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この旅最後のエコビレッジ「Okodorf Sieben Linden」へ
エコビレッジのガイドブック『EUROTOPIA』の編集部がある、ドイツのエコビレッジ「Okodorf Sieben Linden」を訪れた。たった1週間という短い期間だったが、エコビレッジ巡りの中で最も印象深い滞在となった。

1993年に設立され、メンバーが50人にも及ぶ巨大エコビレッジ「Okodorf Sieben Linden」。“妥協”せず、“自由”な村づくりをモットーとしているため、ここに住む人たちはそれぞれの思想や価値観によってグループ分けがされている。『Eurotopia』の編集は“Club99″というグループが行ったが、今回私はこのClub99のエコビレッジに滞在した。Club99が所有している敷地は66,550坪。ゲストハウスの建物のほかに、ショップやバーまである。庭には人が生活しているワゴン車がずらっと並んでいる。

滞在初日、Club99が主催の間伐ワークショップが開かれていたので参加させてもらった。参加メンバーは30代前後のドイツ人の男女が中心で、ドイツで建築を学んでいるアイルランド人、オーストリアの学生など。間伐とは林木の密度を調節して生育を助けるため、林木の一部を伐採するのだ。

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間伐に向かうメンバーたち

Club99のメンバーから数分間簡単な説明があっただけで、各自が積極的に作業にとりかかる。私はまず手はじめに、倒れた木の皮をナイフで剥いでいく作業を担当することにした。前の日に雨が降ったために、水分を吸った木の皮は剥がしやすくはなっていたが、1本目にしてすでに、私の手足はしびれてしまった。「機械があればどんなに楽だろう……」などと思いながら、木と格闘すること30分。ようやく木を剥ぎ終え、間伐作業に入るが、これがまた大変なのだ。なんと、チェーンソーなどの機械は使わず、「のこぎり」を使って切っていかなくてはならない! のこぎりはすぐに木に引っかかって動かなくなり、とにかく押すにも引くにも力がいる。「ああ、チェンソーがほしい……」とのこぎりを恨めしく思いながら、ペアの相手と「1、2、1、2」とリズムを合わせて作業を進める。1本の木が倒れた時は二人で手をたたいて大喜こびした。そんな私たちの姿を見て、周りからも拍手が沸き起こった。

Club99の食事は完璧なまでのベジタリアン。最初に訪れたエコビレッジ「ECOlonie」もベジタリアンだったが、乳製品は食べていた。しかし、Club99は乳製品もとらない。なるべく庭で採れたものや近所で作られたものを買うので野菜の種類は多くないが、料理の数はいつも豊富だった。しかし、ベジタリアンでない私には、野菜ばかりの生活はかなりきつかった。

Club99はさらにストイックだ。建物には電気が通っていない。夜になるとローソクに火を灯し、その明かりだけで過ごす。1日、2日ならロマンチックでいいかもしれないが、毎晩、この薄暗い中で生活するのは並大抵のことではない。

Club99での生活を通して、私は今まで自分の身の回りにあって当然と思っていたものへの感謝の気持ちが湧いてきた。数十年遡ればそれは決して当たり前ではなかったものだし、誰かの不断の努力によって生活の周りに作り出されたもの。私たちがどれだけ便利な世の中で生活しているのかを思い知らされた。メンバーたちにそう伝えると、「そうか。それは本当によかった」と深く頷いてくれた。

自給自足、地消地産、動物との協働、リサイクルなどを通じシンプルな生活を送るClub99のメンバーは、地球の癒しを受けながら、地球上に存在するすべてのものを敬う環境を目指した「実験」を行っているのだと言う。「実験」と位置づけているのは、誰かが何かを信じ、それを他の人の前で形にすることで、自分たちの形よりもさらにいい形を生みだしてくれるかもしれないという想いを込めているからだ。

エコビレッジから外の社会へメッセージを発信している、Club99のメンバーたち。そんな彼らのポジティブで真摯な姿勢に感動した。

*次回は最終回です。