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今を暮らす。未来をつくる。ものづくりの達人・吉田ケンゴに聞く「循環型DIYライフの楽しみ方」

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

森の中に暮らす。そのひと言からあなたは何を思い浮かべるでしょうか?

木漏れ陽、せせらぎ、風のざわめき。自然の色や音に囲まれながらゆったりと流れる時間…。なぁんて夢は広がるけれど、現実はなかなかそうもいかないもので、暮らしを自分でまかなうスローライフはとにかく忙しいもの。

ましてや電気もガスも水道もない森の中。やらないといけないことは果てしなくあるわけです。そんな森の中に暮らす一体みなさんは、どんな暮らしをしているのでしょう?

あれこれ想像は広がりますが、妄想していても仕方がないですね。まずは覗きに行ってみましょうか。

森でクリエイション

ここは阿蘇。カルデラを囲む外輪山のとある森の中。木漏れ日の中からひとりの男性がニコニコと笑みを浮かべながら姿をあらわしました。それは、ケンゴマンこと吉田ケンゴさん

ミュージシャンであり、楽器、アクセサリー、雑貨から、ロケットストーブやドームテントまでなんでもつくるものづくりの達人。彼の住まいは、あらゆるものを手づくりした循環型DIYドームなのです。

これはフラードームっていうんだよ。バック・ミンスター・フラーが発明したもので、三角形を組みあわせてつくってあるんだ。

フラードームはジオデシック・ドームとも呼ばれ、三角形のパネルを組み合わせたりパイプを三角形に組むことで、柱を使わずに広い空間をつくることができます。

世界中で応用されている技術で、日本の大きな建造物ではナゴヤドームに使われていることでも有名。ケンゴマンのつくったドームは金属のパイプを加工してあり、テントのように折りためて携帯性バツグン。持ち運びできるので販売の他レンタルでも貸し出され、野外フェスなどで活躍しています。
 
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ケンゴマンとパートナーのノブ、愛犬ポチは、2011年からここで暮らし始めた

彼とパートナーのノブが、知人が管理するこの森にドームテントを建てて暮らすことにしたのは2011年のこと。3.11直後に、埼玉から九州へ移住したのが始まりでした。

これからはリアクションじゃなくてクリエイション。自分の気分づくり、暮らしづくり、住む場所づくりってすごい大事だよ。

ぼくは森側に住んで森側から社会とつながる。逆に社会側から森につながる人もいる。ぼくがどっかの大会社の社長と森で会うと、自分の話を淡々とできる。でも街で会うと社長の話を聞かされる。

自分にあったカントリーサイドで活き活き、伸び伸びしていると、社会から森につながる人がここに来て、ぼくの話を聞いてくれるんだよ。

埼玉にいた頃から環境活動や社会活動に関わり、なんでも自分でつくってきたケンゴマン。彼の「つくる暮らし」は3.11をきっかけに、さらに深化したようです。

自然と生きるための工夫

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パネルは竹や森の木などを使ってつくった手づくりの台で固定

ケンゴマンの好きな言葉の中に、ネイティブアメリカンのこんな言葉があります。

理解することは、物事の関係を知ること。

ここでの暮らしはまさに、自然の摂理を知り、自然と人の関係を知ることで初めてできた暮らしでした。

人間が生きていくために必要なものはいくつあるでしょう? 

まずは水。森の中には湧き水から流れ出した沢があったので、そこから水を引いて飲み水などに使うことにしました。
 
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敷地内には水が湧いていて、いつでもきれいな水が飲める

そして火。ガスのないここでは、調理の熱源は薪。ロケットストーブと薪ストーブが調理に活躍しています。

ロケットストーブなのにロケットの形をしてないのはおかしいでしょ(笑)

と発案した、オリジナルのロケット型ロケットストーブはマルシェで販売されいて、愛用者も多いです。自作のロケットストーブがずらりと並ぶ調理場は、竹を割ってロープでつないでつくりあげました。

ケンゴマンの住まいは、テント以外はほとんど竹でつくられています。

屋根は四つ割りにして交互に重ねてひもで縛って止めているだけ。最初につくったものは3年以上経ったけど雨漏りもしないよ。

シンプル長持ち。しかも材料費はタダ。さらに最後は薪にしてもよしと、まったくムダがありません。自然の仕組みは当たり前のようで、ものすごくよくできていますね。
 
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使い込まれたロケットストーブ。並べて使えば火力の調整も簡単。左端のロケット型ロケットストーブはマルシェやネットで購入できる

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竹屋根は4つ割にした竹にインパクトドライバーで穴をあけ、ロープで縛ってつくる

