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森への愛は遺伝する。流域のまちで暮らす人たちと森の価値を分かち合い、次世代へと継ぐ岡崎市の地域商社「もりまち」 #求人

[sponsored by 株式会社もりまち]

愛知県のほぼ真ん中に位置する、岡崎市。
このまちは、徳川家康公が生まれた岡崎城の城下町として、さらに東海道五十三次の38番目の宿場町として、古くから賑わってきました。

現在は自動車関連の製造業が盛んで、経済は好調。全国でもごく一部の、地方交付税を受け取らず、自治体の税収だけで財政を運営している都市です。
中心市街地となっている岡崎城から東岡崎駅周辺は活気があり、老舗やエッジの効いたお店が多く集まっています。また、岡崎市の観光伝道師を務める人気YouTubeクリエイターの活動拠点でもあり、ファンのみなさんが聖地巡礼で全国からやってくるという側面も。

そんなさまざま顔を持つ岡崎市の面積の約6割を占めるのが、森です。その大部分は平成の大合併の前、額田郡額田町だった地区です。

「もりまちの求人 岡崎市│WORK for GOOD」

岡崎市の森は、明治時代から植林を積極的に進めてきた歴史ある林業地で、主にはヒノキが植林され、大切に育てられてきました。

今回案内していただいたのは、市町村合併によって消滅した旧額田町の財産を「財産区」として守っている森。しっかりと間伐や枝打ちがされて、過密になり過ぎず、陽射しがさんさんとあたっています。

「気持ちいいでしょう?こういう森をもっとつくりたいんです」と話すのは、岡崎市の森を起点に中山間地域の持続可能性を高める活動を行う地域商社「もりまち」の加藤亮さん。

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加藤さん 岡崎の森全体を良くしていきたい。岡崎は森がまちから近くて、恵まれているんですよ。それにもかかわらず、この一番近い森の木材が使われていない。これを大きな課題と感じています。

目の前にある木が、地域で使われていない。
「もりまち」では、日本中で課題となっているこのことに「誰かの森から私たちの森へ」というコンセプトを掲げ、森の課題を自分ごとにしながら、真摯に向き合っています。

現在、少数精鋭のスタッフで一丸となって、まるで“野戦病院”のように、森が良くなるために必要な手当てをしつつ、未来を見据えたトライ&エラーを繰り返し、働いています。その奮闘ぶりをお届けします。

行政と経済活動の両輪で動く

「もりまち」のはじまりは、元岡崎市役所職員の加藤亮さんが、森林課の職員として森の課題に本気で向き合うなかで、行政の実務での取り組みに限界を感じ、民間と両輪で動こうと、市役所内で働きかけたことだといいます。

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「もりまち」加藤 亮さん

加藤さんは、岡崎市内の旧・額田町出身。地元に残る友人たちがフェスを開いて、地域を盛り上げようとする姿などに刺激され、当時、公務員の立場でできることを模索していました。

そんななか、実は自身も祖父から山林を譲り受けた“山主”であったことから、自ら希望を出して、初めて森林課に配属されたのが、10年前のことでした。

加藤さん 配属されてわかったことは、課題しかないということ。岡崎市の森林は、面積だと市内の約6割を占めていて、そのうち約6割が人工林で、スギやヒノキなんです。

けれども、木材の単価は1980年をピークに、外国産の材木輸入が本格化して安くなってしまいました。これだけ立派に生えているものでも、良くて1本1万円。安いものだと、3千円程度。商売として成り立たない単価です。70年も手塩にかけて育てて、切って、運んでその値段です。そんなわけで、経済的な理由で林業を離れる人がすごく増えてしまったんです。

しかし、森は放置したままでは、土砂災害や生物多様性の喪失といったリスクを抱えるだけでなく、森林が水資源を蓄える働きも失ってしまうため、定期的に木を間引くなど、手入れをしなければいけない。

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左は手入れが行き届いている森で、右は木が過密になって、暗くなってしまった森。こまめに手入れをにするかしないかで、これだけ大きな差が生まれてしまう

行政として森にアプローチできたことは、「森林経営管理法」という法律によって可能になった、個人の山主の山を預かって、木を切ったり、間伐したりすること。岡崎市では各自治体に譲与される「森林環境譲与税」を用いて、真面目に取り組んできました。

