カイシャって何だろう?
唐突だが、会社って何なんだろう?
人やおカネやモノを集めて、世の中に必要なモノやサービスを生み出し、提供する存在。大ざっぱに言うとそんな感じだと思う。
じゃあ、「いい会社」って何なんだろう?
みんなに愛されるいい製品をどんどん作る会社、これまでにない新しい革新的なサービスを生み出す会社は、もちろんいい会社だと思う。売り上げが何兆円もあったり、莫大な利益を上げて、税金をたくさん納め、多くの従業員に給料をいっぱい払ったりするような会社をエクセレント・カンパニーと呼んだりする。
- 筆者のエクセレント・カンパニーのイメージ。超ステレオタイプ
でも、これから紹介する「アミタ」という会社は、そういうこれまでの「カイシャ像」とは、なんだかちょっと違う気がする。もちろん、もう何年も増収増益を重ねているし、2006年6月には上場もしている。社会に必要なリサイクルを始めとしたサービスを提供し続けて伸びてきたし、従業員の数も増えている。普通に見ても立派な企業だと思う。だけど、アミタを見たときには、それだけじゃない「トンガリ」みたいなものを感じる。
例えば、会社案内をめくって最初のページの1行目に書いてある言葉がこれ。
「人類は、何処から来て、何処へ行くのだろう?」
……およそ、企業らしくない。テツガクしてるみたいだ。読み進めていくと、こうも書いてある。
「今、人類のその尽きない欲望を満たすため、生命システムは弱り、傷つき、破壊しかけている」。そして「持続可能社会の実現を今こそ最優先と考える」と言っている。
どうもこの会社は、自分の会社がどうやって儲けるかに必死にアタマを絞っているのではなく、私たち人間がどうしていけばいいかを一生懸命に考えている気がする。しかも、Greenz.jpが目指す持続可能な社会に向けた事業で成長している会社のようだ。
アミタってどんな人たちがやっているんだろう?
代表取締役社長:熊野 英介
本社住所:〒102-0075 東京都千代田区三番町28番地
創立:1977(昭和52)年4月1日
主な事業内容:<ドゥタンク事業>自然資源の再生ソリューション、
「1次産業」(農業、林業、水産業)から「3次産業」(商業)へと全産業に広がり、取り扱う商品・サービスは、「無機物」から「有機物」の資源リサイクルから、循環型社会に必要な「仕組みの構築」まで幅広いニーズに応えている。
社長に直接聞いてみた
そこで、会社のトップである社長に話を聞いてみることにした。
インタビュー当日、担当の方に案内されて開いたドアから入ると、もうそこは社長室で熊野英介社長がにこやかな顔で立って迎えてくれた。スキンヘッドで黒いシャツの上に背広を羽織った熊野社長。同席した女性社員の方が「男性社員を引き連れて歩いていくと組の討ち入りみたいなんですよ」と笑っておっしゃったが、柔和な笑顔で気さくに話す印象は、むしろ普段着のお坊さん(スミマセン)。実際にうかがった内容も、本当に哲学的な深い内容だった。
- アミタの熊野英介社長
今回はどんな考え方で会社を経営しているかを聞くのが狙い。この会社に入社された経緯やこれまでの会社の歩みを聞くところから、普段のインタビューではあまりお話しされないような深い方向にどんどん進んでいった。
モノの時代から、精神・つながりの時代へ
「私は、今の日本の社会は『成熟社会』だと考えています。この成熟した社会では、モノはもう十分にあります。そのかわり、精神的な飢餓や貧困があふれています。この精神が満足するためにはどうすればいいか。それは孤独の追放です。関係性があれば人は孤独にならない。たとえ子供に親がいても関係性がなかったら子供は孤独ですよね。関係性が大事なんです。
この成熟社会では、利他的なニーズ、つまり誰かのためになろうという欲求があります。誰かのためになることで関係性が生まれ、孤独ではなくなるからです。ですから、この利他的ニーズに応えるような事業はこれから伸びると考えています」
しかし、現在の社会を見ると、「利他」より「利己」が幅を利かせているようにも見える。「もっとアフリカの問題に目を向けよう」というキャンペーンを傍目に、日本の景気はイザナギ越えで最高益更新の会社も多いという。どういうことなのだろうか。
