年末年始のこの時期、2010年はどこに行こうかなと考えている皆さんも多いはず。いきなりのアイデアで恐縮だけど、バングラデシュに行ってみるのはどうだろう?
バングラデシュの新しい途上国支援の現場を訪ねるスタディーツアーがある。企画は、アライアンス・フォーラム財団とH.I.S.だ。このツアーでは、世界最大のNPOともいわれるBRAC(バングラデシュ農村向上委員会)の活動やアライアンス・フォーラム財団が出資しているバングラデシュのインターネット通信事業のbracNetの活動、バングラデシュの農村や国立公園(国立公園が含まれないツアーもあるそう)を訪ねる。現地の社会人や学生との交流会もあるそうだ。
言うまでもなく、バングラデシュは日本とは全く異なる土地だ。金銭的なスケールだけで比べても、とてつもない貧困のなかで多くの人たちが暮らしている。経済をはじめとして、食料、教育、衛生など多くの課題を抱えている。低湿地のため、衛生状態は悪く、政治も安定しない。おまけに2004年には国土の60パーセントが洪水によって水浸しになるという事態にも見舞われた。
それでも、バングラデシュを創意工夫と技術の力で変えようと果敢に取り組んでいるひとたちがいる。BRAC(Bangradesh Rural Advancement Committee=バングラデシュ農村向上委員会)のミッションは「貧困や環境破壊などすべての搾取のない見識のある健康で民主的な社会をつくること」である。その規模は驚くほど大きい。事業総額は、5億ドルにのぼると言われ、2009年9月現在で12万人の職員を抱え、1億を超えるひとたちの生活をサポートしている。具体的には、貧しい女性や子どもたちを対象に、マイクロファイナンスの手法などを用いた地域ビジネス支援(養鶏、牛乳、家具、繊維工場など)を行う経済開発プログラムと、初等教育や職業訓練や保健医療サービスを行う教育・保健プログラムが活動の二本柱になっている。驚くのは、教育・保健プログラムという公共的なサービスの事業費の8割をマイクロファイナンスなどを通した経済開発プログラムの収益でまかなっているところだ。
スタディーツアーの企画者でもあるアライアンス・フォーラム財団は、このBRACと共同してbracNetという会社を作り、XVDという技術を活用したインターネット通信インフラをバングラデシュ全土で整えている。XVD技術の良さは、光回線などではない細い回線でも高画質の映像が送受信できるところにあるらしい。そうした技術を使った遠隔医療や遠隔教育などにも取り組んでいる。bracNetの活動については、ソーシャルマーケットプレスの記事に詳しい。
<追記>2009年11月より、KDDIがbracNetの第三者割り当て増資に応じ、株式の50%を取得している。
2010年のスタディーツアーの予定は以下のようになっている。
◆2010年のツアー予定日
(訪問先は変更になる可能性がございます。予めご了承下さい。)
1月 9日(土)出発 6日間 <ダッカ・シレット地方>
2月26日(金)出発 6日間 <ダッカ>
3月20日(土)出発 6日間 <ダッカ・ボグラ地方>
たしかに、バングラデシュはまだまだ貧しい国だ。しかし、BEACやBracNetの活動を垣間見るだけでも、新しい途上国支援のあり方やバングラデシュのひとたちの活発な様子が伝わってくる。何かと暗くなりがちな日本が学べることもたくさんあるのではないかと思うほどだ。
先日新宿のH.I.S.で行われた説明会では、2009年に行われたツアーの参加者の声も聞けたのだが、ツアーを通じた参加者同士のつながりも大きな財産になったと言っていた。6日間の旅で、どれほどの刺激を受けるのだろうか。バングラデシュからはじまる2010年は、いつもと違う年になるに違いない。
アライアンスフォーラム財団代表理事 原丈人さんと日刊イトイ新聞 糸井重里さんの対談を読む