ISSUE☆おすすめの連載! リノベーションまちづくり実践記

1 month ago - 2016.08.12

SHARES  

建築を、もっと身近で楽しいものに。歌いながら空き家を改修し、全国を旅する「パーリー建築」を取材してきました!

s_IMG_7805

「この家、ずっと誰も住んでいないなぁ」。まちを歩いていて、そんなことを思ったことはありませんか?

総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家の数は820万戸。総住宅数における13.5%を占めています。10軒に1軒は空き家と考えると、その多さに驚いてしまいますね。

そんな空き家を改築しながら全国を旅している集団がいます。その名も「パーリー建築」。地域の人を巻き込んで、毎日のようにパーティーを開きながら、使われていなかった古い建物をゲストハウスやカフェへと生まれ変わらせています。

子どもの頃、冒険や秘密基地に憧れていたんですよ。まさか大人になって、そのまんまの暮らしをしているなんて思っていませんでした。

コアメンバーの宮原翔太郎さん山際一輝さんに、パーリー建築を始めたきっかけやその哲学を教えていただきました。
 
s_IMG_7822
左が宮原さん、右が山際さん。

建築は、暮らしの延長線上にある「お祭り」

浅草の雷門通りから少し奥まった路地に、ちょっぴり窮屈そうに佇む2階建て。ここが今まさに、パーリー建築がリノベーションしている物件です。
 
s_IMG_7904
9月に完成予定のゲストハウス&カフェ

恐る恐る中に入ると、20代位の男女数人が工具を手に持ち、改修作業をしていました。歌声や笑い声が響き、とても楽しそうな雰囲気。「昔からの友人?」と思いきや、そこにいたのは「昨日初めて来た人」や「メンバーの友人の友人」でした。毎日、さまざまな人が入れ替わり立ち替わり、この場を訪れて作業しているようです。

オープンする前から、人が集まり地域の拠点になっていく。それがパーリー建築の特長です。実は、宮原さんがパーリー建築を始めた理由も、そこにあったそう。

宮原さん 専門学校でスペースデザインを学んだ後、建築事務所に入ろうと就活しながら広島でゲストハウスのセルフリノベーション建設に携わっていたんです。

そこで、ただハコをつくるんじゃなくて、その過程を通していろんな人を巻き込み、人が集まる場として育てていくことの面白さに気づきました。

普通の建築事務所では手の届かない範囲だけど、今の時代に求められる建築ってこういうものなんじゃないか、と思ったんです。

s_IMG_7793

最近は滅多に見かけなくなりましたが、昔は家を建てるときに、屋根の上からお餅やお菓子を配る“餅まき”をしたものです。ああいう行事があると「ここに新しく家ができるんだな」と親近感が湧きますよね。

宮原さん曰く、江戸時代の浮世絵にも、上棟のとき人々が旗を持ってお祭り騒ぎをする様子が描かれているのだとか。娯楽が少ない時代、「新しく家が建つこと」は町の一大イベントだったのでしょう。

宮原さん 無理矢理つくられたエンターテインメントじゃなくて、暮らしの中に自然と組み込まれたお祭り。建築って、もっと身近で楽しいものだったはずなんですよね。パーリー建築は、その現代版を目指しているんです。

s_content_ec5c91c20f21455727c9ad557520d6b1b757e3e1

プロとして完璧な改修をするのではなく、
物件を使う人と一緒に作業をして技術を共有する

東京の渋谷、新潟の十日町、京都。宮原さんは知人や友人からの紹介で、次々と古い家を改装していきました。建築のプロではないため、依頼主からお金はもらいません。その代わり、改築中の物件に無料で住まわせてもらい、毎日のようにパーティーを開きます。

宮原さん パーティーを開くと食べ物が集まるから、食いっぱぐれることがありません。炊飯器や布団を持ってきてくれる人もいて、ありがたかったですね。お金を稼がなくても、パーティーさえしていれば死なない、と学びました(笑)

