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「食べられない」を「超おいしい」に変える魔法。干し柿のつくり方

いも、栗、かぼちゃ、サンマに銀杏、そして新米。次々とおいしいものが実る恵みの秋です。今年は秋の間にひと手間かけて、しばらく楽しめるおいしいものをつくってみませんか。

たとえば、干し柿はどうでしょう。

柿と聞くと、鮮やかな色みにツルンとした食感、そしてさっぱりした甘い果実のイメージをもつ人が多いと思います。しかし柿は、もともと全てが「渋柿」。そのままおいしく食べられる味ではありませんでした。今では普通に流通している甘柿は、突然変異で誕生したものだとされています。

柿の歴史は古く、なんと平安時代の書物や法典に“干して甘くした柿”を献上していたことが書かれており、突然変異の甘柿が登場したのも鎌倉時代のこと。渋柿を干していた1200年前の人たちは、一体どんな思いで干し柿をつくっていたのでしょうか。古代へのロマンを胸に、干し柿をつくってみましょう。

まずは「渋柿」のこと
シブってどんな味?

渋のもとは、タンニンというポリフェノールの一種です。動物が食べた時、唾液のタンパク質とタンニンが結びつくと、瞬間的に口の中が収縮したような感覚を覚えます。口の内側が全て乾ききったような、あるいは、砂がへばりついたような感覚で、口を閉じづらくなる。何ともいえない不快感であり、その時にタネごと吐き出してくれたら、柿にとっては食べられずに済む、ということです。渋は、柿が自らの身を守り、生命を繋ぐために備えられた仕組みとも言えます。

ではなぜ、「干し柿」は甘いのでしょうか。

タンニンはもともと、唾液に溶ける水溶性です。しかし干し柿をつくる際に皮をむくと、空気に当たって細胞が嫌気状態になり、その時につくられる物質がタンニンを不溶性に変えます。そのためタンニンが唾液に溶け出さない、つまり渋を感じなくなるのです。

同時に、干すことで柿の水分が抜けて糖度が凝縮されるため、干し柿は甘柿よりも2〜3倍甘くなります。

ラウンド型で小さめの市田柿(いちだがき)、タネなしで大きい平核無(ひらたねなし)、大きめで鈴型の愛宕(あたご)など柿の品種もいろいろ。渋柿であれば、どれも同じように干し柿がつくれます

準備は渋柿の入手と
干す場所の確保

材料
渋柿(干すスペースを考慮した上で、お好きな量)

道具類
・包丁やピーラー(皮を剥くため)
・鍋で沸かしたお湯(柿の消毒用)
・ひも(全ての柿が干せる十分な長さ)
・干し柿クリップ / 竹串 / 干しかごなど、柿を離して干すための道具

干す道具はいろいろ。干し柿専用クリップの他、いろんな便利グッズが出ています。ひもは柿の重さに耐えられるものなら何でもできますが、棕櫚(しゅろ)の葉を割いて紐代わりにすると、干し終えたら土に還せます

手順1
柿の皮を剥く。この時、枝がついてる場合は落とさず、ヘタも付けたままにしておく。

柿の収穫時、果実から枝を外さずに短く残しておくとひもが結べるので便利


枝が取れている柿も、ヘタはキープします。ヘタを落としてしまわないように、先に全ての柿のヘタ周辺だけをむいておくのがおすすめ

クリップは熱湯消毒後、ヘタをつかむように挟む。枝もクリップもない場合は、ヘタの周囲に切り込みを入れてひもを巻き付けるか、ヘタの下に竹串などを貫通させて竹串を結ぶ方法も。または、柿がくっつかないように干せればいいので、ネットや干しカゴなど、ある物をいかして干す

手順2
柿にひもをセットする。干すスペースに合わせて、1本のひもの両端に、または、1本のひもに間隔を開けながら4〜6個ほどを結びつける。ただ、重みで落ちないよう確認を。

手順3
消毒のため、柿を4〜5秒ほど熱湯につける。

柔らかくなってしまうので、熱湯につけるのは本当に一瞬。火を入れすぎないように注意。また消毒後は柿を直接触らないこと

手順 4
柿を干す。軒下など、雨が当たらずに日当たりがよく、風通しがいい場所が理想的。

仕上がりの目安は3〜4週間。その間なるべく柿に触れないこと(むしろ揉んだ方が早くできるという地域もあるのでご近所の干し柿名人に聞いてみましょう)

好みの仕上がりになったら完成

自分でつくれば
仕上がりも楽しみ方も自由

全体に白いパウダーをまとった干し柿に馴染みがある方も多いでしょう。あれは、干す過程で凝縮された糖分が飽和状態になり、表面に滲みでて結晶化したもの。カビなどではなく、むしろその柿のポテンシャルいっぱいに甘さが達している状態です。

湿度や温度など、環境によっては結晶化しないこともありますが、干し終えた後に冷蔵庫で保存したり、干し終える前に気温が下がって寒風に当たると白くなりやすいです。

極めて個人的な感覚ですが、気温と湿度が高くなってきた近年は常温だと白くならないと感じています。皆さんの地域ではどうでしょう

長めに保存したい場合は、霜がつかないようラップに包んでから、さらに冷凍保存袋で冷凍するのがおすすめです。糖度が高いため、カチカチに凍ることもなく、半年くらいは余裕でおいしいまま。年末年始など人が集まる時に、料理に使ったり、焼き菓子に使ったり、もちろんそのままお茶のお供に出しても喜ばれますよ。

(撮影:やなぎさわまどか)