ISSUEインクルーシブ 子ども

2 years ago - 2014.09.09

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やりたいことをやるのではなく、違うなと思ったことをやめていく。greenz.jpプロデューサー塚越暁さんが「子ども原っぱ大学」を立ち上げたあと

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秘密基地づくりは、大人も子どもも入り交じって、思い思いの家を建てるカオスな体験(笑)

会社を辞めて、自分のやりたいことを仕事にする。
そんなふうに働き方を見直す人が、増えていると思いませんか?

一方で、現実にはそう簡単にいかずに悩んでいる人も多いはず。

今回は、大人もこどもも関係なく、身近な自然で思いっきり遊ぶことで、小さな気づきを得られる「子ども原っぱ大学」を立ち上げた塚越暁さんに、自分らしい仕事のつくりかたを聞きました。
 
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塚越暁さん
「子ども原っぱ大学」代表。身近な自然、手や体を動かす体験を通しての学びの場をつくっている。雑誌編集、ECサイト運営、経営企画と11年の会社員生活を経て独立。8歳男子と5歳女子の2児の父。

身近な自然の中で思いっきり遊んで気づいた、大切なこと

塚越さんは子どもの頃、身近な自然の中でたくさん遊んでいたそう。枯れ葉まみれになって、泥だらけになって、ズボンに穴が空いたり、擦り傷もたくさんつくったり…。

小さい頃は当たり前だったそんな時間から遠くなっていたな、と気づいたのは、幼稚園に入園したお子さんと遊んでいたときのこと。最初は“子どものために”と秘密基地を一緒につくったり、枝やどんぐりを拾って遊んでいたら、子どもと同じくらいに、もしかしたら子ども以上に楽しんでいる自分がいた、と塚越さんはいいます。
 
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3月にダンボール秘密基地づくりが行われた松陰神社前の「原っぱ」にて

小さい頃の感覚がよみがえってくる喜び、日常の凝り固まった頭がほぐれる感じ。五感が総動員されていく感覚。そして、かたわらでは目を輝かせて遊んでいる我が子。なんて楽しいんだろう、なんて素敵な時間なんだろうと思いました。

自然に触れ合うのに、どこか遠くの大自然まで頑張って出向く必要なんてない。僕らの周りには、こんなに素敵な小さな自然が溢れている。お金を掛けずに、ちょっとした工夫で、家から遠くない場所で、大人も子どもも最高の時間を全身で味わう体験を、たくさんの人と共有したい。そんな思いから「子ども原っぱ大学」を立ち上げました。

「子ども原っぱ大学」には、小難しい授業も、ややこしい校則もありません。ここでの学科は、楽しそうなものばかり。

・大人も子どもも一緒になってつくる「秘密基地づくり学科」
・基礎から一眼レフを学んで子どもフォトグラファーになる「ホンキのカメラ学科」
・手づくりの望遠鏡で満点の星空を眺める「星空マイスター学科」
・青空と木々に囲まれて全力で踊る「木と踊る学科」

など。コンセプトは“子どもはもちろん、子どもと一緒になって大人も楽しむ”というもの。何も考えず、とにかく思いっきり遊ぶ。すると、自然の中で凝り固まった頭がほぐれて、大人も子どもも関係なく、何かしらの気づきを得られるのです。

自分の根っこにあるものを、さらけ出すこと

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「子ども原っぱ大学」は、自分の好きなことの結晶だと話す塚越さんですが、greenz.jpフクヘンの小野裕之さんが講師のグリーンズの学校「green school」から生まれた、仕事と両立するマイプロジェクトでした。

最初は、三浦半島にある農園カフェの裏山を借りて、「秘密基地づくり」をやろうと、スタッフを集めてウェブサイトやFacebookページを公開して…。ところが、facebookページの「いいね」の数は、自分の「いいね」も合わせてたったの5ほど…。

Facebookでは、自分のタイムラインと、子ども原っぱ大学のfacebookページを切り分けて使っていた塚越さんですが、これはもう、自分のタイムラインに投稿するしかないと思ったそうです。

そのときの僕は、会社で経営企画をしていて、facebookでつながっている会社の同僚たちに、マイプロジェクトを公開するのが怖かったんです。「あいつどうしたんだ?」って思われるんじゃないかと。自分の中にあった大事なものを差し出すから、否定されるのが怖かったんですね。

