地域の未来をつくる「コミュニティ・オーガナイジングの教室」の講師を担当している笠井成樹(カサイシゲキ)です。
私はCOVID-19の感染拡大をキッカケに年間500冊以上の本を読む生活スタイルに変えました。
以前よりも読書量が増えたことを機に、コミュニティ・オーガナイジングというリーダーシップ論を聞いたことがあるないにかかわらず、これからアクションを起こそうとしている全ての人たちの支えになりそうな本を紹介させていただきたいと思います。
そもそもコミュニティ・オーガナイジングとは、アメリカで芽生えた市民の力で社会を変えるメソッドです。ハーバード大学ケネディスクールのマーシャル・ガンツ博士が体系化したリーダーシップ論として世界各国で活用されています。
これまでのリーダーシップ論と大きく異なる点としては、一人ひとりの背景にあるストーリーに注目しながらチームや目的を形成していくという点にあり、何よりも「人」に重きを置いている点に私自身も惹かれました。
今回の地域の未来をつくる「コミュニティ・オーガナイジングの教室」でも参加者一人ひとりの物語を引き出していって地域でどのような人と、どのような目的でチームをつくり、アクションを起こしていくのか、それらを専用のフォーマットに落としながら明らかにしていきたいと思います。
そして今回選んだ本のキーワードは「違和感」と「習慣」です。
「違和感」がなければ当事者性意識が生まれず、それがなければ人は行動を起こしません。人々が行動を起こすコミュニティとなって変化を起こしていくために、は全ての根本である違和感に注目する必要があると考えています。そして、きちんと違和感が芽生えるかどうかは、あなたがどのような「習慣」を過ごしているかによって決まってくるのです。
「たくさん読んでいるくせに王道中の王道かよ」と心の中でツッコんでいただきつつ、最後まで読んでいただき、プロジェクトや地域に関わる人々の当事者性意識や行動意欲を改善するヒントになればと思います。
おすすめ本一冊目
『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』
(若林正恭 文藝春秋)
まずは意外な本から取り上げたいと思います。溜まりに溜まった社会に対しての違和感に何かしらの答えを出そうと実際にキューバへ旅立った、お笑いコンビ・オードリーの若林正恭のエッセイです。彼の違和感を持つセンスは昨今のテレビ番組でもよく垣間見えるようになりましたが本の中ではそれが凝縮して詰まっています。
ブラック企業、格差社会、新自由主義、世間の空気を読むことなど日頃から数多くの疑問を抱きながらも、のたうち回りながら必死に自分なりの答えを導き出そうとする姿がありありと描かれています。つまり彼の思考パターンを追っていくことで違和感からどのようにして自分固有の納得解に至らせることができるのか、その思考体験ができます。
また彼はいろんな物事を深く考えようとしているので普段から思考するクセが習慣になっています。人によっては苦痛かもしれない深い思考を毎日のようにできている理由はまさに「違和感」が沸いたら抱きしめるかのように大切に保持することが出来ているからだと思います。
毎日続くと人は慣れるので苦痛ではなく楽になりますよね。最初のうちは自転車にいきなり乗れなかったように大変なこともありますが一度乗り越えてしまえば、むしろ愛おしい行為になりえます。
なぜ著者の若林正恭は違和感を保持して深い思考を続けているのでしょうか。それは本の中にある「自分の命よりも大切なものを見つけたい」という彼の言葉が答えかもしれません。
おすすめ本二冊目
『「空気」の研究』
(山本七平 文藝春秋)
日々一緒に時間を共にしている家族や仕事仲間との間には常に空気が流れ、空気を読むことで穏やかな日々を選ぶことができます。しかしながら空気を読みすぎると失っていくものがあります。それが「違和感」や「モヤモヤ」です。
自分の中に芽生えた違和感は、あたなにとって貴重な直感です。この芽を摘むと自分の価値基準が崩壊してしまい、常にあなたの価値基準は自分の外側にある空気によって決定されてしまいます。しばしば「自分が何をしたいのか分からない」という言葉を聞くことがありますよね。それは周りや世間の空気を読み続けて来た人の結果かもしれないということです。
違和感が芽生えたということは直感が「本来自分の中で進みたかった方向とは別の道に進む可能性があるよ〜!」と教えてくれているアラートのようなもので、それを何度も無視すると直感が拗ねてしまって「もうアラート出さなくていいや〜」と違和感が芽生えなくなります。
山本七平は「水を差す」という行為が空気に対しても必要であると説いています。空気に水を差すということは周りから空気が読めない人だと思われることもあるでしょうし、傷つくこともあるでしょう。それでも水を差して直感のアラートを大切にすることができれば空気の拘束から脱却して少なくとも自分が周りに空気の圧力をかけなくなる最初の一歩となります。その一歩の積み重ねによって自分の本当の価値基準が見えてくるはずです。
おすすめ本三冊目
『7つの習慣』
(スティーブン・R・コヴィー キングベアー出版)
自分って一体どういう人間なのだろう? とたまに思うことがありますよね。
あなたという人間は生まれてから現在までにあなたが過ごしてきた習慣によって構成されています。要は習慣における経験の積み重ねがあなたの価値基準をつくりあげているということになります。そのため、あなたが人生で何かの選択に迷ったとき、これまで培ってきた価値基準によって選択がなされるので「習慣」があなたの生き方を決定付けているといえます。
変化を起こそうと行動してきた人は、過去の習慣においてもそのような経験をしてきた可能性が高く、逆に行動を起こすことに不安を感じている人は過去の習慣において物怖じする辛い体験をしている可能性があります。
つまり自分を変えたいと思っている場合、毎日の習慣をガラッと変えることが何よりの近道になります。違和感を大切にすることや、水を差せるようになることも習慣次第ですね。
そして地域も習慣という構成要素が重要になってきます。現状の地域は習慣に沿って成り立っているわけなので地域に変化が必要だと感じたならば、地域の習慣をどのように変化させるのかが鍵となります。
「7つの習慣」が未だに世界的ベストセラーになっている理由は、まさに習慣が人生において何よりも重要であることを明らかにしたからだと思います。
最後のまとめとしてお伝えしたいことは「他人を変えることはできない」という言葉をよく耳にしますが、環境や習慣を見直すことで自分も他者もひとりでに変わっていくことがありますし、そちらのほうが本質的な変化であるということです。
ぜひそれぞれの本を手に取ってみて、違和感と習慣と向き直してみてはいかがでしょうか。
– INFORMATION –
地域の未来をつくる
コミュニティ・オーガナイジングの教室 第9期