加藤さんは、まさにその担当でした。

加藤さん めっちゃ真面目にやっていたんです。でも、1年で約100ヘクタール(1平方キロメートル)しかできないので、いつまで経っても終わらない。整備が必要な森は、約1万3000ヘクタールあるんです。それで、行政施策だけでなく、経済活動の一環で森が良くなるシステムと両輪で動かないといけないと思ったんです。

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市職員時代の加藤さん(画像提供:ご本人)

そんななか、加藤さんは森林や林業分野におけるコンサルティングを手がける「株式会社トビムシ」代表の竹本吉輝さんに出会います。

岡崎森林組合にて開催された林業の先進事例の学習会が開かれ、そのときに講師としてやってきた竹本さんから、「地域の資源をいかして、地域活性化に貢献するには?」をテーマにした話を聞き、加藤さんは心をつかまれたといいます。そこから、市職員として竹本さんに「岡崎でもお願いします」と、ひたすら言い続けた結果、縁も重なり、森の地域商社を設計してもらえることになったのです。

加藤さん 3年ぐらい調査してもらいました。一般的なコンサルだと、そこで絵を描くだけなんですけど、ちゃんと仕組みを実装するのが彼らの売りでした。

地域のキーパーソンが出資して会社をつくることになり、岡崎市、岡崎森林組合、林業家などがお金を出し2022年に「もりまち」が生まれました。地域の大切な財産である森を取り扱う会社を運営するためには、地域に縁のある人材が必要でした。そこで白羽の矢が立ったのが、加藤さんでした。

加藤さん 最初は、トビムシさんが手がけた岡山の西粟倉村のように、トビムシさんの社員が移住して組織をつくる、みたいなイメージだったんです。僕がそこで働く予定はなかったんですよ。だけど、どうしたら地域の森が良くなるかを考えた時に、この森と縁があり、思い入れが強い加藤亮にやらせてみたら?ということになったんです。人生、おもしろいですよ。普通の公務員だったのに、こんなことになるなんて。

そこで、一旦市役所を退職して一定期間後に再雇用される「退職出向」という形で、加藤さんは「もりまち」の社員になりました。そこからは、自分の給料は自分で稼ぐ。イチ公務員が、企業を立ち上げ、引っ張っていくことになったのです。

森とまちをつなぎたい

「おかざきの森を起点とし、森と街とヒトを繋ぎ、資源を活用しながらヒトが自然に集まる輪を広げ、里山での幸せな暮らしの実現を目指す」

これが創業当初からの「もりまち」のビジョンです。
岡崎市は、市町村合併によって、市域に対して森の占める割合が大きく増加しました。それから20年が経ちますが、今でもまちの人にとって、森は少し遠い存在のようです。

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岡崎市内を流れる一級河川・矢作川

けれども、歴史を遡ってみれば、岡崎に流れる矢作川や乙川の流域には、1万5000年も前から人びとが暮らしはじめたといわれており、その背景には森の存在があったといいます。

山と山の間に川が流れ、川辺に人が住みつき自治が育まれ、文化的なアイデンティティを共有する空間が広がって、岡崎のまちは形成されてきました。今も、岡崎市に暮らす人びとが使う水道水のほとんどは、岡崎の森の水源から確保した自己水(※)が使われています。この森をきちんと管理することで、持続可能な資源として、矢作川流域の暮らしと密接に関わり続けていくはずなのです。

※自己水…市などが自ら保有する水源から取水し、浄水処理をして供給する水道水のこと

そこで「もりまち」では、まずは岡崎市内のまちで暮らし、森の存在をよく知らない人たちに関心を抱いてもらい、さらには、岡崎市内に限らず矢作川流域に暮らす人びとに向けて、岡崎の森=“水源の森”であることを伝えながら、事業に取り組んでいます。

加藤さん 岡崎の森林の現状を丁寧に見つめ、課題を一つひとつ洗い出しながら、地域に根ざした解決策を模索しています。「森づくり」は単独で完結するものではなく、「人づくり」「地域づくり」と有機的に連携させることで、ようやく持続可能な森の未来が見えてくると考えています。

それゆえ、事業内容は多岐に渡ります。材木販売や間伐材を用いた商品開発などの木材流通を基盤にしながらも、岡崎のまちの人を巻き込むイベントや企業向け研修プログラム、新たな森のベンチャーを始めるプレイヤーを増やすための移住定住施策にも取り組むなど、多角的に事業展開をしています。

