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家庭内にもハッピーの種をまこう

日本人女性の3人に1人は被害に遭っているといわれるDV(家庭内暴力)。そのDV問題をもっと知ってもらおうと、ザ・ボディショップが積極的にキャンペーンを行っている。
世界中で問題になっているDV(Domestic Violence=家庭内暴力)だが、それは日本でも例外ではない。日本では、女性の3人に1人が被害にあっているともいわれる。ザ・ボディショップはそういった身近にある問題に対して、市民の意識を高めようというキャンペーンを継続的に行っている。今回は、11月3〜5日に行われた「デイジーウィークエンド デイジーの花を咲かせよう」の様子を通して、DV問題とは何かを考えてみたい。

11月上旬の3連休初日、表参道は多くの人で賑わっていた。その中を歩き始めてほどなく、鮮やかなスカイブルーのTシャツで揃えたグループとすれ違う。

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街頭でデイジーの種を配る

胸にはデイジーの花、背中には「暴力をふるわない。ふるわせない。」の言葉が。デイジーのかぶり物をして種を配っている男性もいる。表参道を行き交う人々は不思議そうに眺めたり、にっこりするなど、反応はさまざまだ。

多くの人が、「これはいったいなんだろうか?」と思ったに違いない。これは、ザ・ボディショップが行った、DV(Domestic Violence=家庭内暴力)根絶のためのキャンペーン「STOP VIOLENCE IN THE HOME」だったのだ。

表参道の交差点の街頭ビジョンでもメッセージが流れた
デイジーはこのキャンペーンのシンボルだ

閉ざされたドアの向こう側で

いじめや自殺など、社会問題としてニュースになっているテーマは多いが、(Domestic Violence=家庭内暴力)について、メディアで取り上げられることはほとんどない。それは、それが極めてプライベートな密室で行われるため、社会問題として認知されにくい、明るみに出にくい、などの理由からだろう。東京都の調査では、女性の3人に1人はDV被害にあっており、夫から命の危険を感じるくらいの暴行を受けたことがある女性は20人に1人いる※という。それほどまでに一般的な問題なのだ。今日も、今も、苦しんでいる人がいる。もしかしたらあなたのそばで心と体の痛みに耐えている母親が、子どもがいるかもしれないのだ。

※平成12年2月総理府「男女間における暴力に関する調査」による

ザ・ボディ・ショップインターナショナルとユニセフ、国連事務総長の「子どもへの暴力に関する調査」事務局の共同調査によると、世界のDV被害の子どもの数は2億7,500万人に及ぶ。これは暴力のある家庭の子供が身体的攻撃や性的攻撃を受ける可能性が15%に達していることを意味する。そして、子ども時代に虐待されていたり、虐待を見て育った夫が妻を虐待する確率は、非常に高いと言われている。つまりは母親への暴力を止めることは、子どもを救うことにもつながり、さらにその子どもを救うことになっていくのだ。

ザ・ボディショップのDV問題への取り組み

ザ・ボディショップが行っている「STOP VIOLENCE IN THE HOME」キャンペーンは1994年、ザ・ボディショップ カナダから始まった。2005年からは世界中のボディショップでいっせいにキャンペーンが行われている。ザ・ボディショップ ジャパンでも、DV被害者女性の総合的支援を行っているグループ「FTCシェルター※」と共同でキャンペーンを展開。これまで、全国のザ・ボディショップ店頭でのキャンペーンアイテムの販売、その売り上げの一部の募金、ユニセフとの共同レポートを掲載したリーフレットによる啓発活動、全国133店舗で各店100人へデイジーの種を配布、東京表参道、大阪心斎橋、名古屋栄、札幌4丁目付近、福岡天神の5都市でデイジーガール&ボーイがデイジーの種を配布するというキャンペーンを続けてきた。

ちなみにキャンペーンのシンボルマークは、青空に浮かぶ、透明な家に入ったデイジー。デイジーには「希望」や「無邪気」、「不屈の精神」といった花言葉がある。暴力という秘密のない家で、おだやかに希望を持って過ごせることをイメージしてこのシンボルマークがつくられたそうだ。現在ではキャンペーンシンボルとして、世界中のザ・ボディショップで使われている。

キャンペーンポスター
※FTCシェルターとは
1997年、DV被害女性と子どものための民間緊急一時避難所として発足。長期的展望にたった安全確保、生活再建支援、こころのケアなど、DVの被害女性と子どもへの総合的支援を提供している組織。TEL&FAX 03-5608-6325

Speak Out! 勇気を出して声を上げよう!

