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京都に自然の造形美をテーマにした場所がオープン。町家をリノベーションした宿「ウサギノネドコ」

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過去からの遺産を受け継ぎ、新しいアイデアと融合させて後世に伝える。そんな意識を感じる街その京都に、魅力的な場所が新しく誕生しました。

新しく誕生したのは京町家をリノベーションしてできたスペース。「ウサギノネドコ」と名付けられたこの場所は、一日一組限定の小さな「宿」と、京間の四畳半の「場所貸し」の空間、不思議な品揃えの「雑貨屋」がひとつになっています。

ウサギノネドコを運営されているのは、以前greenz.jpでも紹介した、種や花びらなど「自然の美」を樹脂でかためて、積み木にした「宙 -Sola-」をプロデュースされている吉村紘一さんと、妻の順子さん。

宙 -Sola-

吉村紘一さんは植物をテーマにした「宙 -Sola-」のほかにも、鉱物をテーマにした「旅する小惑星」というブランドも手がけており、これまでに展開されてきたブランドと、今回の「ウサギノネドコ」すべてに、「自然の造形美」というテーマがある、と吉村さんはおっしゃいます。

素敵なブランドを手がけ、住まいを京都に移して活動を続けている吉村紘一さんに、ウサギノネドコについてお話を伺いました。

1階は雑貨屋さん

1階は雑貨屋さん

「宙 -Sola-」や「旅する小惑星」が並んでいます

「宙 -Sola-」や「旅する小惑星」が並んでいます

 どうして京都に住まいを移されたのですか?

吉村紘一さん 僕の両親はともに京都出身ではあるのですが、父の仕事の都合でタイやフィリピンなど、海外に赴任の期間が長かったため、僕自身は1年半前に移住するまでは一度も住んだ事がありませんでした。住んだ事がないからこそ京都に対する憧れもありました。独立したら豊かな自然がある場所に住みたいなと思っていた事もあって、妻ともよく話し合って、京都に移り住もうと決めました。

2階にあるお宿の客間

2階にあるお宿の客間

 吉村家のルーツは宮大工だと聞きました。

吉村紘一さん そうなんです。それが京都に移住してきたもうひとつの理由ですね。ある時期から自分のルーツに対する想いが強くなったということがあって、調べてみたところ吉村家のルーツを辿ると宮大工の棟梁だったんです。ウサギノネドコの町家も、僕の曾祖父が自ら現場監督をして、昭和14年に弟子のためにつくった建物なんです。この建物を僕らなりのやり方で現代に蘇らせたかった、というのはウサギノネドコをつくった強いモチベーションですね。

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庭は自然が感じられるように

お風呂へと続く道

お風呂へと続く道

お風呂のオリエンタルな雰囲気

お風呂のオリエンタルな雰囲気

 ご先祖への想いも行動へのエネルギーになったんですね。

吉村紘一さん 宮大工を継ぐはずだった最後の跡取りが第二次世界大戦に出征し、タイで戦死してしまったこともあって、宮大工の血は途絶えてしまいます。さぞかし無念だっただろうなと思うのです。だからこそ、こうして作った建物に改めてスポットを当てる事で、先祖も浮かばれるだろうなという思いがあります。そして、こうして新たな形で具現化できたのは、先祖の見えない後押しがあったからこそと僕自身も強く感じています。

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月をイメージした丸窓。2階から1階を見下ろすことができます。

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「火袋」といわれる吹き抜けには竹やススキがはえています。

 「ウサギノネドコ」という名前の由来はなんだったのでしょうか?

吉村紘一さん ウサギノネドコは「ヒカゲノカズラ」という植物の呼び名として古くから日本で親しまれてきました。 呼び名の由来はさだかではありませんが、フワフワとした感触の葉や茎を、兎にとっての居心地のよい住空間と見立てたのではないかと思われます。 私たちの小さなお店も、お客様にとっての居心地のよい空間を目指したい、そんな思いでウサギノネドコという名前をつけました。

また、その原始的な造形が美しく、店のテーマが「自然の造形美」ですので、ヒカゲノカズラを家紋調にあしらったロゴをデザインしています。 また京町家は入り口が狭く、奥に長い事から「ウナギノネドコ(鰻の寝床)」ともいわれていまして、その名前ともひっかけております。 京都引っ越し以前から、私たち夫婦が温めていた名前です。 皆様に愛されるお店として育てていきたいと思います。

できるだけたくさんの方にウサギノネドコにお越し頂いて、先祖と僕の家族の想いがつまったこの建物を見て欲しいですし、人が集まったり、新しい何かが発信されるような場にしていきたいなと思っています。

(インタビュー終わり)

素敵な想いがつまったウサギノネドコ。京都に行かれる方、京都にお住まいの方はぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。