「ここに棚があるといいな」「こういう造りにすると便利かも」。実際に暮らしているからこその気づきも工事に反映させます。改修が進むにつれて、自分たちの暮らしがレベルアップしていく手応えもまた面白いのだとか。
 
s_1917061_1695557514014193_2150313769592273087_n
屋根の上が気に入って寝床にする山際さん

山際さんは、「自分の手で暮らしをつくること」に興味があり、十日町からパーリー建築に合流したといいます。

山際さん 自分自身の手をつかって建築をしていくことには、住宅の構造や工法、道具の意味だったり、材が朽ちていく自然のプロセスだったりを、身体を通して発見していく楽しみがあります。

本を読んで知識として覚えるんじゃなくて、経験の中で例えば「ああ、こうやって木は土に還っていくんだ」って実感できるんですよ。そんな時はもう柱を食べてた白アリさんや腐食菌に敬意しか湧かないです。彼らがいないと山の倒木は溢れちゃいますよね。

s_S__18923526
壁を取り払ったら出てきた腐食した柱。外壁に穴が空いていて水が入り込んでいたことがわかります。

山際さん パーリー建築に関わってくれた人たちも、一緒に時間を過ごしながら「床を外すとこんな風になってるんだ」とか、壁を壊して「案外単純な構造なんだなぁ」とか、生活の中で当たり前に使っている物への気づきを共有していくんです。それがパーリー建築の本質的な価値だと思っています。

宮原さん 僕らがいなくなっても、オーナーや住民が自分でメンテナンスできる状態になる。それが一番持続性があっていいことなんじゃないでしょうか。

実際に、十日町につくったシェア古民家「ギルドハウス十日町」の住人たちは、壊れたところがあれば自分たちで修理し、暮らしていく中で必要だと思ったものがあれば自分たちで改修しているそう。建築=専門家にお願いするもの、ではなく、自分たちでつくっていくもの、という考え方が浸透しているのですね。
 
niigata
ギルドハウス十日町

tana2
ギルドハウス十日町のメンバーがDIYした棚

もうひとつ、パーリー建築が大事にしているのは、余りものを活用すること。改修する建物も長らく空き家になっていたもの、衣類や生活用品も友人たちからの貰いもの。そして、改修に使う材料も廃材を主に使っています。

宮原さん 田舎を走っていると、解体中の家を結構見かけるんですよ。そこで大工さんたちに挨拶をして、廃材を譲ってもらうんです。既製品を買うとそれはどこまでも「誰かがつくったもの」だけど、余剰を組み合わせてつくったものは「自分のもの」になりますよね。そういうのがめちゃくちゃ面白いな、と思っています。

s_unnam
解体した階段をカウンターの椅子として活用しました。

s_IMG_5686
拾ってきた薪風呂窯がロケットストーブに変身!

s_tana
処分する予定だった机の引き出しを壁に打ち付け、飾り棚に。

s_S__20299853
空き家から出てきた古い着物地で小物をつくる「縫い部」も発足しました。

伝えたいのは、「やれば、できる」ということ

出会った人たちと“パーティー”を組んで、毎日のように“パーティー”をしながら全国各地を回る。宮原さんたちは「子どもの頃に憧れていた暮らしそのまま」と笑って話します。

「いままでの活動を通して、印象的だったことは?」と聞くと、十日町で開催した音楽祭のエピソードを紹介してくれました。

ギルドハウス十日町が完成した後、建物の2階で音楽イベントを開いたんです。「大地の芸術祭」の参加アーティスト・淺井裕介さんも壁にライブペイントをしてくれて、すごくいい雰囲気で。それが「月見音楽祭」にもつながりました。

s_content_69b7975f63b9e6612d126b739165e2bcf774e149

「月見音楽祭」は、ギルドハウス十日町のある美佐島駅の芝生広場で行われました。櫓を借りてステージをつくり、ポスターはローカル線の車両に無料で掲示してもらい…と、地域からのバックアップも受けられたといいます。当日は、限界集落の町に200〜300人ほどの人が集まり、とても盛り上がったとか。物件だけではなく、地域全体を巻き込んだ“パーティー”になったのですね。
 
tsukimi

そうした経験から、宮原さんたちの興味は「空き家」から「地域」へと広がっている様子。来年はどこかに定住して、そのエリアの空き家を改修し、たくさんの人を呼んで地域をプロデュースしようと計画しているそう。「パーリー建築」はどんどん形を変え、進化していくのですね。

