ISSUE 食と農

3 years ago - 2012.12.27

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デザインのチカラがケータリングのあり方を変えた? 食の時間と空間を創り出す「モコメシ」のフードデザインとは

坂本さんのビールとモコメシVol.3

インテリアデザイナーからフードデザイナーへ。
こう聞くと、まったく別の仕事へ転身したように感じませんか。
けれどもデザイナーからデザイナーへ、と考えるとどうでしょうか。

モコメシこと小沢朋子さん“食べるシチュエーションをデザインする”をコンセプトに、レセプションやウェディング・パーティのケータリング、料理教室や自主イベントなど“ごはんがおいしい”だけでは終わらない、空間や企画のコンセプトを汲んだ“食の時間と空間”を提供しています。

じつは小沢さんは、もともとインテリアデザイナーとして働いていた経歴の持ち主です。「インテリアと食というツールは変わっても、同じデザインの仕事をしている」と話す小沢さん。そんな言葉どおり、モコメシのごはんには、デザイナーの視点だから生まれた独特の世界が広がっていました!

モコメシが考えるフードデザインとは?

まずは、下の写真をご覧ください。これは2010年10月に50人を招待して行なわれたモコメシの自主イベント「坂本さんのビールとモコメシVol.3」の時のものです。テーブルには一つひとつ手描きのお皿が並んでいて、そこにごはんが盛りつけられています。

自分が気に入ったお皿を選び、そこから料理をとって食べます。

自分が気に入ったお皿を選び、そこから料理をとって食べます。

お客様には好きなお皿を選んでもらい、そこに名前シールを貼っていただきました。そして、自分の名前シールを貼ったお皿から、好きな時にごはんを食べるんです。

パーティが進み、ごはんを食べ終わった人のお皿をテーブルからはがしていくと、下からは食べ終わった空のお皿の絵が出てきます。そして、そのお皿の輪のところにお花や枝を差していくのです。

そうすると、だんだんとテーブルの上に植物が増えていき、最後には生け花のような作品ができあがります。なんともアーティスティックなしかけ、と誰もが思うのではないでしょうか。ところが、

「アートだねぇ」って言われるんですけど、全然アートじゃないんです。

と小沢さん。これは今までケータリングをやってきた中で感じてきたフラストレーションや問題に対する答えなのだそう。

アートはその人自身が考えていることの表現だと思うんです。私は、アート作品を創っているっていうわけじゃなくて、日々の仕事の中でもっとこうなったらいいなと思うことや、日々感じている疑問やフラストレーションを原点に、じゃあどうすればより良くなるのかと考えるところから創っています。別の言い方をすると、デザインはお客さんとのやりとりの中から生まれてくるもの。必ず対象がいるのがデザインなんです。

ケータリングに適したお皿ってなんだろう?

たとえばケータリングに適したお皿ってなんだろうと思った時に、単なる紙皿じゃもちろん嫌だし、移動を伴うご飯だから、重くて割れやすい高級なお皿も違いますよね。それで、紙に絵を描いてお皿にすることにしました。絵を描けば、紙でもお客さんひとりひとりのために思いが込められます。それに、50枚でもペラペラで持ち運びが楽ですし。

お客さんへの真心と業務上のメリットの両方を補うことができるアイデアでした。

それから、お皿をもった立食パーティだと両手が塞がってしまうのが不便だなと思って、お皿を置いておけるようにしたいと思いました。

バイキング形式だとみんながごはんのあるところにワーッと寄っていって、行列ができたり、人だかりができます。

もちろん、ごはんを喜んで食べていただけるのは嬉しいのですが、その風景があんまりかっこよくないなと思っていました。お皿に名前をつけて、置いてある自分のお皿からごはんを食べていただければ、人が1ヶ所に集中することもなく、ごはんもそれぞれのペースで食べられるからいいと思いました。

このように最後に植物を刺していくと、テーブルがまるでアート作品のようになります。

このように最後に植物を刺していくと、テーブルがまるでアート作品のようになります。

花や枝を差したのは、パーティが進むにつれてきれいだったテーブルが荒れていくっていう現場を何回も見てきて、それをなんとかできないかなと思ったんです。食べ終わったお皿のところに花を差していけば、花の隣にゴミを置いたりできないだろうと。

なるほど!問題解決のために、アート的な要素を利用したということなのです。デザインの重要性は、今、さまざまな分野で取り沙汰されていますが、この視点で見ると、広汎に及んでいたデザインにおける共通項が見えてきます。

食べ進めると同時に変化していくフードデザイン

モコメシという名前を使うようになったのが2008年の終わり頃。「食べるシチュエーションをデザインする」というコンセプトは当初から考えていたものなのでしょうか。

それまでも漠然と思ってはいたんですけど、はっきり「私がやろうと思っていたことはこういうことなんだ」ってわかったのは、ちょうどこの「坂本さんのビールとモコメシVol.3」をやった頃ですね。

ディスプレイして終わりじゃなく、食べ進めると同時に何か変わっていく、食べている間にどうなっていくか、そういう変化がすごく面白いなと思って、これは自分のテーマになるって確信を得たんです。

モコメシの小沢朋子さん

モコメシの小沢朋子さん

フードの仕事は、自分でデザインしたものを1から10まで自分で作ることができる

小沢さんは、大学院卒業後、インテリアデザイナーとして働いていました。インテリアの仕事はとても面白く、特に不満があったわけではなかったと言います。一方で、もてなし好きのお母さんの影響で、子どもの頃から料理が大好きでした。