勇気を振り絞って、自分のタイムラインに「子ども原っぱ大学」のイベントを投稿してみると…。先輩や同僚から「面白いことを考えてるね」とシェアをしてくれて、あっという間に定員が埋まります。

自分の根っこにあるものを差し出して、いいねと言ってくれたことに、すごく励まされました。しかも、自分たちがゼロからつくった場に対して、人が喜んでお金を払ってくれて、うれしそうに帰っていく。

儲けはほとんどないけど、ぐるっとお金が動いて参加した人が喜んでくれているということが、とてもうれしかったんです。

自分が楽しいと思えることを、仕事にする

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舞台は三浦半島の農園カフェ「SYOKU-YABO農園」。秘密基地をつくるために、枯れ木、紐、藁といった自然の素材を集めます

「子ども原っぱ大学」のイベントを2回目、3回目…と重ねていくうちに、仲間も集まって、タスクも増えていくと、会社員としての時間のほうが長いのに、気持ちがどんどんマイプロジェクトに向かっていったのだそう。

自分が楽しいと思えることをやっているから当然なんですが、会社員としての仕事とマイプロジェクトで、思いの強さが逆転しちゃったんですね。

たとえ儲からなくてもお金は動いている。ということは、論理に飛躍があるけど、これで稼いでいけるんじゃないかって考えて。

「子ども原っぱ大学」を生業にしたいという思いを言葉にして人に話すと、また一歩前へ回転している。言葉にするとそれが目指す方向になっていくんですね。

その当時の塚越さんは、大企業の子会社の経営企画室というポストで、仕事にやりがいを感じていたのだそう。ただ、レポートや意思決定のプロセスで親会社とのやりとりを繰り返すうちに、自分自身が巨大企業のひとつのパーツのような感覚が強くなったといいます。

もともとはその会社のビジョンに共感して入社したのですが、10年以上働いて、現場から経営までいろいろ見て、“パーツ”の感覚が強くなったときに、この会社でやりたいことはもうないかな、と思ったんです。

ちょうど退職金が倍になる制度の“当たり年”だったこともあって、いろんな状況が辞めろと言っているなと思って、半年くらいかけて退職の準備をしました。辞めたあとのイメージがついていなかったけど、とりあえず脱出ボタンを押したというか(笑)。

やりたいことをやるのではなく、やってみて違うことをやめていく

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greenz.jpのプロデューサーとして、リトルトーキョーで打ち合わせ中の塚越さん

「子ども原っぱ大学」をベースに生計を立てたいという思いはあったものの、実際にはそれほどプランを持たず、「ポジティブに、何も持たずに会社員である自分を捨てた」と話す塚越さん。

楽しくてしょうがなかったですね。短パンで打ち合わせ行っちゃうとか(笑)。カフェでノマドライフを満喫しながら、お金を生み出すこともできている。

知らないうちにたくさんの仕事が舞い込んでくる自分に酔いつつ、よく分からないけど忙しい毎日で。隙き間ができると、そこにいろんなことが入ってくるようになっているんだなって。

ところがすぐに、仕事を詰め込みすぎてハンドリングができない状態に。

雑食とでもいうか、差し出された仕事は何でも受けていました。でも今考えると、そのプロセスは必要だったと思うんです。

やりたいことが見つかるのではなくて、これは自分のやりたいことじゃない、この仕事の進め方は自分に合わない、ということがひとつひとつ見えてくる。膨らんだ外側を削り落とすことで、自分の大切にしたいものがだんだんと見えてくる、そんな気づきの連続でした。

その気づきのひとつが、小学生の体験型の放課後プログラムを提供する「放課後NPOアフタースクール」に合流して気づいたこと。

「子ども原っぱ大学」は週末のイベントだったから、それを平日に持っていけば週1回ではなく週5回以上になる。マネタイズを考えると、平日にスライドすることでうまくいくのではないかと考えていたんです。

そんなとき、「放課後NPOアフタースクール」で湘南エリアに新しい事業を立ち上げるから一緒にやらないかと声を掛けていただいて。学校という場所を使うアイデアは優れているし、先行して事業を回している先輩。もともとやりたいことに近いかもと、一緒にやらせていただくことにしました。

ところが、僕はひとつの場所に縛られるのが好きではなかったし、学校という場に窮屈さを感じると、やってみて気がつきました。参加してみて初めて、僕の興味が“教育の現場”にはないことに気づいたんです。

“本流”ではなく、“支流”をつくって流れを呼んで、社会を変える

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子ども原っぱ大学「木と踊る学科」の一場面。子どもたちに交じって、自由にペイント!

