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自分や大切な人にやさしい時間を。ふれるだけで心も体もほっこりするホリスティックケア「タッピングタッチ」

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元気を出さなきゃ、しっかりしなきゃと思っていても心が前を向かないときってありますよね。そんなとき、すぐに自分をラクにさせてあげられる方法があります。「タッピングタッチ」といって、心と身体と人間関係を改善するホリスティック(=統合的)なケアの手法です。

専門家じゃなくてもできる心のケアを探して

この「タッピングタッチ」は臨床心理学者の中川一郎さんによって考案されました。さまざまな効果があるけれど方法はシンプル。指先の腹のやわらかいところを使い、左右交互に軽く弾ませるようにタッチしていきます。このふれ方を「タッピング」といい、「あ、ふれているな」と感じるくらいのほんとうに軽いタッチです。次第にひだまりにいるようなほっとする心もちになっていきます。

誰かと行うときは背中を中心に頭や腕に行い、一人で行うときは上半身全体をトントンと左右交互にタッピングをします。

self tapping face

self tapping  body

中川さんは臨床心理士としてカウンセリングを行う中で、専門家ではない人が日常的に心と身体のケアをする方法の必要性を感じていました。道具もお金もかからなくて副作用もなければ、ふつうの人だってとっつきやすい。古今東西の心理療法や体のケアを研究し、タッピングタッチを開発しました。

すでにウガンダの元子ども兵のリハビリや、ハワイのホスピスで心のケアに、日本でも自然災害での被災者支援で利用されています。とくに東日本大震災後、道具がいらずに誰でもできるという特長から支援のひとつとして大きな注目を集めています。

ふつうのマッサージとはちょっとちがうケアの方法、タッピングタッチ。普及に努めるインストラクターの中田利恵さん・康裕さん夫妻に効用をうかがいました。

ホリスティックケアとよばれる理由

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タッピングタッチには大きく分けて3種類の効用があると康裕さんは言います。

身体・心・人間関係にいい効用をもたらします。技術を学ぶことよりも、タッピングタッチによって自分の中にどういう変化が現れたのか感じてもらうこと、それが講座でもっとも大切にしていることです。

以前、タッピングタッチの講座を受けてみたことがあります。あまり体調の良くない日で胃のむかつきがひどかったにもかかわらず、タッピングタッチをされた後はもたれがスーッとひいていくのが分かりました。初対面の人に行うことに緊張もしていたのですが、ふれ合ううちにリラックスしていきました。

マッサージのように身体だけがよくなるわけではない。カウンセリングのように心だけ軽くなるというのでもない。全体的によくなるという意味でホリスティックケアといわれるのでしょう。

20年後の健康をつくる

長年不眠に悩まされていた人がこれを行うようになって、不眠ってなに?というくらい一気によく眠れるようになったそうですよ。

不眠の解消は大きな身体的効用の一つです。タッピングタッチはいつからはじめてもいいけれど、とくに若い人にもオススメだと利恵さんは語ります。

職場でのいろいろなことを抱えたまま寝ると、あまり深く眠れません。そして疲労が蓄積されていって五十代前後の体の変わり目で病になってしまう。若いときは意識しないで乗り越えていけるのだけれど・・・。二十・三十代の頃からタッピングタッチで深く眠るというのは五十代の健康をつくっているといえますよ。

被災という現実を乗り越えるために

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この2年間、中田さん夫妻は何回も東北の被災地を訪問してきました。タッピングタッチをしていると、被災者の方々がふだん口にできないようなつらい思いをすっと話してくれることもあるそうです。

大船渡に三陸鉄道の車両をカフェとして使う施設があり、そこにいた60代後半位の女性とお話をしました。最初は世間話だったのがだんだん自分の被災体験になって、タッピングタッチをしながら聴きました。

家は助かったけれど職場の復旧のメドがたたなくて…と涙を流しながら語られました。ひとしきり語り終えたとき、「なんだかすごく元気になって力がわいてきたわ」とおっしゃってくださいました。

最初は目がうつろで、つらい思いを抱えていらっしゃるのが一目でわかる感じでした。でも最後はもう本当にいい笑顔になって。いまだに忘れられない思い出です。

つらい思いは涙を流しながらでも話してしまう方が先に進めます。タッピングタッチには自然に心の枷をはずせるようになる効果もあるようです。

お互いにできるからこそ

すぐに覚えられるので、子どものボランティアにも取り入れられています。

小学生の高学年を集めてボランティアをする活動が地域でありました。事前に子どもにタッピングタッチを教えて、その子たちがデイサービスに行って、高齢の方々にタッピングをしてさしあげるという内容です。

当日デイサービスにいらしたお年寄りは「今日来てよかった〜」と喜ばれていました。子どもたちにタッピングタッチをお返ししたらと提案すると、皆さん見よう見まねで子どもにしてあげていました。するとそれまで一所懸命で緊張していた子どもの顔がほわっとした表情になってきて。お互い大切にしあう雰囲気になりました。

一方的にしてあげる・してもらうだけじゃないからこそできたことなのでしょう。

タッピングタッチはほんとうに簡単なので、してもらった人が「じゃあやってみる」とお返しができる。受ける側から「あげる側」になれる。お互いが与え合える素敵な人間関係をつくれます。

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やさしくふれることは大切にしているあかし

言葉に頼らないコミュニケーションだからこそ、思春期の子や問題を抱えている子との関係づくりにも有効です。

我が子たちともよくタッピングタッチをし合っていました。難しい年頃になって言葉では甘えられなくても、触れ合うやりとりの中で信頼を補い合えていましたね。保健室に来る子たちに毎日つかっている養護教諭の方もいます。保健の先生には心をゆるせるという子たちは、先生からふれてもらえると大事にされたという気持ちになるみたいです。

軽いタッチで行うから気楽に受けることができる。その敷居の低さが硬い心を柔らかくほぐしていきます。

一日のほんの数分でいい。自分自身やかけがえのない人をいたわる時間をもつことで、ストレスをかわす心のしなやかさがつくられていきます。タッピングタッチは、誰もが日々自分や人をたいせつにする時間をもてるようにサポートしてくれます。