Some rights reserved by 350.org
社会を変えたい。世の中がもっと良くなってほしい。でも、どうしたらいいのだろう?そう思っている人も多いのではないでしょうか。
実際に動いてみても、一人や一団体の影響力が大きくはないことも事実。それなら、みんなが集まれば、力も大きくなるはず。
そんな希望を持って始まったサミット「Power Shift」は、気候変動という大きな問題の解決に向けて、若い世代から声を上げていこうと、2007年にアメリカで始まりました。
2年に一度、ワシントンで開催されている「Power Shift」には全米から一万人以上の学生が集まります。そこでは、参加者同士で思いを共有したり、再生可能エネルギーの普及に向けた実現方法や政策などについて議論したり、現場で活動する若者から社会に働きかけている実例を聞き、より効果的なアクションにつなげていくのです。
その反響は世界に広まり、カナダやオーストラリアなど各地で開催されるようになりました。そして日本でも、2月22日、23日に「Power Shift Japan」として初めて開催されることが決定。
若者が主体となって、社会変革を目指し、国際的なムーブメントとつながっているイベントとしては、日本初だとか。二日間のプログラムでは以下の内容が行われ、自分の思いや活動を見つめなおし、社会へのアプローチの仕方を学ぶことで、次のステップに活かしていきます。
・Defining Moment
全国各地から集まった仲間たちと、それぞれの気候変動やエネルギー問題解決に対する思いを分かち合います。
・キャンペーンワークショップ
国際NGOのキャンペーナーを呼び、社会への働きかけ方を身につけます。
・アクティビズムビルディング
日本社会における歴史的背景から社会変革に対する課題と可能性、キャンペーンの立ち上げに必要な認識を構築します。
・パワーオブユース
国内外の若者の活動事例から、若者もつ可能性と課題を考えます。
【2日目】
・キャンペーン・プランニング
1日目に身につけたことから、参加者はキャンペーン計画を作成します。
・キャンペーン・マーケット
NGOや市民グループ、ユース団体などを招いて、実施しているキャンペーンの紹介を受けます。
・デクラレーション
Power Shift Japan以降にそれぞれが行うアクションを発表します。
・アクション
参加者全体でアクションを行います。
NPO/NGOだけでなく、台湾からCOP(国連の気候変動会議)のユース代表をしているLiangyi Chang(張良伊さん)も来日し、世界の若者の取り組みや、台湾での脱原発と気候変動について話してもらう予定だそう。
国際的にも注目されているこの「Power Shift Japan」主催者の一人である、ソーヤー海(カイ)さんにお話を聞きました。
アメリカ人と日本人の両親を持つ、ソーヤー海さん
カイさんは世界中のエコビレッジやトランジションタウンなどを訪れ、各地で学んだ持続可能な農法や暮らしを、ワークショップなどを通して広める「東京アーバンパーマカルチャー」を主催しています。
そんなカイさんが「Power Shift」と出会ったのは、昨年6月のこと。トルコのイスタンブールで開かれた「Global Power Shift」というイベントに、友人に誘われて参加したことがきっかけでした。
「Global Power Shift」の様子 Some rights reserved by 350.org
Global Power Shift では、130カ国以上から500人もの若い活動家が集まって、すごく刺激的な5日間でしたね。エジプト革命やニューヨークのオキュパイ・ウォール街に参加していた人とか、サダム・フセインにデモをしていたイラクのクルド人とか…。みんなそれぞれ活動をしているんだけれども、地球環境についても真剣に考えていました。
こうした多様な参加者に対して「自分たちの国でもPower Shiftを立ち上げてください」というメッセージがあり、日本に帰国してから仲間を募り、準備してきました。
参加しただけでも社会は変わると自信がつきそうですが、それでは社会変革は起こらない、とカイさんは言います。
イベントで終わってしまうことが多いけれど、もう一歩踏み出してアクションに移すことが必要です。Power Shiftではそれを「キャンペーン」と呼んでいます。具体的な課題に対して目標を立てて、そのステップを計画し、実践する。達成までに時間がかかっても、うまくいかなくても、動いてみることが重要だと思っています。
シドニーではPower Shiftキャンペーンとしてフラッシュモブが行われました
ちなみにカイさんが最初にやりたいことは「日本の大学を100%自然エネルギーに変えること」だそう。実際に、カイさんが通っていたカリフォルニア大学サンタクルーズ校では、学生からの発案によって、100%自然エネルギーに切り替わったとか!
