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お金の使い方で社会が変わる?お金を活かすとはどういうことかを考えるgreen drinks Tokyo「これからのお金」レポート #gdTokyo

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greenz.jpが毎月第2木曜日に開催しているネットワーキングパーティ「green drinks Tokyo」、10月は円高や株安で毎日ニュースを賑わす「お金」について、鎌倉投信の新井和宏さん、CAMPFIREの石田光平さんをお迎えして、お金との向かい方、生きた使い方についてお話頂きました。その模様をレポートでお伝えします。


どうやってお金を集めよう?

これまでは、事業を始めたければ銀行に融資を頼みに行くというのが一般的な方法でした。しかし、社会の構造や日本の経済状況も変わり、また事業のあり方も変わっていく中で、「やりたいことをやるためにどのようにお金を集めるか」ということが行動を起こそうという人たちにとって課題になってきています。

そんな中、グリーンズが注目するのは「いかに共感を集めて、お金を集めて、やりたいことを実現していくのか」ということです。最終的な目標はお金を集めることではなく、やりたいことを実現すること、それならばそのやりたいことに対する共感を集めることで同時にお金も集められれば最高じゃないか!と思うのです。

そこで、今回は投資する側と集める手段を提供する側のお二方をお招きして、それぞれの角度からお金についてお話いただきました。


今回のゲストは?

まずはゲストのお二人に自己紹介がてら、それぞれの取組について説明して頂きました。

新井和宏さん

greenz/グリーンズ gdt201110 新井和宏さん
「これから100年続く会社」に投資する投資信託「結い 2101」を運用する投資委託会社「鎌倉投信」取締役。15年以上にわたり資産運用業務に携わり、現在は「結い 2101」の運用責任者として「いい会社をふやす」ために日本中を飛び回る。

鎌倉投信が設立されたのは2008年11月。投資信託は銀行や証券会社にもありますが、鎌倉投信がユニークなのは「100年続く企業に100年投資しよう」という、ロングターム思考であることです。

お金儲けだけでなく、投資家に「満足」を提供し投資先の応援団になってもらえるように、ウェブサイトに投資先の企業の詳細や何故投資しているかを掲載しています。

「事業の内容について話すと1時間でも2時間でも足りなくなってしまう」そうなので、ホームページを見るか、『外資金融では出会えなかった日本でいちばん投資したい会社』をぜひお読みください。

先日ガイアの夜明けに出演したという新井さん。その後の5日間にそれまでの1年半分のお客さんが来た!という、テレビの影響力をまざまざと感じるエピソードも披露して頂きました。



石田光平さん

greenz/グリーンズ gdt201110 石田光平さん
株式会社ハイパーインターネッツ代表取締役で、マイクロ・パトロン・プラットフォームCAMPFIRE(キャンプファイヤー)運営責任者。農力村の立ち上げにも関わり、green drinksは「農2.0」の回以来2度目の登場。

キャンプファイヤーは、グリーンズでも何度か紹介しているkickstarterというクラウドファンディングを「ぜひ日本でも」と思ってはじまりました。「マイクロパトロンプラットフォーム」というのは小さなパトロンがいっぱい集まってプロジェクトを成立させるというイメージで、企業よりはクリエイターなどの個人を支援する目的だそうです。

仕組みについてはこちらの記事を見ていただくとして、現状としてはエンタメに強いですが、今後はグリーンズと提携した新しいコンテンツ「グリーンズSOUP」を公開予定!今後、マイプロジェクトを応援するために、色々なプロジェクトを増やしていく予定です。

ちなみに石田さんも、新井さんが出演したガイアの夜明けに、30秒ほどですが登場しています。


自己の利益の追求と社会性の追求の間にあるのが「投資」

まずは、鎌倉投信とCAMPFIREにどのような共通点があるのか、それぞれの顧客について、そしてお互いをどう見ているのかをお聞きしました。

鎌倉投信の顧客は圧倒的に30代40代が多く、投信全般と比べるとかなり若いとのこと。考えに共感して投資する人が多いので、投信が初めてという人が多く、女性の割合も比較的高く、投信金額も月1万円という方が多いそうです。中には高校生投資家という人がいて、両親が受け取っていたニュースレターを見て「そのいい会社がどうなるか知りたい」といってお年玉を投資しているのだとか!

一方、CAMPFIREの場合は、10代後半から30代後半までの、TwitterやFacebookを活用している世代。明確なリターンがお金を出すモチベーションになっているケースが多く、1回の投資金額としては(割といいお返しが帰って来る)5,000円くらいが最も多いんだとか。

そして、新井さんは自己の利益だけを追うのが投機、社会性だけを追うのが寄付であり、投資はその間になければいけないが、鎌倉投信とCAMPFIREにはそこに共通点があると話した上で、CAMPFIREについて「ダイレクトに消費者の期待を受けられるというのは羨ましい」と語ります。石田さんは「金融の世界から入った新井さんとインターネットの世界から入った僕とでは入り口が全然違うけれど、何に使われているかがパッと見て分かるお金の使い方を提供するという出口が同じというのは面白い」と話してくれました。

つまり、自己の利益と社会の利益という2つの間でバランスを取ろうとする若い世代にとって、過程や結果がしっかりと可視化されているこの2つのサービスは魅力的に映るのかもしれません。


みんなのお金で何が成し遂げられるか?

