東京仕事百貨がこの夏に4周年を迎え、「日本仕事百貨」として新たなスタートを切りました!それを記念して7月30日(月)から8月5日(日)まで開催された「週間仕事百貨」。その4日目に当たる8月2日(木)、「green drinks 仕事百貨」と題したトークイベントがヒカリエ8/で開催されました。
ゲストとして招かれたのは、greenz.jpのメンバー、発行人・鈴木菜央、編集長・兼松佳宏、フクヘン・小野裕之。この3人がゲストとして同時に登壇するのは今回が初めてなのだそう!
「グリーンズのみんなが普段どんなことを考えているのか知りたい」と、今回のイベントを企画した仕事百貨の中村健太さん。“今大切にしていること”をテーマに、3人がそれぞれ3つずつキーワードを持ち寄り、曼荼羅トークでイベントが進められました。
「未来の中の今」
鈴木 2006年にウェブマガジンを創刊した当初、greenz.jpは「エコスゴイ未来がやってくる」というコピーを掲げていました。そのときから“未来”なんだなあと、今もずっと思っています。
世の中には、“過去の結果としての今”と強く思っている人と、“未来の始まりとしての今”ということを考えている人がいるんじゃないかとあるとき思って。やっぱり新しい社会を作っていく人というのは、未来の始まりとしての今という感覚を持って動いていると思うんです。
自分ごとでいいんだけれど、どんな社会を作っていくかって言うことを考えたときに“未来の中の今”という意識で生きていることがすごい大事なんだなあと最近つくづく感じています。いつも目の前には未来というものがあって、その始まりが今なんだなと。
「Pay Foward」
兼松 「Pay Foward」は、日本語にするならば「恩送り」。もらった恩をもらった人にではなく次の人に渡していく。そうやっていろんなものが循環していくと自分に戻ってくることもあるし、戻らなくてもよくて。そういうことには特に期待せず、贈り物として届けていくのがすごくいいなって。
greenz.jpは購読料的なものを意識していなくて、僕らが発信してまかれた種が、みなさんの心の中で育っていって、芽が出て、いつか実がなって…それが僕らに返ってくればまた幸せという感じです。greenz.jpを6年も続けていくと、昔の読者が「起業したので、一緒に仕事しませんか」と言ってくれることもあるんですよ。そういことって、続けければ続けるほど、どんどん起こってくる。それが素晴らしいなって。
最近思うことは、送り返されるときに謙遜しちゃうこともあるんですけど、それをちゃんと受け取ることも贈った人にとってすごい大事だなと。今そういう恩送り的なことを、グリーンズのコミュニティを育てていくときに日々考えています。
「めらめら」
小野 僕は人を助けるのがどうやら好きなんですね。去年からgreen schoolをやっていて、そこでポッと出してくださるアイデアに、本当に実現すればいいなあと思ってアドバイスしているときって本当に楽しいなって。何を言葉として伝えてあげれば“めらめら”が沸き起こるのかなぁって。熱い思いとか、モチベートされるとか、自分から一歩踏み出したくなるとか。
その人が本当に動き出すことが大事だから、あたかも先輩のようにいいアドバイスをすることはその人のためにならないんじゃないかと思っていて。その人が「よくわかなんないけど、やります!」ってなることが、理路整然としたアドバイスをするよりも大事なんじゃないかなって。結構、難しいんですよね(笑)
兼松 僕の場合は100%向きあってくれる人には100%で応えます。60%くらいの人には60%くらい。「やりたいことわかんないんですよ」でもいいんですけど、とにかく100%で向かってくれれば100%返し、言い切り、あとは待つ!
僕がよく言うのは、「ぜんぜん本気に聞こえない。それ本当にやりたいの?」ってフレーズ。結構そういうことを言うと相手が「くっ」となって1%くらい上がる。それを繰り返すと「よし、火がついた!」って。アイデアがダメとかそういうことよりも、本気度。それは周りが操作できるものではないから。
鈴木 僕が思うのは、生き方になるかどうかかなってこと。何かを作り出すことっていうのは、すごく大変だしエネルギーがかかるんですよね。それってエネルギーを費やしてやるほどのことかどうかってちゃんと見極めなくちゃいけないし、自分がやるからには徹底的に自分ごとじゃないとパワーがでないじゃないですか。
別の言い方をすると、自分で自分の人生を生きるというか、自分がどう生きていくべきかみたいなことをきちんと考えて、「僕はこの目の前にあるこのことを、僕がやるしかないと思っている」というね、覚悟みたいなものがどこかにないと。
でもそれは中断してもいいと思うし、人生をかけてずっと考えればいいことだと思うんですよ。ソーシャルデザインをやってないと格好悪いとかそういうことは全然なくて、そういう感覚を持っていれば、自分の仕事が自分のものになるし、会社のことも自分のことして見えてくるものがすごいたくさんあるし。
結局greenz.jpがずっと言っていることは何なのかなっていうのを考えると、“自分の人生を生きる”ってことなんだなって。人生において、自分は主役なんですよ本来。その主役としての人生が輝いたものになったほうがいいじゃないですか、せっかく生きているんだったら。
「心の庭」
鈴木 greenz.jpを創刊してから、いろんなトラブルも当然あって、体調を崩してしまい、去年とかはガタガタだったんです。それでふとね、俺はいつのまにか”心の中の庭”が荒れ果ててたんだなあと思ったんです。自分の身体や精神をきちっと整えていかなきゃなと。
