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魚をめぐる衝撃の映画がついに日本上陸!

「ダーウィンの悪夢」の試写会チケットプレゼントも
今、ほうぼうで話題を呼んでいる、グローバリゼーションの恐ろしさを描いた映画「ダーウィンの悪夢」。この映画の試写会と監督の記者会見が、11月7日・8日に開かれました。ページの終わりには試写会チケットプレゼントもあります! (詳しくはこちら)

タンザニアでは大統領自ら「この映画を見ないように!」と呼びかけ、フランスでは魚の不買運動が起こったといわれ、その一方では数々の映画賞に輝いた、話題作「ダーウィンの悪夢」。この映画が12月23日(土)より、渋谷・シネマライズをはじめとして、全国で上映されることとなりました。そこで、事前に行われた試写会とシンポジウム、監督の記者会見に、greenzがおじゃましてきました。

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(映画より)魚を積み過ぎて墜落した飛行機
あらすじ
アフリカのヴィクトリア湖は、生物が調和を保ちながら多種類生息しているということで「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていました。ところが、そこに巨大な肉食魚「ナイルパーチ」がやってきたのです。ナイルパーチはどんどん増え、湖畔の町には、この魚を加工・輸出する一大産業が誕生し、地域の経済は潤います。しかし、その新しい経済は、さらなる貧困を生み、エイズ患者やストリートチルドレンが増え、ドラッグが広がり……と、どんどん悪循環におちいっていきます。さらには、ナイルパーチを積みにやってくる飛行機が、アフリカ紛争のための武器を運んでいる、という驚くべき疑惑までも浮上し……。

アフリカの貧困と、どうしようもない悪循環のなかであえぐ人々を率直に描写した、誰もが観た後、深く考えずにはおれない映画でした……。

(映画より)人々はナイルパーチの「かま」を食べて生活している

「この映画は魚についての映画ではありません(フーベルト監督)」

11月8日(水)「ダーウィンの悪夢」の監督、フーベルト・ザウパーさんの記者会見が行われました。すらっとした長身のフーベルト監督は、オーストリアの生まれとのことですが、現在住んでいる国、フランス語で話しはじめました。

フーベルト・ザウパー監督

「まず申し上げておきたいのが、この映画は、魚の映画ではない、ということです。以前、この映画が公開されたとき、フランスで『ナイルパーチを買うな!』という不買運動が起ったことがありました。私は、ナイルパーチを買うことをボイコットするより、むしろ武器や、魚の不買運動をしてしまうような愚かしい行為をボイコットしてほしいと思うのです」
「この映画は、グローバリゼーションについての映画です。そして、私は、みなさんがスーパーに行ったときに、売っているものひとつひとつに、この物語と同じようなストーリーがひそんでいることを感じて頂きたいのです」

「そして、この映画は、アフリカの現実をそのままに“描写した”映画でもない、とも私は思っています。この映画は、私のたましいから見たアフリカを映していると感じます。そういう意味でいえば、この映画は作家映画、というべきなのかもしれません。たとえば映画に出てくるエリザの声は、とても魅力的でした。そこで、エリザの声がより魅力的にうつる、夜に撮影をしました」

(映画より)「軍隊の給料はいい」と語るラファエル
(映画より)ナイルパーチを積む飛行機のパイロット

「映画制作には、編集を含めると4年かかりました。取材は、合計すると6カ月ほどだったと思います。タンザニアの警察は私の撮影を妨害しようとしたので、私は何回か警察につかまり、拘置されたりもしました」

この映画のキーワードである「ナイルパーチ」は、かつて日本では「白スズキ」ともいわれ、今ではおもに学校給食やファミリーレストランで、「白身魚のフライ」などとして食べられているそうです。ナイルパーチに向けて懸命にシャッターを切っている私たちに、監督が「くれぐれも言っておきますが、『魚が悪い』という視点で書かないでくださいね!」と声をかけていました。

スーパーで切り身で売られていることもあります

「タンザニアと私たちは、
魚だけでなく直につながっているのです(松本仁一さん)」

11月7日(火)の試写会のあと、フーベルト監督と朝日新聞社編集委員の松本仁一さん、明治学院大学教授の勝俣誠さんをパネリストに、シンポジウムが行われました。タイトルは「緊急問題:アフリカ破綻国家は警告する」。

