5月に入る頃、ハートの形をした濃い緑色の葉っぱに白くかわいいお花がついたドクダミが各地で顔を出します。独特の強い香りと繁殖力の強さから、どちらかというと嫌われる傾向にあり、わたしの自宅の周りでも、出始めた早々いつのまにか刈られてしまうこともしばしば。
しかしドクダミは、気がつくとまたすぐにお花が顔を出し始めます。かわいさの反面、生きる強さとたくましさを持ち合わせたドクダミは、10種類以上の効能が”十薬”と呼ばれることもある身近な薬草。特にお花には肌を整える成分があるんだとか。
草刈りする前に、夏を快適に過ごすための「虫除けスプレー」をつくってみましょう。
つくり方
ドクダミの花を摘む
できれば排気ガスなどの影響を受けてなさそうなところで、茶色くなっていない、白く元気なドクダミのお花を摘みます。葉っぱが一緒についてくることもありますが、あまり気にしなくて大丈夫です。
無理せず、自分が扱いやすい量を摘むのが一番です。目安としては、大人が両手を広げた上にふわっと乗る程度でしょうか。300〜400ml容量サイズのガラス瓶がちょうどいいサイズになると思います。
アルコールに漬ける
洗って水気を切ったドクダミをガラス容器に入れ、ウォッカやホワイトリカーなど度数35度以上(※)のアルコールをお花がかぶるまで注ぎます。蓋をして日陰に置いておきましょう。液体が茶色くなればドクダミのエキスが移った証拠。だいたい3〜4週間ほどで薄めの麦茶くらいの色になるはずです。ちなみにエキスが移ったアルコールには、ドクダミの香りはほとんど感じられません。
(※)直射日光が当たらない場所で、かつ、1〜2年を目安に使い切るようであれば、アルコール25度の焼酎などでも大丈夫です。
いろいろな使用例
スプレーボトルに入れる
できたエキスは、アルコール対応のスプレーボトルに移し入れて(※)、虫除けとして肌や服にスプレーして使います。手で塗りこむようにつけることで効果は増し、また、一度手のひらにスプレーすれば顔まわりや髪の毛などにもつけやすくなります。汗を掻くと流れやすいので、屋外では2〜3時間を目安に付け直しましょう。
(※)100均などのスプレーボトルは物によってアルコール非対応なので使用前に確認しましょう。また、もしもアレルギーなどが心配の場合、目立たない場所で試したり、水で薄めて使うなど、ご注意ください。
虫刺され「後」にも
基本的には虫除けですが、アルコールとドクダミの消炎作用によって、虫刺された後に付けてもかゆみが落ち着きます。
他のハーブと混ぜて
ドクダミだけでも効果が高いですが、同じく虫除け効果があるとされる香り高いクローブを足すのもオススメです。食用スパイスとしてホールの状態で販売されているクローブを加え、丸3日ほど漬け込むとエキスが出ます。グンと虫除け効果が高まりますよ。
クローブは海外でも防虫(蚊というよりクモやゴキブリなど)効果があるとされているため、排水溝や勝手口などにスプレーすることで虫が顔を出すことも抑えられます。
また、最近はホームセンターなどで虫除け草として苗も見かけるようになったシトロネラやゼラニウムといったハーブも効果的です。ドクダミ同様にエキスを抽出するのも楽しいですが、市販のエッセンシャルオイルを3〜5滴ずつくらい足し入れると、虫除け効果が一層高まります。
香りづけや質感も楽しむ
ハッカオイルを1〜2滴足して清涼感を出したり、グリセリンを15〜20mlほど足して化粧水のようなとろみの質感に変えるなど、自分にとって快適で使いやすい、好みのアレンジをして楽しみましょう。
強い薬ではないのであくまで虫を近寄らせないものになりますが、個人的にはドクダミ・クローブ・シトロネラ・ゼラニウムを全部混ぜた虫除けの効果を実感していますし、殺虫しないことにもまた天然素材の良さがあると思っています。
そして何よりも、今までは刈って捨てられていたものが活かせる喜び、これに尽きます。
一度この虫除けの効果を味わって以来、ドクダミが咲き出す季節が待ち遠しくもなりました。5月に咲いたドクダミが、蚊の増える時期に活かせるなんて、人の手が介在するとはいえ、タイミングがぴったり合う自然の成り立ちに感動すら覚えるのです。
身近にある、まだ見知らぬ可能性を探り、楽しんでみるのはいかがでしょうか。
(編集: スズキコウタ)