川の流れを変えるのに、大きな川そのものを変えようとしても変わらない。それよりも支流をつくって、その支流に流れを呼び込むほうが、流れは変えられるのではないかと塚越さんはいいます。

当時、フクヘンのおのっちに言われたことなんですが(笑)。そうだなと思った。教育システムに疑問はあるけど、変えようとするのは時間がかかるし、ステークホルダーも多いし、慣性が大きく動いているので、そこを変えるのは大変なこと。

それよりは支流をつくることを考えるほうが、自分自身が気持ちがいいし、楽しいなと思って。

子ども、教育…。何となく自分の興味はそのあたりにあると思っていたけど、自分が一番大切にしていることは、教育ではなく、遊びから得られる“学び”だということにやっと気づいたんです。

そこから塚越さんは仕事を“支流”づくりに絞ることになるものの、そこからまた悩む日々が続きます。

イベントで収入をつくるイメージはついたんです。でも、イベントを年間何十本も実施して、それで稼ぐのは何か違う。何かというのは、「イベント屋さんになりたかったんだっけ?」ということと、イベントは労働集約型で、単純に疲れちゃうというのと。

それに、今は僕の子どもたちがターゲット年齢で、自分の子どもと遊ぶことをイメージしてイベントをつくっているけど、子どもが育っていくと、当事者ではなくなってしまうというか、僕自身に賞味期限があると思ったんですね。

自分は“何屋”なのかを、もう一度考える

ターゲット年齢の子どもとその親をイメージしてマーケティングし始めると、つまらなくなるかもしれない。支流をつくるのに、誰とどうつくるか。

もちろん、仲間はたくさんいたんです。僕のやりたいことをサポートしてくれる仲間もいるし、既に60人くらいのボランティアスタッフがいるコミュニティもあって、イベント開催時には、喜んで手伝ってくれる。僕はお山の大将なわけです。こんな気持ちいいことないですよ(笑)。

でも、マイプロジェクトというフェーズから、事業フェーズへと移行するためには、このままでは移行できない。でも、1年半くらいかけて場をつくってきたから、今度はその場に縛られている自分がいるわけです。

今までやってきたことを大事にしたいけど、何か変えなくてはいけない。自分が“何屋”なのかも分からなくなってきていたんですね。

「子ども原っぱ大学」で、場づくりをすること。大人も子どもも一緒になって、イベントを楽しんでもらう、その延長線上で考えても分からないなら、答えはきっとその外にある。そう思った塚越さんは、HUB TOKYOの起業家プログラム「Team360」を受講します。
 
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2月に開催された、「Spark Plug vol 6 -Growth with Passion-」にてHUB Tokyoのアントレプレナーとしてピッチ。その中でも最もオーディエンスの心を捉えた塚越さん

自分ひとりで悩んで悶々としていたけど、同じステージにいる彼らと、「次は何をやる?」って話していくうちに、マイルストーンが明確になって、タスク化されていく感覚があって。

そこで見えてきたことは、「子ども原っぱ大学」は、親と子どもが一緒に体験することが大きな価値なんだということ、ターゲットは実は子どもではなくて親なんだということ。

最大の価値は、親と子がその瞬間を一緒に楽しむこと。子どもの創造力を伸ばすとか、グローバルな思考を身につけるといった子どもの“将来”のためではなくて、その時間を一緒に過ごす“今”に価値があるんですよね。

