クラウド時代の新しい価値観を示したベストセラー『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』が、「積ん読」状態になっている人におすすめのTED講演ビデオがあります。15分間で、最も重要なキーワード「コラボ消費」のコンセプトがわかり、新しい「共有」に関するさまざまなアイデアが解説されている、同書の著者のひとり、レイチェル・ボッツマン氏による講演をご覧ください。
コラボ消費、スワップ取引、そしてテクノロジー
「コラボ消費」という概念を説明するためには、さまざまなキーワードが登場しますが、「モノやサービスを『所有』するのではなく、『共有』すること」、そしてそこに最新のテクノロジーが介在するというところが出発点です。
この講演は、「観終わった『24』のDVDと、これから観たい『SEX AND THE CITY』のDVDを交換するには?」という具体的なストーリーを使って、コラボ消費の一つの形である「スワップ取引」という概念を説明しています。
スワップ取引は、「自分には価値がなくなったが、他の人には潜在的な価値が残っているもの」をオンラインでマッチングを行うサービスです。”Swaptree (swap.com)“というスワップ取引のサイトをレイチェル氏が使ったとき、『24』と交換可能なものは59,300もあったそうです。
P2P(ピアツーピア)の高度なテクノロジーと、社会的評価(reputation)のしくみを背景に、Swaptreeの取引は、実に99%が成功しているといいます。
コラボ消費の生まれた背景
レイチェル氏は「コラボ消費」の生まれた背景に、4つの要因があるといいます。
1. コミュニティの重要性について
2. ソーシャルネットワークとリアルタイム技術の進化
3. 未解決の環境問題に対する懸念
4. 世界的な景気後退
しかし、図書館やコインランドリー、既存のレンタルショップの例を挙げるまでもなく、「共有」は昔からあるもののように思えます。講演中でも印象的なフレーズが出てきます。
『我々は猿の一種であり、共有、協力するように生まれ育っているのです。集団での狩りの時、皆で協力しての農作業をした時…。「ハイパー消費」というシステムが登場する以前から、何千年にもわたって、こうしてきたのです』
しかし、昔からあるものが進化して再登場する、その背景にあるのが、テクノロジーというわけです。ソーシャルネットワークとリアルタイム技術、そしてモバイルが、共有の「摩擦」を減らす上で、大きな役割を果たしているのです。
所有から共有へ
もう一つ紹介されている事例は、Zipcarというカーシェアリング会社が行った実験です。
車を所有していた250人の参加者が、1ヶ月間車を所有せず、公共交通機関とカーシェアリングだけで暮らすようにしたら、1ヶ月後には250人中100人が、「もうキーを返してもらう必要はない」、すなわち所有の必要性がないことに気がついたというのです。
「欲しい物を所有することで得られる満足が非常に少なくなっている」中、「共有」という価値観は、クールでサステナブル。
書籍〈シェア〉で提示されたレイチェル氏たちのコンセプトを知ることで、これからの社会を少しうまく説明できるようになるかもしれません。
講演ページはこちら(2011年2月 日本語字幕公開)の
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