食べたら必ずお世話になるのがトイレ。こちらも暮らしに欠かせないものです。

ここにあるのは地面に穴を掘るタイプのコンポストトイレ。いっぱいになったら移動するというシンプルな仕組み。穴を掘るのは難しそうですが、そこはケンゴマン。竹で穴掘り器をつくって利用していました。

直径6〜7cmくらいの青竹を3mくらいに切ったものを用意して下の部分をちょっと竹ヤリ型にとがらせその部分20㎝くらいをを四つ割にします。

それを地面に突き刺していくと、うまい具合に穴底の土をつかんでくれて、穴が掘れるのです。シンプルな道具で簡単につくれるところかいいですね。
 
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こちらも総竹づくり。コンポストトイレ

さらに、現代人に欠かせないのが電気。2000年頃から自家発電に取り組み、たびたび太陽光パネルを買い集めてきたケンゴマンは、年代も出力もさまざまな太陽光パネルを持っています。

使う道具によって電圧(V)が違うので、用途に合わせて四つの配線を組んでいるそうです。

バッテリーは自動車の修理工場からもらってきた廃バッテリー(スターターバッテリー)と、電圧が安定していて繰り返しの放充電にも痛みにくいディープサイクルバッテリーのふたつ。

ぼくは独学もいいところで、詳しい人がくると怒られることもある(笑)

でも、自分でやると覚えていくんだよね。爆発するとか、すごく危険なことだけ教えてもらって、後は自分でやってみたらいいんじゃない?

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ドームの中の配線。手前が自動車の廃バッテリー。奥がディープサイクルバッテリー

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ドームの中での使用家電。直流掃除機、IKEAのソーラーライト、ノートパソコン、スマートフォン。24Vの電気工具は別の配線で使用

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バッテリー部分が壊れたインパクトドライバーをスターターバッテリーに直結。怪我の功名で長時間の利用が可能になった

ちょっとした発想の転換から新しいものを生み出すのが得意なケンゴマン。車の屋根に太陽光パネルをのせてバッテリ―につなぎ、シガーソケットを通して別のバッテリーに充電しています。

こうすると、出店の時の電源にも使えるし、もしもバッテリーがあがってしまっても自然に回復するというスグレモノ。車種によってはシガーソケットを通さず直流のまま充電することもできますが、ダイナモ(車の発電機)を傷つける可能性があるので注意が必要です。
 
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ジムニーの屋根に40Wのパネルをのせて発電中

ひょうたん市場で暮らしをつくる

河原での越冬キャンプを開催したり、さまざまな環境イベントに関わってきたケンゴマン。人と人との関わりの中で、あることを発見したといいます。

人が出会って、関係性が生まれて、役割が決まると、相乗効果が起こるんだよね。ひらめき、シンクロがどんどん起きて、自分の得意なことが役立てられて、お互いにありがとうって言えるようになる。

それで、どうしたら今、地球が必要としている相乗効果を起こせるかなって考えていて、思いついたのが、ひょうたん市場なんだよ!

いつもまっすぐな眼差しでエネルギッシュに語るケンゴマンですが、この話題になると、いつもにも増してその輝きが大きくなります。

ひょうたん市場は8の字型にお店を並べたマルシェで、8の字のふたつの円の中では子どもが自由に遊べたり、パフォーマンスができるようになっているんだよ。

それを竹を使って、ぼくがここで使った技をみんなに教えながらつくったら、すごい相乗効果が生まれる!!! これを考えているとずっとワクワクしているよ。

今、土地を探しているんだ。大きさは50M×25Mで、駐車場と畑があること。飲める水があって、火が焚けるのがボクのバラ色プラン!(笑)使っていい土地を持っている人があったら教えて!

たくさんのイベントを経験してきたケンゴマンは、イベントが充実したものであればあるほど、これが暮らしに続いていかなきゃ意味がない。世界は変わらないと思ったのだそうです。

そして、マルシェや環境イベントを日常化していく手段として、ひょうたん市場を思いつきました。

お店はひとりひとりが工夫してつくったらいいよ。土壁塗ってもいいし、茅の屋根をふいてもいいし、2階建てにしてもいい。ここに住んじゃう人も出てきたりしてさ(笑)ここでは本当にいいものだけを売るようにして、みんなで経済をつくっていったらいいと思うんだ。

このアツイ思いが伝わって、九州では何カ所かでひょうたん市場ワークショップが開催され、ケンゴマンの竹を使った建物づくりの技が拡散中。ひょうたん市場も近々実現しそうな気配がしてきています。

ケンゴさんの暮らし、いかがでしたか? みなさんも、暮らしづくりをはじめてみませんか?
 
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ドームの中の作業場。ここからものづくりで世界がどんどん広がっていく

(Text: 澤田佳子)

– INFORMATION –

 
ローカルメディア3
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