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最初に「売れた」と手応えを感じたという、岡崎市役所職員向けに開発した、木製ネームプレート。公式には採用されていないが、市職員の半数ほどが使用しており、部署が変わるたびに注文が入るという好循環な仕組み。もちろん、もりまちスタッフも使用中

かつて森にあった機能を復活させる

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「もりまち」がまず取り組んだのは、森に従来存在していた、木材の流通機能を復活させることでした。

加藤さん 最初の課題として感じていたのは、在庫として材木を持っている業者がいないことでした。ほしいと言われたら、すぐに売れるようにしたい。そこで、僕たちが在庫などのリスクを背負い、この山に従来あった機能を復活させようとしました。そうすることで、再び森とまちとのつながりが生まれるんじゃないか?と考えました。

森の木を使って材木や商品をつくるためには、当然、製材の工程が必要になってきます。
「もりまち」がお任せしているのは、岡崎市の中山間地域には3社しかない製材所のひとつ、株式会社しらい。かつては旧額田町だけで製材所が10社以上ありましたが、今では3社。それでも、今も熱い思いを持って製材を続けています。おじゃますると、担当の白井仁士さんが、大きな丸太を長さ30mぐらいありそうな機械に積み、大きな音を立てながら切っていました。

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できるだけ無駄がないようにカットされた丸太。中央の部分は角材、周囲の薄い部分は雑貨などに加工される

白井さんは、「もりまち」の事業にとって欠かせない存在。材木の販売というのは、利益が少なく、手間がかかる上に在庫によるリスクが高くて、難しい商売です。そうしたなか、創業当初は、どんなサイズが売れるんだろうかと相談しながら、進めていたといいます。

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白井仁士さん(写真左)。ひと区切りつくと白井さんがやってきて、もりまちのみなさんにものすごい勢いで話かけたかと思うと、取材陣に「こいつらは間違いないと思って付き合っているよ!」と言って、オンライン会議のため走り去って行った

加藤さん 最初の頃は、お客さんが何をほしいのかわからなかったんです。製品とするためには、製材後に半年以上乾かす必要があるため、需要がありそうなサイズを事前に決断するのですが、それが大変で。まるで、焼き魚か煮魚か。どっちが来るかわからんから、とりあえず焼き魚を生産したら、注文は煮魚ばかりだった。そんなようなことが続いていました。

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岡崎市と旧額田町の合併により、2011年に誕生した「岡崎森林組合」

続いてやってきたのは、「もりまち」から車で10分ほどで到着する「岡崎森林組合」。
白井さんで製材した材木はこちらへ運ばれ、この一角に借りている材木置き場に保管され、注文が入ったらすぐに出荷できるようにしています。

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森林組合の敷地の一角にある、もりまちの在庫を保管する材木置き場

「岡崎森林組合」には若者も多く、30名ほどが在籍する元気な組合として現在も活動しています。けれども1980年のピークを境目に、製材品を販売することでは儲からなくなり、やがてその機能は失われてしまいました。現在の活動は、森で木を伐採し、丸太として市場に出荷することが中心。森林組合がなくなってしまった地域に依頼された森の困りごとに対応することもあり、忙しいといいます。

その状況を受け、「もりまち」では、かつて森林組合を中心として地域が担っていた、材木を流通させる仕組みを復活させることにチャレンジしたのです。

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材木を流通させるためには、サプライチェーンの上流に食い込む必要があると考え、地元の住宅メーカーやホームセンターなどに営業へ。けれども、結果は厳しいものだったといいます。

加藤さん すでにある外国産木材が中心の市場においては、プロはみんな木材がこの塊でいくら、と知っていますから。僕らが、どれだけこの森で木を育て、大切にしているかを語っても、いや、これぐらいで買えるでしょう、という頭で来るんですよ。結局のところ、利益がどうこうという話だけになってしまい、難しさを感じました。

けれど、今まで森や材木に関わっていない人の中には、僕らがこうやって話をして、山主さんに返すお金がいくらですと言えば、その価格じゃないとダメだよね、と納得して買ってくれる人もいる。だから、可能性を高める相手として、今まで関わっていなかった人といかにつながるかが大事だなと気づいたんです。一緒におもしろがってやってくれる人を、どれだけ探すかですね。とはいえ、木材の消費量が多い建物で使ってもらう努力もしていきたいと思っています。

誰かの森から“私たちの森”へ

そこに気がついてからは、森への企業の関わりしろを増やす活動にも力を入れているといいます。

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企業研修の様子(画像提供:もりまち)