混み合った雑踏を抜け、再びザ・ボディショップ表参道店の前に行ってみると、デイジーガール&ボーイたちの元気な声が聞こえてくる。やはりスカイブルーのTシャツを着て、道行く人々にリーフレットを手渡したり、デイジーの種を手渡している。店内ではキャンペーンアイテムである「Speak Out! リップケアスティック」やデイジーを配合した「ソープ DS(デイジー)」などを販売中だ。

表参道店の前で道行く人に声をかけるデイジーガール
キャンペーンアイテムが売られている

Speak Out! リップケアスティック

このミントリップケアスティック[525円(税込)]はザンビア産のオーガニックミツロウ(コミュニティトレード)が使われており、1本につき5%がFTCシェルターに寄付されるという。このリップケアスティックを買って、DV問題に対して「Speak Out!(勇気を出して声を上げよう!)」という願いが込められている。

チャリティグッズのひとつ、リップスティック

ソープ DS(デイジー)

こちらのソープ DS(デイジー)[315円(税込)]はガーナ産のシアバター(コミュニティトレード)とヒナギク花(デイジー)エキスが配合されていて、こちらも売り上げの5%がキャンペーンに寄付されるという。

デイジーが成分に入っている石鹸

社会貢献をやればやるほど売り上げがいい

それにしても、読者は「なぜ化粧品メーカーがここまで?」という疑問を持つかもしれない。揃いの鮮やかなスカイブルーのTシャツを来た集団に混じっていた岩田松雄さん(ザ・ボディショップを展開する株式会社イオンフォレスト代表取締役)に話を聞いてみたところ、「ザ・ボディショップは、社会変革が目的なんです」と何のてらいもなく言った。

株式会社イオンフォレスト代表取締役の岩田松雄さん

そしてその取り組みの成果は日本で133ある各店舗の「マネージャーにかかっている」と言う。「ザ・ボディショップの社会変革への取り組みが顧客にうまく伝えられる店舗ほど売り上げもいい」とのこと。加えて「こういう取り組みが(企業の)常識になっていけばいいですね」と話してくれた。

「そんなにハッキリ言っちゃっていいんですか!?」という感じすら受けるコメントだが、一見売り上げに結びつかないように見える活動を徹底的に行うことが、ザ・ボディショップのアイデンティティであり、良心であり、マーケティングなのだろう。そして、このキャンペーンを組織したバリューズ推進室室長の藤田さんはこのようなキャンペーンは「(企業がこういった取り組みをすることによって)行政では行き届かない層の人々にアプローチできる」のが良いところだ、と言う。今後も来年春にデイジーのフォトコンテストを行うなど、持続的な取り組みを続けていきたい」と語ってくれた。ちなみにこのデイジーフォトコンテスト、公募は2007年3月から開始を予定しているそうだ。「まずはデイジーを育てて、フォトコンテストの準備をしよう!」とのことである。

あなたにも世界は変えられる

結局、全国で展開したこのキャンペーン、3日間で32,400ものデイジーの種を配布することができたという(スゴイ!)。その32,400人が、すこしでもDVの問題について考え、友人や家族に話をしたとしたら、これはなかなかのことだ。今回のキャンペーンに参加していた新入社員の女性は「ひとりではできない活動も、買うだけで社会貢献できるこういった取り組みはいいですね。(表参道を歩く今回のキャンペーンも)視覚に訴えていたので、一般の人の意識を高められるのでは」と語ってくれた。確かに一人ひとりだけでは何もできなくても、こうして集まって、行動すれば、世界を少しずつ、確実にいい方向に変えていくことができるのだ。ひとりでも多くの人が関心をもつことから、すべては始まるのだ。ウムム、やるなザ・ボディショップ!

このキャンペーンは、企業も個人に対しても「世界を変えてみよう!」そんなポジティブなメッセージを投げかけたキャンペーンだったのではないだろうか。

ザ・ボディショップ
http://www.the-body-shop.co.jp/top.html

ザ・ボディショップ 「STOP THE VIOLENCE IN THE HOME」キャンペーン
http://www.the-body-shop.co.jp/values/stop_violence06.html

Wikipedia
ドメスティックバイオレンス

※当記事の一番上の写真の子どもたちはDV被害の当事者ではありません。

「THE BODYSHOP モノ語り」これまでの記事はこちら!
第1回 「ザ・ボディショップってナニ?」
第2回 「一人でも多くの人がハッピーになるビジネス」
第3回 「買うだけで世界がハッピーになるモノ語り」