図書館を20,000か所作って世界を変えよう! あなたも参加できる Room to Read (ルームトゥリード)

greenz.jp/グリーンズ 開校記念の式典にはできるだけ出席するというジョン

マイクロソフトのエグゼクティヴ在職中に、休暇で訪れたネパールの小学校で偶然出会った、「本のない図書館」という衝撃的な光景からはじまったジョン・ウッドの新しい人生と夢。インタビュー前編では、キャリヤや高年収、結婚間近の恋人、裕福な暮らしを手放してまでも、途上国に図書館や学校を作ろうと決意し、Room to Readを立ち上げた理由について話を聞いた。後編となる今回は、Room To Read (ルーム トゥ リード)成長の裏にある革新的な事業モデル、ジョンが目指すもの、そして、「世界を変えるために」私たち一人ひとりができることをお伝えしよう。
引用は、「マイクロソフトでは出逢えなかった天職」(原題:Leaving Microsoft To Change the World)及びジョン・ウッド自身の発言からとします。全ての写真のコピーライトは、Room to Readに帰属します。

誰もが世界を変えられるパワーをもっている

世界をよりよくしたい!、と思っていても、誰もがジョンのように、仕事を辞めるわけにはいかない。それでも、世界には、幸いにして人より少し裕福になった人たちが、自分の才能と富と情熱を社会のために役立てて、人生にもっと意味をもたせたいと思っている人がたくさんいる。そんな人たちの想いをつなげる資金集めのボランティア拠点が「チャプター」と呼ばれる世界的ネットワークだ。これが、Room to Read急成長の原動力になっている。教育を受けられない子どもたちの存在を知った世界中の「地球市民」が、世界でもとりわけ貧しい村々に教育を届けるため、資金集めに情熱を傾けている。現在、世界中に33のチャプターがあり、日本は半年前に設立されたばかりだが、8番目に大きいチャプターとなっている。ちなみに、4月に在日アフリカ大使館で開催された資金集めのパーティーには200人以上が集まり、寄付総額は過去最高の2,000万円だったという。これらの運営は、全てボランティアスタッフによって行われ、Room to Readのビジョンに共鳴した人が自発的に立ち上げ、組織したものだ。この有機的な成長とつながりについて、ジョンは次のように語っている。

僕は、「次はどの国にチャプターを作ろう」と指示することはないし、そのような計画もたてない。Room to Readは開かれた組織なんだ。Room to Readの力になりたい、そう思って手を挙げてくれる積極的な人を仲間として迎え入れるだけだ。学校を作るプロジェクトを支援してもいいし、僕たちのことをメディアや自分が勤める会社に紹介してくれてもいい。一人ひとりがアクションをおこすパワーを持っているんだから、参加する方法はたくさんあっていい。僕たちがやろうとしていることは、一人ひとりができる小さな取り組みを、いかに大きな社会変革のパワーにつなげられるかということなんだ。

また、一人ひとりが参加できる方法として、ジョンは、共同出資プログラム、「チャレンジ・グラント」なるものを立ち上げた。それは、できるだけ一人の寄付者に依存せず、多くの人から資金を集め、地元住民からも少額でいいから資金を提供してもらう、という持続可能な組みだ。その設立の理由はこうだ。

貧しい国にいって、単純に物をあげることは問題の解決にならないし、持続可能でもない。だから、学校をつくりたいけどお金がない人は、建設するのに必要な資材や土地を提供するとか、労働力を提供することで貢献できるようにしたんだ。そうすることで、役割分担ができる。地元の人のためになることは、地元の人が主役となってプロジェクトを定着させる必要があって、学校や図書館が完成すれば、「所有者意識」をもって永続的に学校を大切にするだろう?地元の人たちの文化にあわせてプロジェクトを育て、彼らを尊重し、協力して一緒に進めていくことが大切なんだよ。

「チャレンジ・グラント」では、地元住民が労働力を提供して学校建設に参加する

このロジックによって、ジョンの言う、「教育に投資をすれば、世界を変えるための手助けをしているという素晴らしい気持ちを味わえる」ことが可能となり、より多くの人が参加し、協力しあうことで、子どもの教育から世界は変えられる、ということを示したものである。さらに、地球環境がますます悪化している現状に加え、将来的に人口の爆発的増加が予想されていることに対して、持続可能な社会を実現するためには、「教育」こそが重要だとジョンは続ける。

地球の未来のことを真剣に考えるなら、森を守るとか自然を保護するなんてことだけじゃなく、もっと根本的な問題、つまり地球が直面しているあらゆる危機を引き起こしている原因でもあり、と同時にそれらの問題を解決できる「教育」ということにフォーカスすべきだ。図書館の目標数でいえば、15か国で展開して、2010年までに10,000か所、2020年までに20,000か所オープンさせることが目標だね。

