今月12日に東京外国語大学の紛争予防・平和構築学講座の一環として、平和広告・ピースアドの講義が行われ、greenz.jp編集長 鈴木菜央と、greenz.jpデザイン担当のYOSHがゲスト講師として参加した。
紛争予防・平和構築学講座(PCS)の目指すもの
紛争予防・平和構築学講座(PCS)とは、NGO・国連の職員として、世界各国の紛争処理などを経験し、最近ではテレビなどのメディアにも登場している伊勢崎賢治さんの講座である。今までの経験から自らを「紛争屋」と呼ぶ伊勢崎さんのこの講座では、「平和というのは何たるか」といったロジカルなことを教えるのではなく、「実際に現在の問題に対してどういったことをすれば、平和へとつなげることができるのか」というアクションをともなったとてもクリエイティブな講座だ。
今回の講義には、世界中の紛争地域からスーダン、タジキスタン、スリランカ、エジプト、アイルランド、インドネシアそして日本という生徒8人が集まった。彼らは伊勢崎さんの世界平和を戦争から守るための平和の網プロジェクトの一員でもある。平和の網とは、近い将来彼らが本国に戻った際に、いち早く紛争の火種を発見し、伊勢崎さんに報告するという情報ネットワークのことを意味する。この平和の網によって、迅速に紛争の火消し態勢がとれるというわけだ。
「平和の網」の生徒に教える鈴木菜央&YOSH
前述のgreenz.jpメンバー2人の他に、サステナ代表のマエキタミヤコさん、昨年の100万人のキャンドルナイトのアドデザインを担当したデザイナーの浪花逸平さん、国際シンポジウムのポスターのディレクションを担当した詩人の内田剛さんもゲスト講師として参加。講義では、ポスター作りとCMのシナリオ作成に分かれ、それぞれの講師が担当する生徒が事前に用意した企画にもとづくラフをベースに、生徒自身の意見を織り交ぜながら、効果のある広告・メディア作りの行程と技術を教え、最終的に作品として仕上げるところまでを目的として行われた。
「平和の網」のアクションがカタチになる
鈴木菜央が担当したのは、ボスニアヘルツェゴビナ(以下ボスニア)から参加したマヤ。マヤは、ボスニアの平和構築を身近に感じてもらうためのキャンペーンを立ち上げたいとのことだが、事前に作成されたラフでは、伝えたいメッセージがあいまいでダイレクトに響いてこない。そこで、彼はまずマヤがもっているメッセージのブラッシュアップから始め、5W2H(What(目的)、Why(背景)、When(いつまでに)、Who(対象者)、Where(どこで)、How(方法)、How much(予算))を明確にしていくことに重点をおいた。こうした過程を丁寧に行っていった結果、マヤにとっての本当に伝えたいメッセージが導きだされたのだ。ボスニアでは、国全体の50%が仕事をもっていない。マヤは、この問題に対して自ら雇用を作り出したいという思いからキャンペーンを考えたのだった。キーワードは「Lunch break!」。昼食(ちょっとした休憩)をとるということはみんなが一つになる象徴だ。この言葉にはマヤの民族への平和の願いが込められている。彼いわく「全体の7割はキーワードを導きだすために使った」甲斐もあり、すばらしい作品ができあがった。
マヤ(左上)ムナ(左下)シュウ(右下)のポスター
その他の参加生徒が作った作品内容はこちら。
また、YOSHの方ではインドネシアの紛争地域ポソ(イスラムvsキリスト)で、コミュニティラジオを開き、そこを主催としたサッカーなどのパブリックなイベントを開催することによって地域を盛り上げようというムナの企画と、内戦の傷跡残る旧ユーゴでの楽しい時代を思い出しながら、ひとつにまとまるきっかけをつくろうと、「1984サラエボオリンピックをもう一度」というテーマで、運動会を開催したいという日本人シュウの企画を担当した。
「いずれも僕がラフ案を考えてきて、こういう風に考えたんだよ、と対話をしながら、伝えたいメッセージを研ぎすませていく、という感じで、あとは参考となる画像の調べ方やツールの使い方なんかもシェアしました」(YOSH)
・スーダンのらくだ上移動教室(ラクダ遊牧民の子どもたちに教育を)という活動の資金集めを日本で行うため、日本のラジオコマーシャルを作る
(草案者のアブディンは本当にNPOを立ち上げようとしている!)