ちなみに、宮原さんは8月にリノベーションの実践技術を学ぶ学校「リノベーションスクール」に、ユニットマスターとして登場する予定。どんなことを伝えたいと思っているのでしょうか?
 
s_school
greenz.jpでも何度か紹介しているリノベーションスクール

宮原さん 専門的な話はほかの人がしていると思うので、僕たちは「やればできる」と伝えたいですね。よく、現場に来た人から、「家って自分で改装できちゃうんですね」と言われるんです。僕たち、わからないことはGoogleで検索しながらやってますから。

もちろん、人が住むものなので耐震性など安全面には配慮しますし、プロの職人さんの丁寧な仕事は尊敬しています。でも今って「きちんとしなくちゃいけない」という病が蔓延している気がするんです。

自分以外の誰かに全部任せて、ちょっとでも何かあったらすぐにクレームつけて。だからどんどん基準が厳しくなっていく。そういう方向じゃなくて、自分でつくって自分で責任を持つ、ということに楽しさを感じられる人が増えていくといいな、と思います。

s_11825162_1653129648256980_3780209875084826011_n

業者に依頼すると数十万かかるような工事も、余りものを使って自分で工事すれば数万円で済んでしまったりします。安全性や品質を重視するならプロに頼んだ方が確実ですが、そうでなければ自分でやってみるのも手かもしれません。楽しそうに作業するパーリー建築の様子を見ていたら、本当に「自分でもできるかも」という気になってきました。

みなさんも、周囲に使えそうな空き家があったら、パーティーを組んで改築し、楽しみながら人が集まる場へと再生してみてはいかがでしょうか。もしかすると、子どもの頃に憧れていた冒険のような日々が始まるかもしれません。

え、リノベーションの方法がわからないって?

そのときは、パーリー建築の出番。一緒に作業しているうちに、自然と建築技術や工法がわかってくるはずです。

[sponsored by リノベーションスクール]

– INFORMATION –

 
第11回 リノベーションスクール@北九州
日時: 平成28年8月18日(木)~21日(日)4日間
会場: 北九州市小倉北区魚町三丁目3番20号 中屋ビル内 各所他、小倉魚町界隈各所
詳細は、こちらへ!: http://kitakyu.renovationschool.net/outline

“パーティー”の一員になりませんか?
パーリー建築Facebook

writer ライターリスト

hidaemi

hidaemi

greenz.jpエディター/ライター 1984年2月29日生まれ。茨城出身、神奈川在住。 「地域」「自然」「生きかた・働きかた」をテーマに、書くことや企画することを生業としています。虹を見つけて指さすように、この世界の素敵なものを紹介したい。 HP:http://www.cotohogu.com/ blog:http://himaemi.blog.jp/ twitter:@emi229「東北マニュファクチュール・ストーリー」というサイトを、一般社団法人つむぎやと一緒に運営しています。 ・日本橋のシェアオフィスにて、気ままなごはん会「6階食堂パルプンテ」を開催。日によって美味しさにばらつきがある、適当な会です。

partner パートナーリスト

リノベーションスクール

リノベーションスクールは、不動産の再生を通じてまちでの新しいビジネスを生み出しエリアを再生する実践の場です。 みなさんのまちには、使われていない古い建物や空き地はありますか? 誰にも気づかれることなく、ゆっくりと朽ちていく木造家屋。 空き店舗が増え、徐々にスラム化する商業テナントビル。 空き家はまちの宝物。空き家の新しい使いかたをみんなで考えて、みんなで楽しく使って、まちを元気にする。「リノベーションスクール」を通じて、そうした事例が全国に生まれつつあります。 ⇒リノベーションまちづくり実践記」 ⇒リノベーションスクール ウェブサイトリノベーションスクール Facebookページ

AD

infoグリーンズからのお知らせ