ここで、そのような視点から、お二方それぞれが「成し遂げようとしていること」についてもう少し踏み込んでお話いただきました。

まず、新井さんは「お金を活かすということはお金を儲けることではなく、使って欲しい人に使ってもらうことだ」とおっしゃいます。だから、顧客には本当にその会社を応援したいのか、真剣に考えて欲しいというのです。

例えば、障がい者雇用でも、ただ「可哀想だから」という理由ではなく、障がい者を一戦力として正規採用する会社に投資しています。そういう会社が素晴らしいのは、人材の多様性に対応できるという点であり、その意味で今後も成長が期待できる会社ということになるのです。

そのような企業の魅力はウェブサイトだけではなかなか伝わらないので、年に数回、企業の現場を訪ねるツアーを行ったり、社長の話を聞く機会なども積極的に開催しています。鎌倉投信がやっていることは、ただそのような長い目線で確実に成長しそうな会社を応援すること。それに共感してくれる人がいれば投資してくれればいいし、それに対してしっかりとリターンを返すのがプロとしての役目ということです。

投資家にとっては大事なリターンという点でも、鎌倉投信は昨年と今年の上半期と国内投信で2位の実績を上げています。新井さんは「震災後の今、利益が出ているのは、今”ほんとうに必要とされている会社”です」と言います。

運用開始してからマーケットは25%くらい下がっているそうですが、「株価が下がったらいい会社のバーゲンセール」ということで、震災直後は普段の10倍も入金があったそう!お客さんは誰も日本の経済はどうなるだろうと憂えておらず、「日本の未来は明るい」と思っていているそうで、「それが私たちにとって一番幸せなことです」と話してくれました。

CAMPFIREはスタートしてまだ3ヶ月、その間にメディアやテレビにも取り上げられ、一定の評価を得たわけですが、石田さんは「もっとまとまったお金を集められるプラットフォームにしたい」と話します。

お金を払う側も何がもらえるかをシビアに考えていて、それで集まり方がずいぶん違ってくるし、参加者もお金を集められたことよりもプロモーションになったことの満足度が高いそうで、それはいいことなんですが、マイクロパトロンプラットフォームとしては、少額をたくさんの人から集めることをもっと重視していきたいとのことでした。


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ここからはお二人に質問に答えていただく質問タイム。

まずは編集長のYOSHから「グリーンズでバナーを掲載してお金をもらう代わりに、野菜を1年送ってもらうみたいのが、できないかと考えています。そのような、贈与経済と貨幣経済のハイブリッドのようなやり方はどう思いますか?」という質問。

新井さんは「全てをお金を介してやる必要はないから、そういうのはあっていいと思う。みんなが共感して集まってくれば物々交換のようなもので成り立つ経済もある。ただ、貨幣経済から完全に逃れるには自給自足か出家しかないので、どの部分でお金から逃れるかを選択できるようにすることが出来ればいいと思う」、石田さんは「成り立って欲しいけど、日本全体で考えると構造がすでに出来上がっていて豊かさをお金で計るしかない以上、成り立ちえないとは思う。ただ”グリーンズを応援する”というところをうまく見せることで、なんとかなるかもしれませんね。」とお答え頂きました。

続いて、会場からは「ソーシャルなリターンとお金のリターンでは、一般の人はお金のリターンを考えてしまうと思いますが、そのあたりはどのようにお感じでしょうか?」という質問。

新井さんは「日本で右肩上がりの成長というのはもう無理で、その中で社会に必要な会社がどこなのかを私たちは示しているだけ。それに共感していただけるなら、それはソーシャルなリターンを期待しているということ。私達のファンドの出資者が1万人を超えたら本当に社会はそういう方向に変わったということだと思う」、石田さんは「僕もどれだけ、そういうお客さんが増えていくかということで答えが出ると思う。同じソーシャルでもソーシャルゲームのように友達と関わる満足のためにお金を払うこともある。このあたりを上手く取りこめたら、もっとうまく出来るような気がします」とお答え頂きました。

続いて、海外(アジア)への進出についての質問が。

これに対して、新井さんは「日本を元気にしたいのでまずは日本が優先だが、日本が元気になったらアジアはアジアで別のものを出したいと考えている。アジアでは日本型経営が改めて評価されているので、これからの時代にあった日本型経営をアジアに広められるようなやり方が見つかればやりたい」、石田さんは「日本にはいいコンテンツがまだまだたくさんあると思っているので、まずは日本で頑張りたい。その上で日本のサブカルチャーをアジアに持っていけるといいですね。」とお応え頂きました。



新井さんはよく、「そもそも日本の社会問題が解決されないと、日本の成長はない」とおっしゃっいます。その解決の担い手には鎌倉投信が応援するホンモノの企業とCAMPFIREが応援するマイプロジェクトがあります。僕たちのお金の使い方ひとつで、社会は変わるのかもしれない。そんなことを共有できた green drinks となりました。

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