・ハイチ情勢を安定させようとするポスター
・タジキスタンに文化の多様性を訴えるポスター
・イラクの子どもたちをひとつにするためのキャンプのポスター
・スリランカ(シンハ・タミール・モスリム)が仲良くなるためのポスター
どの作品を見ても、わかりやすく、メッセージ性の高い作品となり、参加生徒にとってはかけがえのない経験となったことは言うまでもない。今回得た知識を自国に帰った際にもいかんなく発揮し、平和づくりのアクションのために活躍してくれるだろう。
今この瞬間にも世界のあちこちで紛争は行われている。確かに遠い国の出来事かもしれないが、私たちは地球という星の中でひとつにつながっている。となりにいる愛しい誰かも、子どもも、おばあちゃんも、黒人も、白人も、黄色人も、植物も、動物もみんな同じところに生きている。今すぐに、紛争をなくすことは不可能かもしれない。けれど、今の自分にできる小さなアクションからちょっとづつ変えていく方法はあるはずだ。
さあ、何ができる?
■作品一覧
【スーダンモバイル学校 ラジオCM60秒のシナリオ】
●らくだの肉って、おいしいらしいよ。
◆へー。
●アフリカでは街のはずれに「らくだ市場」があって、そこには「らくだ焼き肉」屋さんがあるし、らくだのレバーは食べると病気しなくなると信じられていて、すごく高く売り買いされているんだって。
◆へー、らくだ食べちゃうのー。食べられるのーー?食べものがないから、食べるの?
●ちがう、ちがう、ほんとにおいしいんだってよ。
へえーーー。
●らくだって、らくだかってる人たちの間では、200通りも呼び名があって、
しっぽのみじかいらくだ、
くちがすぼまっているらくだ、
あしがふといらくだ、
こぶが鋭角ならくだ、
こぶがまんまるならくだ、
3歳のメスらくだ
10歳のオスらくだ、
みんな呼び名が違うんだって。
◆へえええーー。
●それにね。らくだは放牧すればするほど、おいしくなるらしいよ。
◆へーーーー。
●特にスーダン産のらくだはレースにも強いし、おいしいし、遊牧民が放牧しているから、高く売れるんだって。
◆へーーーーーー、スーダンって、どんな国なの?
●アフリカの東にあって、日本よりスーダン広い。
SE:ガラガラドッシャン(イスから転げ落ちる音)Na)
そのスーダンの遊牧民、らくだがいの子どもたちにいま危機がせまっています。
3秒にひとり、貧困から子どもが死んでいく現実の中で、
スーダン東部では、字が読めない親から生まれた子どもの死亡率は、字が読める親から生まれた子どもの3倍です。
スーダン東部の識字率は44%。
大人のふたりにひとり、字が読めません。
ふたり親がいれば、片方の親から生まれた子どもは、もうひとりの親の子より、3倍、死が近いのです。
とくに、字が読めないらくだがいの子どもたちが、そうなのです。字が読めないと、もうひとつ、こわいことがあります。
ゲリラ兵に誘われ、戦争に利用されやすく、それで、戦争自体も起こりやすくなってしまうのです。そこで私たちは、スーダン東部で、子どもが死なないように、戦争が起きないように、
識字率を上げる『スーダンモバイル学校プロジェクト:スーモ』を、立ち上げました。保守的ならくだの遊牧民の親たちも、気軽に子どもを学校にやることができるように、放牧にいく男の子たちには男の先生、村に残る女の子たちには女の先生。
●でも政府には、その人たちを雇うお金がないんだよね。(同情しながら)
Na)
なので、みなさんにお願いです。
将来、遊牧民の子どもたちのなかからお医者さんや先生、弁護士や会社の社長さんが生まれて、遊牧民の生活と文化を守ってくれるために。スーダンの遊牧民の子どもたちの、先生たちを雇うお金を支援してくださいませんか。
最初の1年は100万円が必要です。このラジオをお聞きになったみなさんが支援してくだされば、このプロジェクトは実現します。
くわしくはwww.sudanmobilegakko.jpらくだのレース、珊瑚礁ダイビング、モバイル学校訪問、遊牧民テント宿泊が楽しめる1週間の支援ツアーも受け付けています。学生25万円、一般42万円です。
ホームページで「スーダン、モバイル学校、スーモ」と検索してください。
ご寄付は、郵便振込。。。。。。。まで。
お問い合わせは、090-5459-2943まで。