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エコでオシャレは当たり前。バンコク発、コンテナでつくられた自動車ディーラー「Muangthongthani Carcare」から考えるコンテナハウスの可能性

「コンテナ」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか? 貨物船に積まれているものや、貸し倉庫などでしょうか。

最近は、物を保管するという本来の用途以外に、カフェやガレージをつくるための建築資材としても、注目を集めています。

日本でもおしゃれなカフェや、エコな建築をするべく活用している事例はありますが、木材やコンクリートではなくて、わざわざコンテナを用いる理由とは?

今回は、タイの街角に建設された、コンテナでできた複合施設をご紹介するとともに、コンテナ建築の可能性について考えてみます。

バンコクの郊外にある複合施設「Muangthongthani Carcare」は、輸送に用いられる海上用コンテナを再利用してつくられています。3階建ての施設の1階には自動車販売店があり、現在は空室となっているものの、2階はレストランとして、3階はオフィスとして利用できるスペースになっています。

オーナーは、施設の1階にある自動車ディーラー。ビジネス拡大のために新しい販売店建設の話を持ちかけたのは、タイの設計事務所「Archimontage Design Fields Sophisticated」でした。

街中で見る、一般的な自動車販売店は、コンクリートの壁や柱に大きなガラスが張られているイメージが強いと思います。なぜコンテナを選んだのでしょうか?

「Archimontage Design Fields Sophisticated」がコンテナを利用した理由は2つあります。

一つは土地の有効活用のためです。もともとこの土地は300m²ほどしかなく、自動車のショールームをつくるには狭く、細長い土地でした。直方体のコンテナを使うことで、コンパクトながらも広々とした空間を確保できたのです。

二つめの理由は、自然光を最大限に取り入れるためです。コンテナは積み木のように組み立てていけるので、より簡単に、理想的な形をつくることができます。

また、海上用コンテナは中古のものが多く出回っており、安く手に入るので、コストパフォーマンスも良くなります。デザイン性や話題性、環境性だけでなく、機能性を重視した結果として、「Archimontage Design Fields Sophisticated」はコンテナを使うことを選んだのです。

もっと日本でも広まっていい? コンテナハウスの可能性

日本でも、東日本大震災後にコンテナハウスが仮設住宅として用いられ、話題になりました。

例えば、宮城県女川町にコンテナを用いてつくられた、3階建ての仮説住宅。コンテナ自体が丈夫で耐久性が高いことに加え、その組み立ての手軽さを活かして、平屋が一般的な仮設住宅を多層化したことで、平地の少ない女川町でも戸数を確保することができました。

さらに、窓やドアなどはあらかじめ工場で加工して、現地ではコンテナを積み上げるだけにするという工夫をしたことで、職人不足の問題を解決し、短期間の工事を実現しました。

多層化や、組み立ての手軽さは、コンテナならではの長所といえるでしょう。災害時はもちろん、ふだん暮らす家を建てる際にも、こうした特長は役立ちそうです。

見た目におしゃれなだけでなく、機能性にも優れたコンテナハウス。私は、もっと日本でも、海外ほどの広がりを見せていいのではないかと思うんです。

海外ほどの広がりが日本で実現していない1番の理由は、法規制にあります。

今回紹介したタイの施設は、貨物の運搬に使われていた「海上用コンテナ」を再利用していました。しかし日本では、耐久性・耐震性の観点から、海上用コンテナを住居や店舗として使うことが一般的には認められていません。

そのため、日本国内のコンテナハウスには、柱や梁などで強度が高くなるようにつくられた「建築用コンテナ」が使われています。中古が多く出回っている海上用に比べて、建築用は建築資材としてつくられるので、値段も高くなってしまうのです。

また、遮音・断熱・結露などに対する不安もあります。こちらについては、きちんと対策をすれば問題はないそうですが、コンテナハウスが身近にないため、ネガティブなイメージがなかなか払拭できないという課題もあるようです。

コンテナハウスのさらなる普及のためには、正しい情報を広めて悪いイメージを払拭すること、中古の海上用コンテナの耐久性を高めるための技術を開発すること、などが必要でしょう。

災害時のシェルターとして使えたり、子ども部屋の増築などのライフステージに合わせたリフォームが手軽にできたりと、他の住宅にはない特長をもったコンテナハウス。
家やお店を建てるときの選択肢として、覚えておいて損はないのではないでしょうか? ひょっとしたら、あなたの理想を実現する手段になるかもしれませんよ。

[Via inhabitat, Architizer, LIFULL Home’s PRESS]

(Text: 橋口創吾)
(編集: スズキコウタ)