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ネット無しでは生きていけない人必見!『デジタルデトックスのすすめ』の著者・米田智彦さんに聞く「ネットとの適度な距離の見つけ方」

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「デジタルデトックス」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

デジタルデトックスというのは、ネット依存から抜け出すために、ソーシャルメディアやインターネット、メールなどを一時的にやめることです。自分は依存症と言うほどではないと、思っている人も多いかもしれませんが、この3つのうち心当たりのあるものがあれば、少し気をつけた方がいいかもしれません。
 

・寝る前のスマホを「あと数分だけ」でやめられなかったことは一度や二度ではない
・圏外はもちろん、電車などでわずかな時間でもつながりにくいとイライラする
・FacebookやLINEが原因で人間関係がこじれてしまったことがある

 
これは『デジタルデトックスのすすめ 「つながり」疲れを感じたら読む本』(PHP研究所)の序文に出てくるチェック項目です。著者の米田智彦さんは、ネット依存になりかけているのではという自覚があり、それを解消するべく自らデジタルデトックスを実践して本にしました。
 
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米田智彦(よねだ・ともひこ)
編集者、ディレクター。ブログメディア「ライフハッカー[日本語版]」編集長。出版、ウェブ、イベント企画と多岐にわたる企画・編集・執筆を行う。2011年の1年間、家財と定住所を持たずに東京という”都市をシェア”しながら旅するように暮らす生活体験「ノマド・トーキョー」を実践。多くのシェアハウス、シェアオフィスを渡り歩き、最先端のオルタナティブな働き方・暮らし方を実体験した。著書に『僕らの時代のライフデザイン 自分でつくる自由でしなやかな働き方・暮らし方』(ダイヤモンド社)など。2014年1月に新刊『デジタルデトックスのすすめ 「つながり疲れ」を感じたら読む本』(PHP研究所)を発売。

ネット依存の自覚症状

編集者である米田さんは、2009〜2010年頃からTwitterなどソーシャルメディアの面白さにはまり、Ustreamに至っては本を3冊書くほどに精通し、最後には家を無くして、ソーシャルメディアの縁だけでどれだけ暮らせるかというプロジェクト「ノマド・トーキョー」をやるところまで行き着きました。

その辺りから、ソーシャルメディアやインターネットの面白さや利便性と同時に、弊害のようなものもおぼろげに感じるようになっていました。

ソーシャルメディアは、毎日タイムラインやニュースフィードに大量の情報が流れています。そこにある情報を反射的に選り分け、反射的にコメントをし、それに対する反応にまた反射的に言葉を返すという繰り返しです。米田さんは、時間をかけて何かを考えたり味わったりする感覚が徐々に失せていったように感じていました。

気づくと長編小説をまったく読めなくなっていたり、映画を一本最後まで見られなくなっていたんです。

小説を読んでると、結末とか後書きを読んじゃうんですよ。結局この作家は何が言いたいのかをウィキペディアで調べたりとか、結論ばっかり求めるようになっちゃって、プロセスを楽しめなくなっている自分がいるなと。

情報収集と読書や映画鑑賞は違うものなのに、あらゆるものをまとめたり要約するネット文化に触れすぎたせいで、自分自身も反射的にものを考えるようになり、深く考えているつもりでも考えきれなくなっていったのです。

これは何とかしなければと思いつつ、デジタルデトックスという言葉の存在も知ってはいましたが、仕事の都合などもあり具体的には何も行動できない日々が続きました。

そんなことを考えていた去年の夏、米田さんは感染症にかかり、10日間ほど寝こんでしまいました。全身に発疹が出て、熱も出て、関節も痛い。当然パソコンどころかスマホもいじる気がしません。寝込んでから2〜3日間経った時に、ネットもソーシャルメディアもやっていない自分に気付きます。

反射的な反応を繰り返す、情報の壁打ちのような状態をやめることは、自分からはできなかったけれど、病気をきっかけに初めてやめることができたのです。それまではずっとつながりっぱなしで、つながらないことの恐怖の方が強かったというのに。しかも、そのお陰で楽になった自分にも気付きました。

不謹慎だけど「病気という言い訳でやめられるかもしれない」って思って、ちょっとやめてみようかなと思ったんです。

デジタルデトックスのやり方

情報化社会で情報ツールと共に生きなければならない人ほど、意識して自分から距離を取るということが、次の時代のリテラシーとして必要なのではないか、という予感もありました。それに関する本を書いてみようと思い立ち、一ヶ月と期間を決めてデジタルデトックスをやってみました。

デジタルデトックスと言っても、仕事上完全にインターネットにつながらない生活は現実的ではありません。そこで、米田さんは自分なりのルールを決めました。
 

・メールは1日朝晩の2回のみ
・ソーシャルメディア、ネットサーフィンはやらない

 
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デジタルデトックス期間中にTwitterとFacebookのバックグラウンドに使用した画像

