースで買い替える。その結果、毎年4億台ものガジェットがスクラップされているというのだ。廃棄されたガジェットは「e-waste」と呼ばれ、いまや現代の主要な社会問題となりつつある。
とはいえガジェットはこれからも、増え続ける情報とのアクセスポイントとしてますます普及するだろう。だからこそ、環境に負荷を与えない“グリーンなガジェット”という発想が、求められている。
各方面からスピーカーが集まったカンファレンス
そして今年2月ニューヨークで、その名も“Greener Gadgets Conference”が開催された。NokiaやSONYといったメーカーやデザインやテクノロジーの著名なコンサルタント、ガジェットブログEngadget編集長から気鋭の現代アーティストまで、各方面からスピーカーが集合。
グリーンなガジェットを実現するために、リサイクルやリユース、製品のライフサイクル、再生可能なエネルギーの活用など、具体的なディスカッションが行われた。(カンファレンスの一部は、ここから映像で見ることができる)
グリーンデザインブログInhabitatとともに、このタイムリーなカンファレンスを企画したのが、Designers Accordにも深く関わるデザインコンサルタントのマーク・アルト氏だ。今回、カンファレンス直後のマークから、話を聞くことができた。
「カンファレンスは、デザインとビジネスとサステナビリティをつなげる場づくりなんだ。それぞれが自分の役割を理解するのにうってつけだからね。とにかく私たちの生活は地球の許容範囲を超えている。だから、僕たちのライススタイルを一気に変えてしまうほどのアイデアが必要なんだ。」
“グリーンなガジェット”をテーマとしたデザインコンペティション
目玉イベントとして同時に開催されたデザインコンペティションには、そんなラディカルなアイデアがたくさん集まった。
グランプリを受賞した“EnerJar”は、自宅の電気器具が使用するエネルギーを数値化してくれるガジェット。まずは自分のエネルギー消費量使を自覚するから、次のステップは始まるのだ。組み立て方はサイトで公開されているので、パーツと道具さえあれば誰でもつくることができる。そのオープンソースな側面も評価の対象となった。
第2位の重力のみで発電できる照明“gravia”は、思わず手に入れたい存在感だろう。またたくまにさまざまなブログで話題になった。他にもキネティック=運動しながら微電力を生み出す“infinit-e Stretcter”といった一石二鳥の発電方法など、新しい感覚のポジティブなアイデアが続々ノミネート。
それらは新たなマーケットを切り拓くビジネスの現場からも、十二分に注目すべきものといえるだろう。
「ビジネスにおいて重要なのは、時代のマインドにふれようとする姿勢」
マークは続ける。
「現在のビジネスにおいて重要なのは、時代のマインドにふれようとする姿勢なんだ。消費者は自分自身や大切な人、そして地球を傷つけないものを求めているし、購入という選択に責任があることも知っている。彼らは“ホンモノの”企業と出会いたいんだよ。
その意識がまだ足りていないなら、欠点をどう改善するのか透明性をもって説明することがなおさら重要になる。この正直さを消費者は賞賛するだろうし、そこからロイヤリティだってうまれるはず。デザインとビジネスとサステナビリティは決して矛盾しないんだよ!」
(初出:WebDesigning 2008年4月号)