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日本だって、環境先進国になれる!

第一回 Earth Day School
今年も盛況のうちに幕を閉じた「アースデイ東京2006」。現在すでに、2007年に向けて準備会が発足されている。2007年のキーワードとなりそうなのが「二歩先の先進事例の提案」。そのキーワードについて理解を深めるため、9月4日から準備会に講師を招き、一般の方も参加可能な勉強会「Earth Day School」が始まりました。第一回目の講師はスウェーデン人の環境コンサルタント、ペオ・エクベリさん。スウェーデンの環境問題への姿勢や活動についてお伺いしました。

日本が環境先進国に!?

スウェーデンは世界でトップクラスの環境先進国です。それは100年も前に生まれたNGOが地道な活動を続けてきた証で、国民が「個人が集まれば、社会を変えられる」と実感しているからです。以前原発にまつわる国民投票が行われましたが、「一世代以内にすべての原発を止める」と決まり、現在12基のうち2基が停止しています。

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ペオ・エクベリさん

また、スウェーデン人の環境意識の高さは、小さいころからしっかりと環境教育を受けているせいかもしれません。スウェーデンでは、4歳から環境教育をしています。たとえば、小さなミミズコンポストを使った実験と観察を通して、環境問題を解決することはとても大切なんだ、と学んでいくのです。

スウェーデンでは、市民だけではなく、国や企業も協力しあって、環境問題に積極的に取り組み、2021年までには、持続可能な社会になることを目指しています。でも、私は日本人はスウェーデン人よりも環境問題に情熱を持っていると思います。日本人に足りないものは、「いつまでに、どこまでやるか」という目標です。目標を立てて、きちんと実行すれば、日本は環境先進国として、世界をリードしていくことができるはずです。私が日本で活動するのも、そういった意味があってのことなのです。

環境に関するルールを作れば、行動がクリアになる

目標のほかに、“ルール”を決めることも大事です。ルールは問題を目前にしたときに、どちらが正しく、どちらが間違っているかを瞬時に決めることができます。そうすれば、“環境にやさしい”ではなく、“環境に正しい”行動がとれるのです。1990年代、環境団体の「ナチュラル・ステップ」が専門家を集め、森羅万象に共通する仕組み」をもとに、環境問題を解決していくためのルールを作りました。それは絵本にされ、スウェーデンの450万世帯の家庭と、全国の学校に配られたのです。

「生物多様性を守りましょう」

今日はふたつのキーワードについてお話しましょう。まずひとつは、生き物に対する姿勢についてのキーワードです。私たち人間以外に、じつに3000万種類の動植物が、この地球上にいます。そして、それらはみな依存しあって生きています。

毎日、50〜100の種類の生物が絶滅しています

また、人間になくてはならない酸素は、植物のおかげで作られています。ですから、生き物を大切にする、というのは、直接的に私たちの生活、存在に関わってくるのです。自然に返す能力以上に自然からものをとらないようにする。「1本、木をとったら、1本返す。返すことができないのなら、木を取らない」。これが大切なのです。

スウェーデンでは、生物多様性を守るために、「エコダクト」を作っています。道路を作ると、今まで一体だった自然が分断され、生態系が狂ってしまいます。そこで植物に覆われた緑の橋(エコダクト)を作っています。それは人間以外の生き物(動物、昆虫など)が通る橋です。

「できるだけ地下から取らないでください」

次は、地球温暖化に関するキーワードです。

地球温暖化の原因のひとつは、「CO2(二酸化炭素)の増加」です。CO2が増えるのはどうしてでしょうか。じつは、地球上のものはすべて循環しているので、地上にあるものだけを使っていれば、CO2が増える、ということはありません。それでは、なぜ増えるのかというと、地下にある資源を地上に持ってきて、加工し、使うからです。

地上のものだけ使っていれば、CO2は増えません
バイオマスタクシーもあります

それならば、どうすればよいのでしょうか。スウェーデンでは、なるべく「地上のもの」を大切に使うことによって、地球温暖化を食い止めようとしています。たとえば、スウェーデンの国営鉄道の一部は、風力発電で動いています。ストックホルムの市内バスは、すべてバイオマス(木や葉など)を原料にして走っています。

また、燃料の開発と導入にも力を入れています。フランスやドイツの余ったワインを買い取って、安くエタノールを作り、それを燃料にしているハイブリッドのボルボ製の自動車があります。また、バナナとコーヒーを原料とした燃料で走っている自動車に乗ると、駐車場がタダになります。

そして「自動車をやめ、自転車に乗ろう」とも推進しています。実際、スウェーデンの人口の29〜40%は自転車通勤です。

「何もなくならない、すべては広がる」

それから、ゴミ問題に関するキーワードです。ゴミは、燃やせばなくなるのではありません。燃えカスやCO2、有毒ガスなどになり、気体は空気中に拡散します。ゴミを出すということは、自然にすみやかにかえるもの以外は、地球を汚すことになるのです。スウェーデンでは、徹底したゴミ分別を行っています。それは最終的には100種類! 家庭で、ゴミが出たときからすぐに分別し、面倒のないようにしています。

プラスチックは、最近、スウェーデンでもどうしても多くなってきていますね。ただ、日本に比べると、はるかに紙製品が多いです。プラスチックを使う前に、なるべく“地上”のもので替わりがきかないか、ということを考えるからです。たとえば、ここに「エコなホテル」のキーカードがありますが、これは木でできています。木は“地上”。だから、プラスチックを使うよりかは環境にいい、ということになりますね。

ホテルのキーカードの表。けっこう硬いです
キーカードの裏。磁気部分は帯状に塗装してあります

ゴミの量は1か月にサッカーボール1個分!

私の家は、月に1回、ゴミを出すために、階段を下りてゴミ捨て場にいきます。私の家では月に1回のゴミが、サッカーボール1個分しか出ません(http://www4.famille.ne.jp/~oneworld/index.html 写真・OneWorldのサイトより)。日本人の家はどうですか、毎日のようにゴミを捨てに行きますよね。いちいちゴミを捨てるより、分別し、何度も使ったほうが面倒くさくないと思いますが、どうでしょうか?

ペオさんが代表を務める環境団体
国際環境ビジネスネットワーク OneWorld
http://www.oneworld-network.com
シティ・エコヴィレッジ東京
http://www.CEV-Tokyo.net

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