それと同時に、妻との関係をきちんと修復していくとか、子どもといる時間を増やすとか、そのためにどうやったら少ない時間で仕事の質が上げられるかとか、僕なりに考えたりして。
仕事をきっちりすると家族もハッピーだし、家族の幸せをしっかり考えられることは自分の健康にもつながるし。健康とか仕事、社会、個人としての夢みたいなものもね、全部つながっているんだなということが最近わかったんですよ。
身の回りの環境を整えることと、自分の身体を整えていくことと、ソーシャルデザインをgreenz.jpを通してやっていくことと、みんながそういう社会のために変わっていくことがひとつのイメージにつながっていくと思うんです。みんなが”心の庭”を整えていって、自分の中にしっかりした自信や湧き出てくるパワーなんかがあってはじめて社会と向き合えるような気がします。
「しりしり」
小野 「しりしり」は僕のパートナーの愛称です。恋人は作ろうと思っても作れないし、仕事よりなくてはならない存在だと思っていて。震災を機に、恋人とか家族とか「命」に近いところから大事にしようと僕は改めて思ったんですよ。
彼女がジュエリーブランドをやっていて、僕がグリーンズでビジネスをやっているので、彼女のビジネス面を手伝うことが僕の生きがいでもあるなあと。それは彼女を大事にすることであり、グリーンズのフィードバックでもあるし。
もともと江戸時代はみんな家業を持っていたのに、それがここ100年くらいは仕事づくりを他人に任せて自分は役割を果たすことに徹してきた。でもまた、パートナーや友達と生業を作るなんてことが、やりやすくなってきてるんじゃないかな。
「wicked partner」
兼松 “wicked question=気の利いた質問”という言葉を尊敬する方から教わったんです。「人生を決めるような問いかけを常に持っているか?」と。『ソーシャルデザイン』の本ではそれを「座右の問い」と言い換えてみました。
それをパートナーに置き換えると…常に問いかけのような存在であるパートナーがいると、ありたい自分にどんどん近づけるんです。はじめは言われてやることでも、習慣になると「この自分、好きだな」って気づくんですよ。自分ってこんなに磨きがかれるんだなって。僕はここ1年で歯を磨いて寝るようになったり、お肉やアイスクリームを断捨離することができました。
なので、持つべきものは座右の問いと座右の恋人かなと?(笑)ただ付き合うだけじゃなくて100%お互い向き合って、ケンカをしても対話をする。そういう関係でいれたらと思っています。
「LOCAL」
兼松 「LOCAL」はgreenz TOURと題して6月にアメリカに行ってきて、そこで得られたキーワードなんです。
今までローカルって地域のことって思ってたんですよ。ローカルとグローバルって遠いんだろうなって。そうしたらアメリカで出会ったある方が“My rocal is global.”っていうんです。「地域というよりはあなたの目の前の世界がローカル。世界は私の目の前にあるから、世界は私にとってローカル」って。
そんなふうに自分ごとだと思える範囲がローカルととらえ直せたらすごく素敵だなと思って。今、スモールビジネスとか、小商いとか、“小さい”ってつけちゃうじゃないですか。でもそれってへりくだることはなくて、“ローカルアントレプレナー”くらいでちょうどいいなって。
グリーンズって小商いをしていく人を育てていくことじゃないかなって最近思っていて。マイプロジェクトって自分の人生を取り戻していこうということだとしたら、さらにそこから上に向かって新しい稼ぎ方。「いい仕事って何?」ということにお金の話は出てこないけど、じゃあ「いい稼ぎってなんだ?」と。それはお金だけじゃなく、ソーシャルキャピタル的に贈与経済的な部分で、交換できることもあると思いますが。
”これからの稼ぎかた”というところに踏み込んでいくことが、本当の社会は変わるってことなんじゃないかなってここ数週間思ってきていて。greenz.jpでいつかマーケットプレイスをやりたいという野望もあるんですよ。
鈴木 小商いがソーシャルデザインそのものなんだなって思います。というのは、たとえば僕の友人でね、FARM CAMPUSというのをやっているのがいるんですけど、ぶっちゃけ儲かってないんです。でも彼はそこから、無意識的なメリットを感じているし、目の前に見えない“いいこと”がものすごくたくさん起こる。
グリーンズもそう。たくさんの人と知り合って、つながって、前向きになったりハッピーになったり。それをやっていくための小商いをやって、とりあえずそれでなんとかなる。全部食える人もいるかもしれない、月3万くらいになるかもしれないけど、いろんなレイヤーでいろんなことをみんなでやっていけば、日本はもっとおもしろくなるのになって最近は思います。
最後に
中村 一緒に近くでいるからお互いに影響されていることもあるけれど、僕が考えていることと近いことを、グリーンズのみんなも考えている。なんとなく、こういう考え方がひとりずつ広まっている実感があります。
改めて“自分ごと”からはじまるのがソーシャルデザインなんだと感じた1時間半。みなさんは“心の庭”を手入れできていますか?“ローカル”を大切にしていますか?もちろん、パートナーや家族も忘れずに!
すべてはめぐりめぐる“pay foward”です。はじまりはいつも今。日本仕事百貨やgreenz.jpが“めらめら”の源となりますように。
(Text:杉本真奈美)
次回のgreen drinks Tokyoは9/13(木)!