告知として、TwitterとFacebookのバックグラウンドにデジタルデトックスやっていますという画像を設定し、連絡する人はメールか電話をしてくださいと書きました。そこまでしてデジタルデトックスを始めたのに、2〜3日目には自分がデジタルデトックスをしていることの反響が気になったのだそうです。

みんなどう思ってるのかなって反響が気になって、ゾワゾワしてきたんです。そんなことが気になってる時点で病気じゃないですか(笑)

はっきり言って、僕も含めてみんな自意識過剰なんですよ。ウケてるか、ウケてないか、周りの目を気にしすぎてるんです。それがまず問題だなと。

それ以前はメールを一日何十回もチェックしていた米田さんですが、一日に2回メールをチェックし、その時だけ作業をするだけでも問題が無いことが分かりました。

そりゃそうですよね。朝にメールくれた人に夕方返信したら、相手の人は怒らないですよね。夜にメールした人に次の日の朝に返信しても、相手は怒らないですよね。本当に緊急の用がある人は電話してくるので、なんだそんなもんじゃんと。

いかに自分が無駄なストレスや情報を追い回して、人生の貴重な時間を費やしていたのかと気付きました。

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東京の高野山別院での阿字観瞑想の様子

その1ヶ月の間に、さらに情報断食的なことをやってみようと、東京の高野山別院で阿字観瞑想をやってみたり、東京近郊の御岳山の宿坊に泊まり滝行をやってみたりもしました。また、普段からたまにやっていた水泳も瞑想みたいだと感じたのだそうです。

泳ぐと元気が出るんです。歩くのでもいいんですけど、情報を遮断して、呼吸と身体感覚を意識しながら、体を動かしていくということをすると、人間って元気になるんだなと。

デジタルデトックスをやってみて

米田さんに、「一ヶ月デジタルデトックスをやってみて、一番変わったことは何ですか?」と聞いてみました。

リセット癖が付いたというか、引きずったりしなくなりましたね。何かあったら瞑想をやればいいとか、電源切ってスマホも置いて一日どこかに行くだけで気分が変わるとか、そういうことが有効なんだなということがわかったんで。ずっとつながりっぱなしで死ぬまで行く訳じゃないと(笑)

あと、ネットの中でワーワー言ってることが、遠くの村で起こってる出来事みたいに感じられるようになってきました。

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滝行をする米田さん。本の中で使う写真を撮るためだけにこの時だけはスマホを持参。

「情報化社会や都会で生きてると、すごく近視眼的になってしまう」と米田さんは言います。

ソーシャルメディアでは、目の前に流れてくるテキストに一喜一憂したり、会ったことも無い人の発言に怒ったり、そんなことがよく起こります。スマートフォンがあまりにも急速に普及し、ソーシャルメディアが流行ったせいで、付き合い方が分からないままネット世界が身近になったからでしょう。

しかし、ネットやデジタルツールがここまで生活に浸透してくると、嫌なら電源を切ればいい、見ないようにすればいい、というような簡単なことでは済まなくなります。ビジネスマンは仕事でメールをチェックしないと問題が起こるでしょうし、子どもたちはLINEを使わなければ仲間はずれにされるかもしれません。

一方、子育て中のママの中には、ソーシャルメディアがあったからこそ社会との接点が保て、救われたという人もいます。これからの時代は、それぞれの立場で、ネットやソーシャルメディアとの適切な距離をおく練習をしておいた方が良さそうです。
 
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山は電波がつながりにくく、両手を空けておいた方がいいので、登山も情報断食にはピッタリ

「それに、世の中もっと面白いことがたくさんありますよ」と米田さんは言います。

何でも、先日バケーションで行ってきた、スペインのバルセロナのビーチは最高だったとか。そういう時も、スマホやデジカメでたまに写真を撮ることはあっても、それを次から次へとソーシャルメディアに投稿するようなことは無くなりました。

まったく投稿しない訳ではなかったそうですが、取り憑かれたように投稿しまくる訳でもない。これが、米田さんがデジタルデトックスの経験から学んだ、自分なりのネットとの距離感なのでしょう。

ネットにつながらない時間ができると、最初は何をしていいのか分からないと思うかもしれません。しかし、そういう時間ができた時に、誰に何を指示されるでもなく、人の目や流行も気にせず、心から素直にやってみたいと思ったことに時間を使うことが、デジタルデトックスの本当の目的であり、醍醐味でもあります。

普段からインターネットにつながりっぱなしの人や、冒頭のチェックに当てはまった人は、早いうちに自分の距離感を掴むためにも、一度デジタルデトックスをやってみてはいかがでしょうか。