アフリカと映画への想いを語るフーベルト監督
松本仁一さん

かつて、朝日新聞の中東アフリカ総局長を務め、武器と国家についての著書も書かれている松本仁一さんは、次のように語りました。

「ナイルパーチを、誰が、いつ放したか、というのは、じつはすでにあきらかになっていることです。ナイルパーチは1954年の8月、イギリス*1の役人が『大型の魚をたくさん取れるようにすることで、漁獲高をあげて、現地の食糧事情をよくしたい』ことから放したのだそうです」
「この映画は、海の向こうの話ではなく、私たちの生活に直につながっている話なのです。それは、この映画に出てくる魚を私たちが食べている、という話だけではありません。貧困にあえぐ人々は、世界をまわり、やがては日本にやってきているからです」

*1 当時ケニアを植民地化していた

アフリカ地域研究が専門の勝俣誠さん。
「この映画には、まず、政治が(映って)ない、と思いました。ストリートチルドレンやエイズ患者は、公共サービスによって解決すべきもの。しかし、この映画は、市場の力の暴力性を描くだけで、それをコントロールすべき政治の力が映っていない。しかし、それによってより私たちに訴えかける力が強くなり、この映画が成功しているのだと思います」

勝俣誠さん

「そして貧困のなか、おなかがすいていると、いかに今生き延びるか、という目の前しか見えない。しかし、だからこそ『システムを理解し、力をつける』ことが必要なのだと思います」

フーベルト監督も、アフリカと「ダーウィンの悪夢」について意見を述べました。

「私がこの映画で見せたいのは、そうは見えないかもしれませんが絶望ではなく『希望』です。たとえばこの映画に出ている少年は『僕はすべての白人を殺したい』といってもおかしくないような状況にあります。しかし、彼は『僕は大きくなったら学校の先生になりたい』というのです。

この映画を観ると、彼らとあなたが、直接人間関係を得たような感覚になれます。そして、それによってあなたは何かを感じ、映画を見る前には思いもしなかったアクションを起こそうとするはずです。それが、私もしばしば驚かされる映画の力なのです」

シンポジウムを終えて握手を交わす3人

「できるだけたくさんの人に観てもらいたい映画です(試写会を観た男性)」

試写会をごらんになった方々に、「ダーウィンの悪夢」の感想を聞いてみました。

試写会を終えた会場
先進国の飽くなき欲求に、ただ従うしかない後進国の人々。お金の力ですべてを押さえつける、経済偏重の社会……。グローバリゼーションのもたらした弊害を、まざまざと見せ付けられる思いでした。

際限なく世界が広がり、想像力の届きにくくなった場所で、今どれだけの人々が苦しんでいるか、知る人は多くないでしょう。できるだけたくさんの人に、見てもらいたい映画だと思いました。
(東京都 28歳 男性)

映画のなかで、元教師の男性が言っていた。「世界はエネルギーの取り合いだ」と。もう、地球上にわずかにしかないエネルギーを、必死こいて、さまざまな姑息な手段を使って、取り合うのはやめにしたい。それより、取り合わなくていいエネルギーを探したり、「最低限必要なだけ」をとって、他の人に差し出せるような社会がいいなぁ、と思った。
(横浜市 31歳 女性)

みなさん、それぞれにアフリカと世界が持つ問題を実感し、色々なことを考えるきっかけとなったようです。

この映画は、12月23日(土)の渋谷・シネマライズを皮切りに、全国の映画館で上映されます……が、12月12日(火)、いちはやく試写会が開催されます! greenzでは、その試写会のチケットを、なんと!「5組・10名様」にプレゼントします! 詳しくは、下をチェック!

「ダーウィンの悪夢」
試写会チケットプレゼント!

監督・構成・編集:フーベルト・ザウパー
2004年/フランス=オーストリア=ベルギー/英語・ロシア語・スワヒリ語/カラー/35mm/ヴィスタ/112分/dolbySRD
原題:Darwin’s Nightmare

日時:12月12日(火) 開場18:00/開映18:30
会場:サイエンスホール(竹橋駅・九段下駅から徒歩7分)

ご応募の方は、ハガキに住所・氏名・年齢・電話番号を
明記して下記宛先までご応募ください。
応募先:〒150-0036 渋谷区南平台町13-3 第一シバビル3F
ビターズ・エンド「ダーウィン・greenz.jp」係
応募締め切り日:2006年11月末日
読者お問い合わせ先TEL:03-3462-0345