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70年代へ(2)

大物バンドの解散、ロックスターたちの早すぎる死……1970年前後はロック史上、悲劇的な出来事が相次いだ。けれどもそのなかから新たな兆しも見え始めていた。

翌1970年、ラスト・アルバム「レット・イット・ビー」のリリースに前後して4月10日にビートルズが解散を発表。同年9月18日ジミ・ヘンドリックスが睡眠薬の過剰服用により突然死。そのわずか2週間後には切り裂くような声でブルーズを唄った白人女性シンガーのジャニス・ジョプリンがヘロインの過剰摂取で死亡。翌71年7月、ジャズ畑出身の演奏力を持ち、文学的でセクシャリズムを表現した歌詞やステージが支持されていたバンド、ザ・ドアーズのボーカル、ジム・モリソンがアルコール中毒とオーバードーズが原因で死亡した。

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ドアーズ

ビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニー with ジャニス・ジョプリン。ハリウッドパレスでのライブ。
Big Brother and The Holding Company – Summertime
http://www.youtube.com/watch?v=8npK1q6LY9Q

ドアーズ、セカンドアルバム「Strange Days」収録曲の「Moonlight Drive」。
The Doors – Moonlight Drive
http://www.youtube.com/watch?v=ni_jr0xwX48

短期間の間に起こったこれらの悲しい出来事は、フラワー・ムーブメントの終わりを自覚させるに足るはっきりした事象ではあったものの、同時代に新たな萌芽が芽生えていたのも事実だった。この時期に例えばレッド・ツェッペリンやジェフベック・グループがブルーズに根ざした激しいロックサウンドでデビューし、のちのハードロック・シーンを先導している。そしてピンク・フロイドやキング・クリムゾン、ソフトマシーンといったバンドがクラシックや実験音楽の要素を取り入れ、プログレッシブ・ロックの基礎を築いていった。

レッド・ツェッペリン

レッド・ツェッペリン1969年のライブ。ファーストアルバム収録曲。
Led Zeppelin – Dazed and Confused
http://www.youtube.com/watch?v=bMk98Hn9e88

1967年のピンク・フロイド、ファーストアルバム収録曲「Astronomy Domine」のプロモ・フィルム。
Pink Floyd – Astronomy Domine
http://www.youtube.com/watch?v=Aff59S3tR5Y

あるいは1967年にファーストアルバムをリリースしたヴェルヴェット・アンダーグラウンドはニューヨークをベースにアンディ・ウォーホールらとともに活動し、のちのニューウェイブ・ムーブメントにも繋がる音楽の素地を作った。MC5やイギー・ポップ&ストゥージズは怒りや倦怠をごくストレートに表現して、70年代後半のパンク・ムーブメントへ繋がるエネルギーを生んだ。
Velvet Underground documentary pt 1
http://www.youtube.com/watch?v=TUihm4u2-ok

ヴェルヴェッツとアンディ・ウォーホル

しかし、もうひとつ重要なことは黒人のソウル・ミュージックが70年代一層ポピュラーな音楽になったことである。ソウル・ミュージックはサム・クック、ジェームス・ブラウン、オーティス・レディングあるいはモータウン・レーベルのアーティストたちによって開拓された。そして60年代に黒人たちに支持され、市民権を得ていた。彼らのほとんどは、アメリカの各工業都市へして移住していた、安価な労働者だった。

あきらかに時代が要求する音楽を作り上げて、ポピュラー音楽の可能性を広げた彼ら黒人アーティストのソウル・ミュージックが、70年代にどう発展していったかを次回から書いてみようかと思う。

1967年ヨーロッパ Staxツアーのオーティス・レディング
Otis Redding – Try A Little Tenderness
http://www.youtube.com/watch?v=W4PDj3IkC04

この時代(1967年〜70年)の話題盤
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The Beatles / Let It Be
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000002UB6/
1970年発表のラストアルバムで同名ドキュメンタリー映画のサウンドトラック。前作「ABBEY ROAD」より前にレコーディングされている。

The Beatles / Abbey Road
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000002UB3/
1969年リリースのいわずと知れた名盤。”Here comes the sun, here comes the sun, and I say, it’s all right.”

Big Brother & the Holding Company / Cheap Thrills
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00000K2VU/
ジャニス・ジョプリン在籍中の1968年にリリースされたビッグ・ブラザー&ホールディング・カンパニーのメジャー・デビュー作。いくつかあるジャニスのソロライブ盤もいい

Doors / ハートに火をつけて
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B0009XE9UA/
たしかな演奏に文学的な歌詞とスキャンダラスなライブ・パフォーマンスで人気を博したドアーズの1967年発表のファースト・アルバム。「ブレーク・オン・スルー」に始まり「ジ・エンド」で終わる、最高にかっこいい1枚。

Led Zeppelin / Led Zeppelin
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000002J01/
1969年1月発表のレッド・ツェッペリンのファーストアルバム。ブルージーなハードロック炸裂で新時代の到来。なにもこれに限らず2枚目も3枚目も4枚目もツェッペリンはヤバいのだ。

Pink Floyd / 夜明けの口笛吹き
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00005GL8N/
シド・バレットが唯一きちんと関わったピンク・フロイドのデビュー作。のちに「狂気」、「原子心母」でプログレッシブ・ロックとして大成していく前の、1967年らしいサイケデリック感を備えた名盤。

King Crimson / クリムゾン・キングの宮殿
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000E1KN5W/
ロバート・フリップが68年に結成したキング・クリムゾンの1969年発表のファーストアルバム。高度な演奏力や構成力に加え、歌詞・強烈なジャケットのイメージまで含めトータル・コンセプト・アルバムとしての質的高さを誇る快作。

The Velvet Underground & Nico
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000002G7C/
生粋のニューヨーカー、ルー・リードと現代音楽を学んでいたジョン・ケイルを中心に結成されたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの1967年のファースト。アンディー・ウォーホルの工房「ファクトリー」の常連だったニコをゲスト・ボーカルに迎え、いわゆる当時のサイケデリック・ムーブメントとは距離を置いて作られた、この筋(?)では金字塔的な名盤。

イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ / イギー・ポップ&ザ・ストゥージズ
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B00005HE80/
1969年、モーターシティー=デトロイトから出てきたイギー・ポップ&ザ・ストゥージズのデビュー盤。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのジョン・ケイルがプロデュース。当時主流だったカウンター・カルチャーまでをも否定する、とにかくやたらめったらの攻撃性と反作用的な倦怠感……イギーがジム・モリソンに憧れてたっていうのもなんとなくうなづける。