以前紹介した、テクノロジーの力で聴覚障害者の方々の生活向上を目指す「シュアール」が、世界的な社会起業家のネットワーク「アショカ・フェロー」に選出されました。東アジア初のフェロー選出という快挙です。
アショカ・フェローについて詳しく知らない方も多いと思いますので、このビッグニュースを解説していきたいと思います。
アショカ・フェローって?
アショカ・フェローを選出する母体となる「アショカ財団」は、ビル・ドレイトンによって1980年に創られた、米国発の「社会起業家」を支援する財団です。
「社会起業家」は様々な解釈で語られますが、一般的には「社会を変革する事業を生み出す起業家」と解釈されます。アショカ財団は、そうした人材を「アショカ・フェロー」として選出し、社会起業家へ人的ネットワークを始めとする支援を提供します。
アショカ・フェローは全世界で約3,000人が選出されており、その中ではWikipediaのジミー・ウェルズ氏、Kivaのマット・フラナリー氏、中南米で貧困層向けの送金ビジネスを展開する日本人・杤迫篤昌氏がいらっしゃいます。
実は2009年に、greenz.jpでも紹介記事が書かれています。さらに詳しく知りたい方はこちらもぜひご覧ください(世界2000人超の社会起業家を輩出!アショカ財団が今年も”門下生”を発表)。
評価された「手話版のWikipedia」
シュアールは手話に関する様々なソリューションを展開していますが、今回特に「イノベーティブ(社会を根本的に変革する)」だと評価されたのは、彼らが展開する「SLinto Dictionary」という事業です。
SLinto Dictionaryはシンプルに言えば「手話のWikipedia」(シュアールグループ代表、大木洵人さん談)です。「手話を入力する特別なキーボード」と、「手話のオンライン辞典」の二つの要素で構成されています。
現在、手話のオンライン辞典は世の中に存在しません。手話が分からない人は、手話ニュースなどを除いて、誰かが手話をする姿を見て、その意味を知ることはできません。手話には、意味を調べるために必要な、「デジタルな入力手段」と「データベース」がなく、検索することができないのです。
シュアールの「SLinto Dictionary」は、世界中の聴覚障害者と手話学習者にとって、Wikipediaが私たちの社会を変えたのと同じか、それ以上の影響を与えることが期待されているのです。
世界に羽ばたく若手起業家のロールモデルに
大木さんはなんと1987年生まれ。世界中にいるアショカ・フェローの中でも、若手に位置づけられる年齢と言えるでしょう。
greenz.jpをお読みの皆さんも、大木さんと年齢が近い方が多いと思います。かくいう僕も86年生まれなので、大木さんは一歳下です。同世代の起業家が、こうして世界的な評価を受けている姿を目の当たりにすると、とても奮起させられます。
日本でもITスタートアップが盛り上がりつつありますが、大木さんのような「社会起業(社会的課題をビジネスの手法で解決する)」的なアプローチはそれほど多くありません。大木さんをロールモデルにして、若い起業家たちが続々登場してくることに期待ですね!
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