加藤さん 企業向けに森林環境プログラムなどを開いて、そこに従業員の方が参加してくださると、その企業さんの中にファンが増えていくんですよ。数名でも、やる気のある方がいると、企業としてSDGsの推進に貢献する内容をようやく見つけられた!ということで注力してくださる。いろいろと挑戦する中で、ここに需要があるんだ、と気づいた感じです。

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企業研修では、森だけでなく製材所を訪問して生産者の思いを聞く時間も(画像提供:もりまち)

「もりまち」では、こうして新規の事業も考え実行しながら、同時に材木を売るための挑戦も続けています。

加藤さん 僕たちは、山主さんから丸太のまま買うんですよ。山主さんに少しでもお金が戻るように、市場よりも高く設定した金額で。その代わり、お客さまにそれを理解して買っていただくために、“口”で高く売ってこないといけないです。

たくさん木を伐って低コストで生産し、安く売れることが、もしかしたら理想的なのかもしれないんですけど、こういう課題を抱えている日本の林業地だと、最初からそんなことをする余裕もない。現状は、木を運ぶのにも、トラックをそのためにチャーターしなければいけない。昔のようにトラックがいっぱい出て、一緒に載せてもらえればコストは下がりますがそれも今はありません。そういう一つひとつのことが、単価に反映されてしまいます。

だから、今は僕たちの語るストーリーに納得していただいて、自分たちの水源の森が持続することを考えた少し高い価格で、買ってくれる人を増やしていく。そういう人が増えれば、大量に生産して運ぶ仕組みを取り戻すことができて、コストの低減やスピード感も追いつく日が来るかもしれませんが、まだまだそこまでの道のりは遠いです。今はまだ、少しずつすこしずつ、理解をしていただく段階だと思っています。

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加藤さん 僕らが大切にしていることは、「誰かの森から私たちの森へ」ということ。結局、そういう風に思って、森に関わってくれる人が増えれば、自ずと森の課題が解決されて、森が良くなっていく。今、日本中がそれにチャレンジしていて、一部、成功事例みたいものが出てきていますけど、なかなか難しいことはわかっています。

僕らもそれは自覚していて、こんなこと言うと夢がないですけど、おそらく僕らが生きてるうちに、森が良くなることはないと思っています。たぶん。

だけど、あがきたい。岡崎市は森と商圏が近くて、38万もの人が住んでいる。うまくいけば、本当に成功のモデルになれる可能性があると思っているんです。

アイデアに「ノー」はない。「おもしろそう」が口癖

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そんな「もりまち」のみなさんの働き方は、主体性重視。

加藤さん 森の課題を自分ごとにして、自主的に仕事してほしいな、というのはすごく思っています。正解がないので。いろんな人がいろんなアイデアを出して、それをひたすらトライ&エラーしていく。それが、この会社には一番合っているというか、森の課題解決には近道かなと思っています。

よく言えば、自主性みたいなものを重んじるようにしているつもりです。正直に言えば、みんなそれぞれで考えて、勝手にやってほしいんですよ。その代わりノーとは言わない。おもしろそうだね、がみんなの口癖なんです。

自分で考えて、行動する。それはそれで大変そうにも感じるけれども、社員のみなさんも、むしろその方が得意で、楽しんでいる様子が伝わってきます。

加藤さん 今、一番おもしろいなと思っている商品は、木材とアイアンを組み合わせたベンチです。きっかけは、岡崎市の公園緑地課の担当者からの相談で、岡崎市内にベンチのない公園があるのだけど、予算もないので、市民からの寄付金でベンチを設置したい、と。「ベンチをつくれませんか?」と言われたんです。

そこで、いかに“更新”をして、木を多く使ってもらえるかを考えてつくったものが、このベンチなんです。

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もりまちの事務所にも置かれていたベンチ

脚や背のアイアンフレームの生産は市内の鉄鋼所にお願いして、木製の座面や背もたれは、一般的なサイズの角材で設計をし、それをボルトでとめることで、交換を容易にできるようにしました。

加藤さん 公園に設置するための寄付金は、1基あたり15万円。木材の部分が劣化してきたら1回だけ無料で交換します、というのはどうだろう?と僕とスタッフの石原さんでおもしろがってスタートしたんです。

