みなさんが今この瞬間、この記事を読むのに利用している、パソコンやスマートフォン。これらは、電気があるから使うことができるものですよね。
私たちが日々当たり前のように電気を利用している一方で、今「エネルギー貧困(energy poverty)」という問題が欧州を中心に発生しているといいます。
これは、日常生活における基礎的なエネルギー需要を満たせない状態、つまり電気・ガス料金の支払いに問題が生じていることを指すそうで、先進国でも生じ始めているのだとか。
そんななか、アメリカ合衆国メリーランド州のバルティモアでは、低所得者層向けにエネルギー自給プログラムを開始しました。
全米で6番目に収入格差が大きい貧困都市といわれている、バルティモア。(参照元)このプロジェクトはバルティモアに住む低所得者の人々が、自分たちで電気を自給して暮らしを安定させるために、ソーラーパネルを提供しようというもの。
バルティモア市、ソーラー設備の導入を促進する「GRID Alternatives」というNPO団体、そして「Civic works」という地域の職業訓練団体が協力して開催している、このプログラム。ただソーラーパネルを提供するだけではなくて、設置方法や住居の耐寒構造についてのレクチャーもセットで行っています。
具体的には3ヶ月の職業訓練プログラムとなっており、まず座学と実習に2週間ずつ費やしたのち、そして残りの2ヶ月はソーラーパネルを取り扱うオペレーターとしてのトレーニングを積むことができるそう。
実際にこのプロジェクトに参加し、ソーラーパネルを自分の家に設置したLeonard Wills(以下、レオナルドさん)は、こう話します。
ソーラーパネルを設置し再生可能エネルギーに投資するということは、エネルギー不足を解消できるだけでなく、将来的に電気代の出費を減らすことにもつながります。
ライフラインのひとつである電気を確保することで、限りあるお金を他の出費にまわせるようになり生活の質が向上するので、とても良い方法だと思います。
低所得者の生活をサポートするための方法は、たくさん考えることができると思います。たとえば、炊き出しのように温かい食事を配る方法や日用品を無料で配る取り組みは世界各地で行われていますし、毎月の電気代を負担するという方法も考えられるかもしれません。
しかしこのプロジェクトは、ただ無償で物を配るのではなくソーラーパネルを配給し、さらに自分たちで設置する技術を学べるので、電力の確保と仕事につながるスキルを習得し、低所得者たちの自立実現を近づけることができそう。
でき上がった一枚のソーラーパネルを前に、達成感で笑顔になる女性の方!
現在までに10戸の家とコミュニティセンターにソーラーパネルの設置が完了したという、このプロジェクト。
持続可能なエネルギーと生活をつくり出す、この環境にも優しい自立支援が、他の地域にも拡大していくといいですね。
[via Treehugger, GRID Alternatives, Twitter]
(Text: 岩崎史香)