市民一人ひとりが、社会を変えていく
「もともと社会問題に関心がなかった」というカイさんですが、こういった活動の原点はその大学時代にさかのぼります。
まわりの学生たちが行っていたイラク戦争への反戦運動に巻き込まれていったんです。数十人の団体でしたが、軍隊の勧誘を大学から追い出したり、開戦の日に一部の教授や市民とともに大学を閉鎖したり、メディアや連邦政府に目をつけられるくらい大きなインパクトのあることをしていました。
それでもみんな「やっぱりおかしいよね」と恐れに負けずに、強い信念を持っていて。そういった姿を見て、社会への活動ほどかっこよくて社会に必要なものはない、と心に刻まれました。
Some rights reserved by Fibonacci Blue
権力者が社会を変えるのではなく、一般市民が変えることができる。特に欧米では、市民が立ち上がって変革してきたという歴史がみんなの意識にあるそうで、海さんもそう信じて活動に参加するように。
結局、戦争は止められなかったけど、何もしないよりも、何かをした方が意識が変わってきます。国が戦争をしようとしているのに、あたかも何も起きていないかのように授業が行われていることに違和感を持ち、集中できなくなったんですね。それで学生たちで、実際に今起きている社会問題を取り上げるような授業をつくってみたんです。
自分たちでプログラムを運営し、資金も集め、講師にはサティシュ・クマールとか、バンダナ・シバとか、国際的に活躍するいろんな活動家を呼ぶことができ、すごく盛り上がりました。
でも話を聞くだけでは何も変わらない。そこでアクション・リサーチチームといって、一つの問題を取り上げて具体的な解決策を実行するグループができました。大学が自然エネルギーに切り替えたのも、この運動のおかげです。
こうした大学を中から変えていく教育プログラムや、学外の活動を通して、消費者ではなく生産者の気持ちで社会と関わるようになります。だからこそ、「自分が参加したようなムーブメントを日本でも広めたい」という思いを胸に、2012年から日本で活動を始めました。
日本の活動の形を変えたい
Some rights reserved by 350.org
「みんな現状を維持せざるをえないと思っているけれど、意外と今の状況を変えることはできる、と知ることが大切」と言います。
それを妨げているのは、思考。投票しても政治は変わらないとか、どうせ経済は変わらないとか、「変えられない」とみんな思っている。この考え方を変えるのは難しいけど、持続可能な社会を実現するには変えるしかないと思っています。
実際に、日本の若者の70%が、自分の行動では社会を変えることはできないと思っている、というデータも。
今、世の中の大きな決断をしているのは、みんな一部のおじさんばっかりですが、これからを担う若い人にこそ、自分の未来を創作する意識と力を持ってほしい。だからこそ、アクティビティズムが社会に大事なものなんだ、という意識が必要だと思うんです。
日本人は市民が社会を変えてきたという実感があんまりないけれど、女性も投票できるようになったこととか、労働者が正当な権力を得たこととか、本当はたくさんあります。
「活動」というと安保闘争や大学闘争といったものしかイメージできない人が多いようですが、歴史を知れば、今の現実って市民がつくったんだ、じゃぁこれからも作っていける、という意識を持てると思います。
Power Shiftではアート作りも。 Some rights reserved by 350.org
僕もそうですが、日本の活動家は批判を受けることがすごく多い。でも僕は活動家の情熱と活動の楽しさを味わってきたから、10年以上も続けることができました。日本の活動も、アートや音楽などを取り入れて、もっとクリエイティブで楽しく、かつ効果的なものにしないと続かないと思います。
そのためにもPower Shift Japanでは今まで僕が会った若い活動家と団体、それから海外の団体をつなぎ、横のネットワークを強くしたいと思っています。
「僕はね、活動オタクなんです」とカイさんは続けます。
反戦運動から始まって、非核、LGBTの人権、低所得者、人種差別などさまざまな問題に関わっている人に出会って、「全部大事じゃん!」とあらゆる問題に関心を持つようになりました。
その中でも特に大事だと思っているのが、脱原発と温暖化の問題です。原発はみんな意見が違うとはいえ関心を持つようになったけれど、温暖化については無関心というか、心のこもった意識がないように感じます。この脱原発と温暖化の問題をつなげていきたいと思っています。
みんなが大事にされる世の中をつくる
「活動は趣味でも仕事でもないし、それが自分の道だと考えている」とカイさん。その根っこにあるのは、「みんなが大事にされて、平等で平和な世界をつくりたい」という思いでした。
問題意識はあるのに、厳しい環境や巨大な借金など、負の遺産がどんどん増えている。それはどうなるかっていうと、全て次世代が受け継ぐことになる。かなり希望を持ちにくい未来になるけど、次世代のために、この現状を変えていきたいんです。「Power Shift Japan」に参加することで、その一歩をみんなと踏み出せたらと思います。
気候変動やエネルギーといった問題はあまりにも大きすぎて、向き合うことは少ないかもしれません。この機会に、私たちの生活にも関わるこの問題について、解決策を考え、学び、そして実践する「Power Shift Japan」に、あなたも参加してみませんか?