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変わる音楽業界!「投げ銭」制が問いかける音楽の価値。

your unknown music

皆さん、はじめまして。
your unknown music(通称:yum[ヤム])という音楽ポータルサイトのパブリッシャー 松倉早星(マツクラ スバル)です。
yumは名前のとおりあなたの知らない音楽を紹介するポータルサイトです。
とても小さなWEBコミュニティですが、ほぼ毎日今まで聴いたことがなかった音楽と出会うことができます。今後、何回かにわたり、このプロジェクトで見えてきた激変する音楽業界の変動をお伝えできればと思います。
第1回目は「新しい音楽の評価方法」について。


RADIOHEADが始めた「投げ銭ルール」が深い!

radiohead in rainbows

2007年10月10日に発売されたRADIOHEADの 7thアルバム「IN RAINBOWS」を皆さんご存知でしょうか。
当時、結構話題にのぼったこのアルバム。何が話題かというとアルバムの購入価格を自分で設定できるという点。
ストリートミュージシャンがギターケースに投げ銭を放り込んでもらうのとは少し趣向が違いますが、評価原理はとても近いものがあります。
このアルバム、ようは0円でも買えてしまう。逆に100万円払うこともできてしまう。

揺らぎます。相当悩みます。だって、これまで私たちはアルバムを購入するなら2500〜3000円、iTunes Music Storeなら1500円〜2000円で買っていたもの。つまり、ある程度、固定価格で提示されていた物に対して、「リスナーの価値観で値段設定して」という投げかけですからね。まさに投げ銭の絵を想像しましたよ。

とはいえ、相手は天下のRADIOHEAD。想像してください。
ストリートでRADIOHEADがライブしていたら、あなたはいくらお金を投げ入れますか?

このRADIOHEADの試みは賛否両論の嵐でした。ポイントを列挙すると。。。

(1)従来の音楽業界を敵対するような仕組みだった点。
(2)0円でもダウンロードが出来る点。
(3)これまでリスナーとミュージシャンの間に存在したレコード会社・流通業者を取っ払っている点。
(4)音楽の金銭的価値をリスナーに問いかけた初めての事例。

特に(1)に関してはRADIOHEAD側から「敵対する意志はない」という言及はあったようです。
(2)について、RADIOHEADならびにBlurPink FloydのUKミュージシャン達が、常々違法ダウンロードに対する対応を英政府に求めていた点を考慮すると(ファイル共有ソフトなどからの違法ダウンロードを行うユーザーの回線を強制的に遮断すべき、という法案設立を求めている)、違法ダウンロードに対する先手策とも思える。
盗られる前にバラまいてしまう。逆説的な方法で違法ダウンロードリスナーに思考させようとする意思を感じます。
そして、(3)(4)の点が一番大きなRADIOHEADからの問いかけです。
固定価格を支払っていた私たちに対し、「全ての音楽の価値は、本当に一律なのか?」という疑問を与えます。
これまで一定の価格を支払ってきた習慣の中で「あなたが思う音楽の価値をお金で表してくれ」というお題。

「音楽の価値ってなんだろう」
「自分で評価するって難しい」
「これまで買ってきた音楽は本当にその価値があったか?」

たぶん、世界中のリスナーが同じような考えで頭がいっぱいになったはず。
RADIOHEADは音楽の価値を再考する機会をリスナーに与えたんですね。

冷静に考えると、ある映画を見て「面白くなかった。損をした。」なんて経験ありませんか?
逆に、ライブなんかにいくと「最高だったよ。3万払っても良い!!」なんて経験が私にはありました。

おそらく音楽体験や映像体験、その中にある「価値観」というのは人それぞれです。そんな大前提がある中に音楽業界という大きな動きがあり、アルバムの値段は固定価格です。
レコード会社や流通を取り払った【ミュージシャン と リスナー】という対等の関係が成立したとき、まさに3年前の音楽にデジタル化の波が押し寄せたとき。
やっと彼らは問いかけることができたんじゃないでしょうか。

「僕らの音楽をあなたの価値観で評価してくれ」と。

あなたなら、いくら支払うでしょうか。


日本でも始まった「投げ銭制」

小沢健二「シッカショ節」
RADIOHEADから3年の時を経て、日本でも投げ銭制が話題になっています。
約13年ぶりのツアーで話題となった小沢健二さんの新曲“シッカショ節” ライブ音源を「投げ銭」でダウンロードできます。
しかも銀行振込!!激しくローテクノロジーです。これでどれほどの「投げ銭」が集まったのはか知る術はないのですが、3年前に行われたRADIOHEADの「投げ銭」は、予想を上回るお金が入ってきた、という噂を聞きます。

アナログ版とデジタル版は並走する現代だからこそできる「投げ銭」という名の問いかけ。
デジタル化へ移行する中で【音楽の価値】がどう変わっていくのか。
レコード会社より先にミュージシャン側が冷静に動き出しているようです。
自分が思った「価値」をペイする文化が当たり前になれば、とても面白く可能性を感じる「お金の働き」のようにも思えます。
逆に、3年前にRADIOHEADがしかけたことは場合によっては「皆、0円購入」なんて悲劇も可能性としてはあったにもかかわず、リスナーを信じたミュージシャン側の心意気に頭が下がります。


IZONNによるライブ投げ銭!!

IZONN

そして、Ustreamの大流行および宇川直宏さんが仕掛けたdommune
さらにAAAAAAAAAAエキソニモ 千房さん+unit9 岸本さん、さらに開発チームBOWによる超豪華ユニット)が作成したpaypalを使った投げ銭サービス”IZONN“。
Ustreamが誰でも「ライブ」な状況を作れる点。その反面、放送主に対する金銭的評価方法がなかった問題をIZONNがフォロー。今、ネットワーク上で「投げ銭制ライブ」が実現しています。
そして、7月12日にCBCNET上でIZONNを使ったMerce Deathこと大野真吾さんのジャムセッションが生中継されます。
詳しくはCBCNETの特設サイトをチェックしてください。



ということで「投げ銭」というキーワードから、今、世界で起きている価値の再考だったり、自分が価値があると感じる金額を表すことの難しさだったり、逆にお金という仕組みが非常に良く出来た評価方法だったりと気付かされる点が非常に多いことに気付きます。
固定価格に疑問を持て!なんて話じゃなくて、自分が思う価値をしっかり表現できるか。それもお金というシステムを使って。
今、音楽のこういった動きの中から自分の感じる価値観を再考しはじめる人も増えているんじゃないでしょうか。
デジタル化が進む中であなたが「価値ある」と感じるポイントはどこでしょうか。考えてみると意外と深い問いかけと気付くはず。

次回はストックホルムの「フリッツ・コーナー」という音楽のNPO団体について執筆予定。

ぼんやり、あなたのお気に入りのアーティストを見つけてみよう。