世界を変えたいなら、自分の人生を変えることから始めよう

いまでこそRoom to Readのビジネスは軌道にのり、ジョンは華麗な転身を遂げた社会起業家としてメディアに引っ張りだこだが、その道のりは平坦なものではなかったはずだ。全てを捨てて未知の世界に飛び込むことに不安はなかったのだろうか。そして、無我夢中で、走りながら新しい道を切り開いていったジョンのモチベーションは、一体どこにあったのだろうか。

物質的な富があるかどうかは関係ない。本当に大切なのは、その富を使って何をするかだ。若くして経済的に成功したのは、大半は幸運だったからすぎない。世界を変える手助けをするために、自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。ゆっくりと着実に進むことが本当に重要なときもある。でも、よりよい世界をつくるためにやるべきことがあるときは、障害を気にしてばかりいてもいけない。許可を求める必要もない。僕が考えたいのは、「できない理由」じゃなくて「どうすればできるか」ってこと。

確かに代償は大きい。でも、人生に代償はつきものだ。僕くらい自分の仕事を楽しんでいる人は、世界に数えるほどしかいないだろう。月曜日の朝にベッドから飛び起き、オフィスに行くのが嬉しくてたまらない人は、そんなに多くはない。本物の人生を見つけた僕は、これまで以上にそれを強く抱きしめようと思える。自分がどんな人間かも、自分が何に集中したいかもわかっていて、自分を計る物差しももっている。それは幸運なことだ。

この闘いは長いものになりそうだからきっと80歳になっても、いまと同じようなことをやっていると思うよ。マイクロソフトに居た頃と同じように長時間働き詰めだけど、働き方も変わったし、考え方も変わったから、ちっとも大変じゃない。だって、情熱をもって人生をかけて取り組めるものだから。Room to Readにおける活動は、仕事だけど、趣味みたいなものだし、人生の冒険でもあり、世界を変えられるチャンスなんだ。僕は、天職に出逢えてとてもラッキーだけど、同時にこんな大役を授かってドキドキしている。でも、世界中のたくさんの人がこの活動に参加しているという事実が何より嬉しいし、それが成功の証と言えるんじゃないかな。自分より少し恵まれない人を助けるために自分の時間を投資できる人は、世界中で一番ハッピーな人だと思う。だって、その人は、自己奉仕ではなく、他者奉仕のために生きることができて、それは人生においてすごく意味のあることだと思うから。

子どもたちとの触れ合いが何より楽しみなジョン

活動を始めてから8年経ったいま、ジョンの決意とビジョンは着実に実を結び、大きなムーブメントに成長した。しかし、世界中の子どもたちが教育にアクセスできる日が来るまで、教育から世界が変わったと人々が実感できるまで、ジョンは活動のスピードを緩めることはないだろう。

世界を変えるために、私たち一人ひとりができることは小さなことかもしれない。でも、その小さな一歩と勇気は、やがて大きな社会変革へとつながっていく。“Be the change you wish to see in the world” (あなた自身が、この世で見たいと思う変化とならなければならない)と言ったガンジーのように、ジョンは、世界を取り巻く不平等や格差問題を解決するために、自ら飛び込み、そして自分のやり方で変革を起こそうとしている。揺るぎない情熱、壮大なビジョン、革新的な戦略を兼ね備えたジョンは、複雑な貧困問題でさえも、シンプルに、スマートに、そしてクリエイティブに語り、人々を魅了し、解決しようとしている。これからの持続可能な社会をつくっていくリーダーに、ジョンのような人が一人でも増えることを期待したい。

*ジョン・ウッドへのインタビューは、ヒトと社会と地球を大事にするビジネス情報誌オルタナの最新号、No.6と、環境映像専門のグローバルメディア green tv.Japanでも紹介中。greenz.jpを含めた3社によるグリーンメディアの初コラボレーションとして実現しました。

ジョン・ウッド プロフィール

John Wood

ケロッグ経営大学院でMBAを取得後、数年の銀行勤務を経て、1991年にマイクロソフトに入社。30代前半で国際部門の要職に就き、オーストラリアと中国に赴任した。大中華圏の事業開発担当重役を務めていた時、人生の進路を転換して、途上国の子どもに教育という贈り物を届け貧困のサイクルを断ち切ることを、自分のライフワークにすることを決める。1999年末にRoom to Read(ルーム・トゥ・リード)を設立。ネパール、インド、スリランカ,カンボジア、ラオス、ベトナム、南アフリカ等で識字率向上のために活動している。

Leaving Microsoft to Change the World

著書「マイクロソフトでは出逢えなかった天職。僕はこうして社会起業家になった」(原題:『Leaving Microsoft to Change the World: An Entrepreneur’s Odyssey to Educate the World’s Children』は、15言語に翻訳されている。