- 経産省エコバッグコンテストは
アミタが事務局をつとめる
「今の世界は、人口のたった1割の先進国の人たちが世界中から地下資源や食料をかき集めているような状況ですよね。これは、つまり工業社会の呪いです。大量に生産して、大量消費し、大量にリサイクルする。こうした工業社会のシステムが現在のような状況を作り上げてしまった。だから、たとえ企業の人たちが『もっとみんなに喜ばれる商品を』という利他的なニーズで作っても、問題は起こってしまうんです」
なるほど、世の中の仕組みの問題なのか。
「そうすると、どういうことになるか。工業社会では生活圏と経済圏がバラバラになっていきます。例えば、サラリーマンが結婚して子供ができたとしますね。夫は外に出て、どんどん社会の中で新しいモノを見て、情報に触れていく。一方、奥さんは家庭の中で子供の面倒を見て過ごす。そうしているうちに、2人の間に差が生まれて、すれ違うようになる。夫は奥さんに『お前は進歩していない』と言う。奥さんは『あなたは変わってしまった』と言う」
確かに、単に家庭内のよくある話というだけでなくて、社会の問題が家庭内でも表れているのかもしれない。それに、僕たち日本人はモノに溢れた豊かな暮らしをしているハズなのに、あわただしく働き、あまり生活を楽しめていない人が多い気がする。
「これはどういうことか。つまり、近代と伝統の対立なんです。この近代と伝統の対立は、先進国の中にも起こっているし、先進国と途上国の間にも起こっています。この対立を解消していくためには、生活圏と経済圏とを統合する必要があります。そのためには『産業のコミュニティ化』と『コミュニティの産業化』が必要だと思います」
モノとモノ、ヒトとモノの「つながり」を回復する事業
「産業のコミュニティ化とは、産業の中に『つながり』『関係性』を回復していくことです。工業社会というのは、関係性が切れてしまった社会だと思うんです。資源ひとつとっても、入口と出口が別で、つながっていなかった。私たちがしてきたリサイクルの事業とは、この関係性をつなげる事業だと言えます。また、FSC認証*1やMSC認証*2なども、既存の産業の仕組みの中に、持続可能な方法で生産されたものと消費者とのつながりを作った仕組みです。これらの認証取得支援は、企業と環境との関係性を回復するお手伝いと言えます」
- 木をモチーフにしたFSC認証のマーク
- MSC認証のマーク。これらがついたものを選ぼう。
*2 MSC:Marine Stewardship Countilの略。持続可能な方法の漁業による水産物であることを示すマーク。
では、コミュニティの産業化はどうだろう。
「コミュニティの産業化とは、伝統的なコミュニティがエネルギーや食料、資源の面で自立して、コミュニティの中に産業を創っていくことです。それにはやはり、農業、林業、水産業が中心となると思います。でも、今の農林水産業は疲弊していますね。これは、突き詰めていけば、農林水産業を工業化したことから生まれていると思います。農林水産業はどれも自然を相手にしていますが、自然というものは、天候ひとつとっても常に変化して一定ではありません。伝統的な農林水産業は、畑などから一定の量のものを生産できるよう、変化する自然との関係性を技術化してきたものだったのではないかと思います。私たちは、工業化によって失われた、農林水産業と自然との関係性を取り戻したい。この自然とのつながりの中から持続可能な形で資源を生み出す営みを、私たちは『自然産業』と呼んでいます」
産業のコミュニティ化もコミュニティの産業化も、モノとモノ、ヒトとモノの「つながり」を回復する事業と言える。どうやら熊野社長は、この「つながり」「関係性」に強い思い入れがあるようだ。
「つながり」をキーワードに事業を展開する「アミタ」。その活動の一端は、今月14日(木)〜16日(土)に行われるエコプロダクツでも見ることができる。「アミタ」のブースをチェックしてみてはどうだろう?
詳細はアミタのホームページで
http://www.amita-net.co.jp/