写真に写るのはサンダーバードの秘密基地?いえいえ、そうではない。これは南極に最近作られた観測基地。だが、普通の基地とは一味違う。
何と、エネルギーを自給してしまう優れもの。その名も、「プリンセス・エリザベス基地(Princess Elisabeth station)」。ベルギーのカーボン・フリーな観測基地だ。
太陽光発電と風力発電で電気を、太陽熱で温水を作り出している。最大出力124Wの太陽光発電パネルが408枚屋根や壁に取り付けられ、合計で最大50.6kWを出力する。また、風力発電機は定格で6kWの風車が7基備えられていて、将来的には風力発電機は2基増設され合計で9基になる予定だ。そうなると、基地全体で最大で100kWを超える出力を有することになる。どの程度の発電効率が見込まれているか、基地内にどれだけの電力機器があるか、については詳細が明かされていないが、遠隔制御も可能な高度な電力制御システムも兼ね備えていて、電力が不足しているときは、生命維持に必要な機器へ優先的に電力が供給されることになっているという。研究設備を動かしていたら寒さで研究員が凍死、という事態は避けられそうだ。
(c) International Polar Foundation. Photo from PRINCESS ELISABETH ANTARCTICA
24㎡ある太陽熱パネルで生まれた熱は、水を温めるために使用され、18㎡分は台所や浴室で使われ、残りの6㎡分は氷を溶かして飲料水を作るために使われる。暖房や調理の熱をどうするかは明かされていないが、カーボン・フリーということだから火を使わずに、床暖房やIHクッキングヒーターを備えているということかもしれない。
それから、この基地がすごいのは、エネルギーを生み出すだけではない。7層、60センチの厚さの建材を使っていて断熱もばっちり。そして気密性も抜群で、かつ高度な通気システム兼ね備えていて、一度温めた熱が逃げないようにできている。
Passive buildingやGreen building (緑の建築)と呼ばれるこうした建築工法は、少量のエネルギーで快適な暮らしを実現する手段として注目を集めている。エネルギーが少量になれば、プリンセス・エリザベス基地と同様、太陽光や風力を使って建物内部で使うエネルギーを自給することも可能になると期待されている。
ちなみに、日本のGreen buildingと言えば、greenz.jpでも以前紹介した「天然住宅」!断熱もさることながら、想定寿命は300年と日本の住宅の平均寿命の10倍にも達するし、木材は100%国産材を使うから日本の森林と林業の活性化にもつながる上にカーボン・マイレージも少なく抑えることができるなど、いいことづくめ?!価格は坪73万円と、注文住宅の平均坪単価と比べると若干割高だが、東京で建てるならほぼ同レベル。これから家を建てるなら、「天然住宅」も選択肢に入れてみるのはいかが?
プリンセス・エリザベスの基地内部公開映像を観る
プリンセス・エリザベス内部のバーチャルツアーを楽しむ