“デザイン”と”働くこと”と”これから残したいもの”。「デザイニング展 2012」 に参加しました!(前編) [イベントレポート]

greenz/グリーンズ designing

5月7日〜5月13日まで、福岡では「デザイニング展 2012」が開催中です。デザイニング展とは、毎年GW前後の期間に開催されているイベントで、8回目を迎える今年のテーマは「まちの教室」です。

福岡の街のあちらこちらに、「デザイン」をキーワードにした学びの場が設けられています。年々充実ぶりが増しているデザイニング展 2012の様子を、今回は前・後編に分けてレポートします。

デザインの持つ力を生かした働き方を

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MUJI キャナルシティ博多では、九州大学の田北雅裕さんの進行によるトークイベント「西村佳哲さんと語る2時間 〜『なんのための仕事?』をたずさえて〜」が開催されました。

リビングワールドの代表であり、働き方研究家としても活躍されている西村佳哲さんは、「人の仕事で世界はできている」と言います。私たちが目にしている世界は、メガネもパソコンも街路樹も、すべて誰かの仕事の結果としてそこにあるものです。人の仕事に囲まれ、人の仕事に触れながら生きているということは、私たちも社会も自ずとその一つ一つの仕事の影響を受けます。

デザインは仕事の一部でもあります。20世紀の後半からデザインは、企業がつくる商品に魅力や形や色を与えることに使われることが多く(日本では特に)、そのせいか最近では「デザインのためのデザイン」になっているものもあります。手段が目的になってしまっているのです。

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西村さんは、デザインを目的とせず、デザインの持つ力を生かした新しい働き方をしている人たちを紹介してくれました。

会社のインハウスデザイナーから主夫になり、新しく設立する幼稚園の椅子から砂場までつくった、まるでクリエイティブな用務員さんのような福田さん。また、商品をデザインするだけでなく、売る場所を見つけ、商品を流通し、販売までするという、デザイナーの仕事の幅を大きく広げている「FSTYLE」。FSTYLEの2人が「デザインすることを、自分の大切な人をつくることと、つなげて話してくれた」ことに感動していました。

最後の質疑応答で「デザインは世界をよくすると思いますか?」という質問が出ると、西村さんは「それを僕に聞かないでよ〜」と苦笑いをしながら、でもきっぱりと「デザインはどうでもいいと思っている」と言いました。

西村さんは、昔は「デザイン」という言葉で表していなかったものまで、最近では「デザイン」という言葉を使うようになり、「デザイン」という言葉が都合よく広義に使われていることに難色を示しています。「デザイン」という言葉は、もっと注意深く取り扱った方がいいのではないかということです。

「デザイン」がテーマのイベントでこのような言葉を聞くと、一瞬ドキリとした人もいるかもしれませんが、改めて「デザイン」という言葉の意味や「デザインとは何か」を考える、いいきっかけになったのではないでしょうか。

タイトル通り2時間たっぷりと語ってくれましたが、西村さんの語り口調はまるで自分とだけ会話しているようで、すべての話がすんなりと頭に入ってきて、心地よくそのまま腑に落ちる感じでした。

アナログとデジタルのこれから残したいもの

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4月3日にオープンしたばかりの会員性ライブラリー「BIZCOLI(ビズコリ)」では、トークイベント「残すこと・伝えること 〜活版と電子書籍〜」がありました。

活版印刷をはじめとする印刷物を扱う「パピエラボ」の江藤公昭さんと、オンライン本棚や電子書籍の会社「ブクログ」(2012年6月1日より分社化され設立)の代表の吉田健吾さん、アナログとデジタルそれぞれの出版に関わる2人と、モデレーターの高橋美穂子さんのクロストークです。

活版印刷の江藤さんが、吉田さんの紹介するYouTubeの動画を引用できる(リンクしてそのまま見られる)電子書籍に面白いと感激したり、今は本屋でもあまり本を買わなくなったという江藤さんに対して、電子書籍の吉田さんは今でも月に20冊は紙の本を買っていたりと、前半はこちらの予想の逆をいくような展開でした。

これから残したいものについて聞くと、江藤さんは「活版印刷の技術自体というよりも、昔はありきたりだった技術を新しい視点から発見する面白さや、そういうことが起こりうるという考え方や思考のプロセスです」と言っていました。

吉田さんは「残すということで言えば、紙の方が断然強い」と言います。インターネット上のものは、提供側がデータやアーカイブを消したりサービスを中止してしまえば、ユーザーの手元には残りません。

吉田さんの会社の「パブー」の電子書籍には、DRM(Digital Rights Management:デジタルコンテンツの著作権管理)をかけていません。これならば、サービスやソフトがなくなっても、持ち主がバックアップを取っておけばデータを残すことができます。インターネットの場合は、個人の意思に関わらず、提供側が残すか残さないかを決められる仕組みになっており、それがこれからの課題ではないかと言っていました。

活版印刷も電子書籍もあくまで出版や印刷の選択肢の一つで、どちらが優れているとか、どちらを残さなくてはならないとかではなく、より良いものを作るために、最適な方法を選びとっていく時代になっていくのでしょう。

福岡の街をめぐるデザインリレー

デザイニングの開催期間中に「まちの教室」となる出展場所も、いくつかご紹介しましょう。

文林堂

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創業40年の印刷屋さん「文林堂」では、前述のトークイベントのトピックスでもある、活版印刷の仕事とプロセス(文選→植字→インキの準備→印刷)が見られます。

一時はすべて処分してしまった活版印刷の道具を取り戻しながら、10年ほど前から再び活版印刷を始めた山田善之さん。何度も試し刷りをしては活字の間隔や高さを微調整している姿を見て、思わず「大変ですね…」と言ったら、ニヤリと「好きなんだよ」と一言。

「うまくいかないのが普通なんですよ。今の時代は物事が簡単にいき過ぎる。うまくいかないことを、楽しみながらうまくいくようにするのがいいんです」と語ってくれました。活版印刷のはがき作りワークショップでは、1枚ずつ自分の手で印刷機をグッと押して、手仕事の温もりと手間ひまを体験できます。

吉田木型製作所

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橋のパーツから、戦車の部品、鯛焼き機にマンホールまで、鋳物製品をつくる上で欠かせないのが木型です。そんな木型を、創業以来80年間作り続けてきた吉田木型製作所が、工業製品ではなくエンドユーザー向けに、鋳物の食器をつくるプロジェクトを始動しました。

ダッチオーブンやフライパンなど、調理器具では鉄の鋳物もありますが、食器はなかなか見かけることがありません。鉄の食器の重みを実際に手に取って感じながら、熱いものは熱いままに、冷たいものは冷たいままに保てるという、鉄の特徴を生かしたメニューを考えてみるのはいかがでしょうか。

シールと四人展

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シールといえば「貼る」「留める」という機能があります。その機能を使いながら、視点や切り口を変えてさらに一歩先の機能を追加した、新しいシールを提案するデザイン展です。「なるほどこういう使い方が!」と思わず唸るアイデアから、「スミマセン、これください」と言いたくなる今すぐ商品化できそうなものまで、シールの既成概念を覆されるようなものばかり。小さな会場ながら十分に楽しめます。

デザイニング展 2012は5月13日まで開催中です。11日からはイベント特設の「大名サテライト」もオープンします。IMSに設置された「まちの案内所」で情報収集をしてからデザインリレーに繰り出すもよし、WEBサイト公式ガイドマップでチェックしたワークショップやイベントに参加するもよし、“自分でやってみたことを、誰かと分かち合う”週末にしてみてはいかがでしょうか。

今週末はデザイニング展 2012に行く!