木材のデメリットとして、野外に出すと、雨風によって劣化してしまう。だから、この企画ではそれを逆手にとったんです。金額も金額だし、賛同してくれる人は全然いないだろうなと思っていたのに、蓋を開けてみたら、ものすごく多くの方に寄付をしていただいて。すでに今、40基近く出ています。

寄付を受けつくられたベンチは、表にプレートをつけることができ、会社名を紹介することもできるし、「おばあちゃん喜寿おめでとう」といった個人的なメッセージを入れることもできるといいます。

加藤さん 企業向けプログラムに参加して、このストーリーに面白さを見出してくださった、岡崎市内の自動車部品関連の大手メーカー「株式会社アイシン」さんが、敷地内のビオトープやバスの待ち合いベンチなどにこれを採用してくださっています。

「もりまち」には、全員必ず企画書を出しなさい、と強制するような文化はありません。出したい人は出せばいいし、苦手な人は別のことを頑張ればいいよ、という社風があるのだといいます。

加藤さん ただ、今ここに残っている人は、森の仕事をすることに“芯”を持ってるので、芯がない人からすると、温度差が生まれちゃうかもしれませんね。しっかりとした背骨がないと、薄っぺらくなっちゃうということは、すごく思っています。

「もりまち」には、役職がない

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もりまち社員の石原空子さん(写真左)、加藤優さん(写真右)

ここで働くひとに、役職はありません。
それぞれが持っている力、得意なことをいかして、全力で突き進むのみ。誰かがこれをやりたい、といえば、みんなでわーっと盛り上げていく。

では、働くスタッフのみなさんはどのような思いを持って入社し、現在、どのようなやりがいを感じているのでしょうか。

もともと岡崎市内の建設関係の会社で広報やイベント企画、木育活動の仕事を担当していた石原空子(いしはら・たかこ)さんは、岡崎城の前を流れる乙川の河川敷を対象エリアにした水辺空間活用プロジェクトの市民メンバーとしても活動していました。そのような経験もあり、縁あって「もりまち」の立ち上げ時から働いてきました。

経験上、岡崎の材木や建材、流通などの事情に詳しく、「もりまち」の材木に関する業務の多くを担当しています。

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石原空子さん

石原さん うちは、母方の祖父も父方の祖父も、岡崎で材木関係の仕事をしていたし、川や海でもよく遊んでいたんです。名実ともに山の恩恵を受けて、育ててもらった。だから、私には山への感謝があるんです。

けれども、建設業界で働いていたとき、せっかく近くに木があるのに、外国産の材木を使うことに違和感があった。業界全体で見ると、確かに外国産のものは価格も安く使いやすく、流通も整っているので合理的なのはわかる。企業の利益追求という意味では、そちらを取らざるを得ない。それはしょうがないのですが、環境にとっては決してそれがベストではないとわかっていながら売り続けるのは、なんだか気持ちが良くないなと感じていました。でも「もりまち」には、それがない。自分が売る商品やサービスを売れば売るほど環境が本当に良くなっていくというのは、働いていて違和感がないんです。

さらに、自身の仕事にかける想いをこのように語ります。

石原さん 加藤さんや、製材所の白井さんを見ていて思うのは、おじいちゃんとかお父さん、お母さんのような自分が大切に思う人が大事にしていたものを自分も同じように大事にしたい、と思うのは人の本能ではないかいうこと。森への愛は遺伝するんじゃないかな。

田舎の田んぼをやめられないという人も、自分の親とかおじいちゃんが大事にしてきた姿を見てたから、それを同じように守りたいと思うんだと思います。だから私も、地域の人が大事にしてきた山が見放されるのを見てみぬふりはできないと感じてしまいます。

なんでそう思うの?と言われたら、やっぱり自分の生い立ちかなと。そして、私たち世代が森や自然を大切にする姿を子どもたち世代に見せられたら、またその愛はつながっていくのではないかと思っています。

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また、2023年に入社した加藤優(かとう・ゆう)さん(以下、優さん)は、もともと関東の造園会社で、東京都23区内の公園や茨城の国営公園など、公園の管理の仕事をしてきました。愛知県出身のパートナーとの結婚を機に、愛知県へ引っ越すこととなり、転職先を探すなかで「もりまち」に出会い、働くことになりました。

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優さん わたしも、自分自身が生まれ育ったのが中山間地域なので、地元と重なる課題があって、“自分ごと”に落とし込みながら働いています。

優さんは、小さな頃から植物が大好きで、とても詳しいそう。ツアーで森を案内する時も、植物を見て「これ、めっちゃいい匂いだから嗅いでみて!」と子どもたちに教えるなど、より森が魅力的に感じられるような取り組みを得意とします。