大学を出たあと、デザインを学びたくて千葉大学デザイン工学科の大学院に入りました。ひとり暮らしを始めて、料理が好きだったので、ホームパーティをよくやるようになりました。

デザインをやっている友だちにはクラブイベントなんかをやる人が多いんですが、そのうち、イベントの時に「ごはん作って」と頼まれる機会が増えてきたんです。その延長で、就職してからも休みの日にほそぼそとケータリングをやっていました。

小沢さんのごはんは大好評で、数年やっているうちに、友人関係だけではなく、知らない人からもケータリングを頼まれるようになっていきました。口コミで噂が広がり、やがて、100人規模のケータリングの依頼もくるように。

小沢朋子さんインタビュー中

どんどんケータリングの仕事が増えて規模も大きくなってきて、さすがにこれは設計の仕事と両立するのはしんどいなと思うようになりました。

どっちの仕事も面白かったので悩みましたけど、フードの仕事は自分がいいと思ったもの、自分でデザインしたものを1から10まで自分で作れるっていうのが、インテリアデザインとのいちばんの違いでした。そこがいいなと思って、独立しようと決めました。

フードデザイナーとして独立

そして2010年5月に丸4年働いた会社をやめ、フードデザイナーとして独立しました。はじめは、ちゃんと生計を立てられるかもわからなかったそうです。失業保険と貯金でしばらく食いつなぎ、それでもダメだったら、バイトでもしようという気もちでいました。しかし、幸いバイトもすることなく、これまでやってくることができました。

特に営業みたいなことはしていません。というより、現場が最大の営業で、レセプションでいい仕事をすると、それを見たお客さんやその口コミからお話をいただきます。

小沢さんは、モコメシのコンセプトをはっきり打ち出す前から、仕事の依頼があると、イベントの企画書を送ってもらっていました。

どんなイベントやレセプションでも、それがいったいどういう場なのかっていうのがすごく気になるんですよ。担当の人は、なんでフードを頼んでるのに企画書を送るんだろうって思ってたと思います(笑)。

企画書を見て、どういうイベントをやりたいのか主催の人に話を聞いて、じゃあこういうことをやりましょうって提案していく。そういうプロセスがデザインだと思うんです。

コンセプト次第で食材もメニューも変わる!

それは食材についても同じです。もちろんおいしい食材は使いたいので、おつきあいのある八百屋さんや農家さんから取り寄せることも多いそうですが、コンセプト次第では、必ずしも有機の食材にこだわっているわけではありません。ウェディングでは親が作っている野菜を使いたいといった要望もありますし、出身地の食材を使ってほしいというリクエストもあります。

また、たとえば「SPEAK EAST!」という、台東区でものづくりをしている人たちの合同イベントのレセプションでは、ものづくりの過程で出る余った材料や試作品をディスプレイに使用しました。

端材や試作品がこんなにすてきなディスプレイに!

端材や試作品がこんなにすてきなディスプレイに!

フードの内容も、コンセプトに合わせて、台東区内で食の分野で日々コツコツものづくりをしている人のおかずを使いました。煮豆屋さんの煮豆、豆腐屋さんの豆腐、お肉屋さんのチャーシューやお惣菜屋さんのさんまの蒲焼きなどをアレンジしたフィンガーフードを作りました。

フードデザイナーだからといってオリジナル料理にこだわることなく、コンセプト次第では、こんなアプローチもあり! これが、フードもイベントの一部にしてしまう、モコメシならではの食の形です。

モコメシのアトリエがオープン!

独立してから、とにかく忙しく、流れに任せるままにやってきました。ここできちんと環境を整理しようと、今年12月には、いよいよ秋葉原の近くにモコメシのアトリエを構えました。

スペースができると今まで想像してなかった新しいことができるんじゃないかなと期待しています。小さいスペースなのでたくさんの人は入れないけど、自分の展覧会をやる時には自由に使えるので「モコメシが創る食べるシチュエーションはこれです」っていうプレゼンテーションになるごはん会をやりたいですね。

SPEAK EAST!

おいしいごはんを食べるととても幸せな気もちになります。そんなおいしいごはんを食べる時間は、人と人とのコミュニケーションが生まれる大切な時間。食べるシチュエーションをデザインする、というモコメシのごはんは、食が単に味覚だけのものではないことに気づかせてくれます。

目にするたび、食べるたび、そして食べ終わるたび、感動が沸き起こってくるモコメシのごはんは、これからもたくさんの食の場で、たくさんの幸せな光景と楽しい時間を創り出してくれることでしょう。モコメシ流フードデザインが示す、新しい食の提案です!

モコメシの情報はこちら

モコメシのごはんを食べに行こう!

writer ライターリスト

平川 友紀

greenz シニアライター ストーリーライター/記録家。 物語性のある記事を得意とするストーリーライター。 1979年生まれ。20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。体調を崩したことをきっかけにマクロビオティックを学び、持続可能なライフスタイルを模索し始める。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らし、コミュニティを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。平川まんぼう宛でも、郵便物が届くのが、自慢。 facebook:https://www.facebook.com/captainmanbou twitter:@captainmanbou

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