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まずは楽しくて自分のできることから。電気をつくって世界とつながる、ソーラーパネルワークショップ in飛騨

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

スイッチを押すと、電気がつく。

このあたり前の動作に、疑問を持ったことはありませんか?電気がどこから来ているのか、どうやってつくられているのか、意外と自分の言葉では説明できないことばかりです。

飛騨でドリンク片手に語らう「green drinks HIDA」。6回目となる今回は、「green drinks HIDA × わたしたち電力」として、ミニ太陽光発電システムをつくるワークショップを開催しました。

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昼夜2部制となったこの日、昼の部は、手づくりのエネルギーでコミュニティを元気にする「藤野電力」の吉岡さんと、greenz.jpの小野さんを中心としたワークショップでミニ太陽光発電システムをつくりました。完成後は、自分たちでつくったパネルを使って、ソーラーskypeにもチャレンジ!

そして夜の部には、飛騨エリアをバイオ燃料で走り回る田堀さん、大坪さん、肥田さんの3名にエネルギーについてのお話を伺いました。

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発電日和となった当日。会場となった飛騨の古民家には多くの人が集まり、いよいよワークショップの開始です。

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小噺スタイルで電気の基本について説明する吉岡さん。アンペア、ボルト、ワット、と小学生の頃に聞いたことのある単語が並びますが、大人になってから改めて聞くと新鮮です。参加者の方も熱心にノートを取っています。

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ワークショップは、皆でソーラーパネルに各ケーブルを正しくつないでいくと、あっという間に完成。難しい作業はほとんどありませんでしたが、つなぐ順番を注意しないとショートしたり、小学生の頃の理科の実験を思い出します。

このミニ太陽光発電システムは全てキットになっていて、今回はオーガナイザーの白石家で1台購入。せっかく自然と共生してきた古民家に住み始めたので、この家を訪れる人が一番よく使うであろうwi-fiの電力をソラーパワーで賄って、Solar wi-fiにしようと考えています。

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ちなみに、組み立てキットの中身はこのようになっています。

・50Wのソーラーパネル

・チャージコントローラー(バッテリーの充電制御や過充電を防止。また電流の逆流を防ぐ)

・300Wのインバーター(直流の電気を交流に変換し、家電製品をつなぐ装置。コンセントがつなげる)

・シガーソケット分配器(USB端子でスマートフォンなどを充電できる)

・バッテリー

・接続ケーブル

このミニ太陽光発電システムキット、価格は42,800円。飛騨でふだんあまりお金を使わない生活をしているせいか、お買い得・・とは思えません。そんなこともあって、今回はみんなで楽しめるイベントにして、エネルギーについて考えてみました。

集まってくれた方からも、畑で使う発電機代わりに使えないか、1回の発電でどのくらい電気が持つのか、など積極的な質問がでて、エネルギーのDIYに興味のある方が多い印象でした。

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このソーラーパネルでどれぐらいの電気がつくれるかというと、スマートフォンなら30時間、タブレットは12時間、小型のノートパソコンなら4時間ぐらい使える電力を発電できます。さすがに、電子レンジやドライヤーは難しいですが、使いどころを工夫すれば、ふだんの生活にも十分使えそうです。

完成後、まずは点灯式。かけ声とともにスイッチを押すと、思わず拍手が起こりました。家のコンセントには繋がってないのに煌々と灯りがついているのは、仕組みが分かっていてもとても不思議な感覚です。

その後、さっそく古民家のコンセントから給電していたモデムと無線LANを、ソーラーチャージしたインバーターに接続。しばらくすると、無事にWi-Fiがつながり、早速カンボジアとアメリカにskypeを繋ぎました。

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「ハロー!いま太陽からつくった電気でskypeしてるよ!」

カンボジアの農村部では、まだまだ電力供給が不安定な地域も多いので、こういったシステムが必要になってくる場面も多そうです。

これは”ミニ”太陽光発電システムだからいい。小さいから誰でも簡単にできるし、興味がある人が近くにいれば貸してあげることだってできる。これを通して、自分が電力と向き合うきっかけになることが大切。

小さいからこそのメリットを生かして、地域内に手づくりの電力が増えてくることで、電力に対しても選択可能な未来があるのかもしれません。

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ソーラーパネルをつくったあとはいよいよグリーンドリンクス!乾杯してからは、みんなで飛騨の冬野菜をたっぷり入れた鍋を囲みました。

夜の部には、バイオディーゼル燃料で走る通称「天ぷらカー」を飛騨で走らせている田堀さん、大坪さん、肥田さんの3名も参加。天ぷらカーに乗って会場まで来てくれたので、さっそくお話を伺ってみました。

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天ぷらカーを走らせるためには、大きく分けてふたつの方法があります。ひとつはSVO(Straight Vegetable Oil)を使う方法で、これは通常のサラダオイル(新品、廃食油をはじめ、ほとんどそのままの植物油が使えるそうです。ただ、ディーゼルエンジンを改造する必要もあるため、現在はSVOを薬品で撹拌させたBDF(Bio Diesel Fuel)を使う方も多いのだとか。

今回のゲストは両タイプともに使われていましたが、バイオ燃料と軽油のハイブリッドで動かすことで、万が一路上で故障してもガソリンスタンドで給油可能ということでした。

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田堀さん、大坪さんたちは、現在は、地元のスーパーや豆腐屋さんなどから使わなくなった油をもらってきて、それを濾過して使っているそうです。お店からも、処分に困っていたので助かる!と、油の回収はお互いに嬉しいことなのだとか。

飛騨は雪国のため、冬はただでさえ粘度の高い油が固まりやすく苦労するそうですが、全国の仲間と情報交換しながら研究を重ねているそうです。

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化石燃料が戦争の原因になっていたりするのを聞くと、本当にこのままでええんかと思う。そんで、以前から自分の車をバイオ燃料に変えられんかと思っとったら、知人から搾油機をもらったで、そっから始めたんや。

まずは自分のできることからな。ただ、義務と思うたらダメや。時間がかかっても自分が楽しんでやらな。余暇を使って世界平和やな。

田堀さんの言葉には、世界を変えようとする前のめりな姿勢というよりは、身近なエネルギー資源を自分ごととして捉えて、素直に向き合っている印象を受けました。

ソーラーパネルを使ったミニ太陽光発電システムと、バイオ燃料を使った天ぷらカー。どちらも、自分たちでつくったエネルギーを感じられる貴重な経験でした。

こうした動きが広がっていくことで、一方的に与えられるのではなく、自分たちが選択したエネルギーで暮らせる社会がやってくるのかもしれません。

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ちなみに、当日の様子は、北陸中日新聞さんに一面で掲載いただきました。

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エネルギーを自分たちでつくることが、より身近なこととして広まっていくと素敵ですね。

(テキスト:白石達史/実果 グリーンドリンクス飛騨オーガナイザー)