そんな優さんの担当は、材木以外のプロジェクト企画。岡崎市からの受託ではじまった「岡崎漆プロジェクト」では、かつて愛知県の三河地方でつくられ、日本三大漆のひとつと言われていた「三河漆」の復興をめざしています。耕作放棄地30か所ほどで、約3,000本の漆栽培に挑戦しており、日々、その管理を任されています。

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「岡崎漆プロジェクト」で栽培している、三河漆。順調に成長している(画像提供:もりまち)

ほかにも、市場にはほとんど流通していない、森に自生し、古くから薬用植物として利用されてきた「またたび」を採ってきて販売したり、愛猫家向けの蒸留体験イベント「猫ちゃんが喜ぶまたたび水づくり」など、さまざまなイベント企画もしています。

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岡崎市街地の乙川河川敷で開催された猫がテーマのマルシェでは、マタタビの枝を販売(画像提供:もりまち)

もりまちの社員にはさらに、この日は不在だった方がもう一人います。

加藤さん 事務の仕事をかなりやってくれていて、露出はしたくないということで、今日は在宅です。多様性を重んじて、出演NGになりました(笑)。その代わり後方支援は頑張るから、と。実際、すごく頼りになって、彼がいないと、この会社は絶対に回らないんですよ。それをみんなわかってる。

うん、うん、と力強くうなずく石原さんと優さんの様子から、この会社はチームとして、うまく回っているんだなと感じました。

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この日、事務所には石原さんの娘さんがいて、事務所がある施設の管理人さんと一緒に何やら踊って、楽しそうに過ごしていました。

加藤さん うちは在宅してもらっても全然問題ないし、ゆっくり出社してもらって、夜遅くまで働くのも全然いい。休みも年休制度があるので、仕事さえちゃんと回ればまとめて休んでくれても全然いい。そういうのは、本人の事情や体調に合わせて配慮するようにしています。

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加藤さんいわく、森を良くするために描いていた階段は、当初は全部で3段ぐらいかなと思っていたら、実際には15段ぐらいあって、でも少しずつ、確実に登っていくしかないと感じているそうです。その中で、「今は4段目ぐらいにいる」と加藤さん。

加藤さん 必要なことをその時のフェーズ、フェーズでやっています。今は、自分たちで材木の在庫を持ってやっていますけれども、そのうち、それを「生業でやりたい」という人が現れたら、僕らがやらなくてもいいし、そういう日が来るといいなと思っています。

移住相談デスクを設けているのは、移住者がやって来て新たなベンチャーを始める、みたいな状況を描いていたから。実際に最近、まったく森と関係ない仕事をしていた若者がやってきてくれて、森にどっぷりはまって、すごく積極的に関わってくれています。

いつの日か、「もりまち」のやることがなくなるかもしれない。そしたら、もうすごい幸せですよ。みんな、何で食っていくんだという疑問はありますけど。

次の世代へと引き継ぐ、壮大なロマン

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1日、取材をさせていただいて、「もりまち」のみなさんから感じたのは、森への深い愛。

加藤さん スギやヒノキの人工林は、日本の社会課題になっていますよね。でも、今の状態に育つまでに70年もかかっている。僕のおじいちゃん世代が、孫たちのために植えてくれたという思いを引き継ぐ必要があることに、ロマンを感じているんですよ。

当時、これだけの数の木を植えたのも、めちゃくちゃ苦労して植えていると思うんです。だけど、植えた本人たちは、生きているうちに自分には利益がないことがわかっている。

僕らは今、この木が何の利益を生まなかったとしても、彼らと同じ思いで、次の世代に引き継ぐのが最低限の役目だと思っています。孫に、僕たちの世代は怠慢だったと言われたくない。何十年か後には、すごく価値があるものになっているかもしれない。だから、その時のためにベストを尽くしたいですね。

「もりまち」のみなさんは、森の仲間になってくれる人のことを、“変態”と呼んでいます。
ここで働くことは、もちろん自分自身が“変態”になることであり、いかに森を自分ごととして落とし込んで、森を面白がって、変態具合を出すことができるか、ということ。

森への愛、熱量にあふれ、真摯に向き合いたい人は、本当に幸せに働くことができる職場だなと感じました。

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(撮影:倉田果奈)
(編集:村崎恭子)

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