価値の特定ができたら、どうスケールしていくか。塚越さんは、自然の中で思いっきり遊ぶ体験を各家庭に届ける“小売り”というモデルを考えるようになります。

やっぱりイベント屋ではないなと。でも、この価値を広く届けたい。だから、体験という“コト”を、家庭に届けたらいいんじゃないかと思って。商売としては小売りですよね。

イベントはもちろん続けるけど、小売りを始める。「子ども原っぱ大学」の価値を経験してもらう場と、その体験を自宅にも届けるという“業”のイメージがついてきました。

一緒につくる “仲間”を見つける

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松陰神社前に引き続き、逗子の海の家「Seaside Living」で開催された、水鉄砲ウォーズ。これは大人も子どもも楽しいに違いありません

“業”のイメージはついたものの、それを一緒にやっていく仲間は、なかなか見つからなかったと塚越さんは話します。

「子ども原っぱ大学」のコアメンバーとひとりひとり話をする時間を持ちました。オンラインだったり、実際に会ったり。その中に、もともと通販をやりたいという人がいて。一緒にやれるかも、と何ヶ月か話し合いを続けていたのですが、一緒にやろうというところまで至らなかったんです。

僕はわりとリスクがあってもやっちゃえという行動派で、彼は石橋を叩いて渡る慎重派。考え方が違うからこそいい組み合わせだと思っていたんですけどね。今考えると、完全合意しなくても、進めちゃえばよかったのかもしれないけど。

「そんな失敗ばっかりです。一歩踏み出して、やってしまった、すまん、みたいな」と言って笑う塚越さんですが、仕事を辞めてからのこの1年間は、仕事における自分の癖だったり、得意、不得意だったりという“輪郭”が少しずつはっきりしてきた大事な期間だったと振り返ります。

退職して、ちょうど1年くらい。組織人として磨いてきたことを、逆に“垢落とし”してきた1年でした。思考パターンとか判断のプロセスとか…って言葉遣いも“組織”のものだけど(笑)、すぐマネタイズって言葉を使って、どう稼ぐかを考えてしまう癖とかね。

それがあるから今の自分があることは間違いないけど、小さく仕事を回していくには、その癖から抜けた方がうまくいくこともたくさんあるんです。

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組織人として培ってきた“殻”を壊すプロセス、
なんでも受け入れてやってみるプロセス、
違うと思ったものを削ぎ落していくプロセス、
“業”を見つけるプロセス、
仲間を見つけるプロセス。

「子ども原っぱ大学」を立ち上げた塚越さんがこれまでに通ってきたプロセスは、自分らしい働き方を見つけたい、自分で仕事をつくりたいという人が、きっと同じように通るプロセスなのだと思います。

何か始めたいけど、“マイプロジェクト”が見つかっていない…という人は、自分の根っこにあるものをさらけ出して、言葉にしてみることから始めてみませんか?

「子ども原っぱ大学」のイベントに参加してみよう!
子ども原っぱ大学|身近な自然で発見体験!

writer ライターリスト

増村 江利子

増村 江利子

greenz シニアエディター/シニアライター 国立音楽大学卒。Web制作、広告制作、編集を経て現在はフリーランスエディター。一児の母。主なテーマは、アート、建築、暮らし、まちづくり。八ヶ岳の麓の賃貸トレーラーハウスで、“小さく暮らす”をモットーに、DIY的暮らしを実践中。 facebook:http://www.facebook.com/e.masumura twitter:https://twitter.com/eriko_n

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「ほしい暮らしも、ほしい仕事も、自分たちでつくろう」 グリーンズの学校は、 これからの暮らしを「つくる」 これからのしごとを「かんがえる」 グリーンズのノウハウを「まなぶ」 この3つのテーマを軸に、みんなの「こうしたい」「こうありたい」思いやアイデアをかたちにする場です。 ゲスト講師には、greenz.jpの取材先のみなさん。 くらし、エネルギー、働き方など多くのテーマを通じて、「ほしい未来をつくる」人や事例を紹介してきました。 ゲスト講師の実践と工夫の積み重ねを聞き、フィールドに伺いながら、それぞれの「つくりたい未来」を具体化していきます。 ファシリテーターは、クラスの案内人。 クラス全体の進行はもとより、様々な問いや体験から受講生の思いや具体的なアクションを引き出していきます。 そしてクラスメイトは、かけがえのない仲間となることでしょう。一人でぶつかってしまいがちな課題も、一緒に話し合うことで新たな視点やヒントを共有できます。 ぜひわたしたちと一緒に、あなたの「ほしい未来」をつくりませんか?

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