12/19開催!「WEBメディアと編集、その先にある仕事。」

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「地域で生きるってなんだろう?」を考える2泊3日。ソーシャルデザインキャンプ@西粟倉に参加してみました。

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わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

地域で暮らす。忙しく生活する中で、一度は憧れたことはありませんか?

最近では「移住」や「田舎暮らし」と検索すると様々な記事がヒットします。

地域暮らしは自然に溢れて食材も採れたて、家賃も今よりぐっと下がるみたい…。
何となく憧れはあるけど、実際はどんな暮らしなの? 地域に仕事はあるの…?
仕事がないから、自分でつくらなきゃいけないって言うけど、どうやって?

いろんな疑問がありますが、そんな「地域で生きる」ことを体験して学ぶキャンプがあったらわくわくしませんか?
 
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そこでグリーンズでは、様々な地域の取材をしてきた経験を元に、ソーシャルデザインキャンプを開催しました。それは、仕事と暮らしの側面から「地域で生きる」を考える2泊3日のキャンプです。

今回舞台となった岡山県西粟倉は、人口約1,500人、面積の95%を山林が占める地方都市。しかし、ここ数年で都市部から移住・起業し活躍する人の話が複数あり、greenz.jpでも度々取材に訪れ、注目している地域です。

ソーシャルデザインキャンプって何するの?

「ソーシャルデザインキャンプ」が行われたのは、2015年12月。プログラムには、西粟倉で活躍する方々5名のレクチャー、暮らしコース、仕事コースに分かれてのワークショップ、参加者がつながるアフターパーティも。盛りだくさんの2泊3日となりました。

実際のキャンプではどの様な学びと体験があったのでしょうか?

都会を愛する、元greenz.jp編集アシスタント・なみっきーこと並木香菜子が、写真とレクチャー内容を元にレポートしたいと思います!

まずは人が集まる場所へ

最初に向かったのは移住、起業支援事業や、木材開講流通事業を行っている、「森の学校」です。こちらは、かつての「旧影石小学校」をリノベーションした施設で、いくつかの会社が入るシェアオフィスとしても機能しています。
 
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程よくリノベーションされた教室を蒔ストーブが温めます。

株式会社 西粟倉・森の学校代表を務める牧大介さんは2008年から続く様々な取り組みについて、「とにかく西粟倉に人を増やす努力を大真面目にやってきた」と語ります。
 
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牧さん 地域には仕事がない、とよく聞きますし言われます。しかし、地域には仕事がないのではなくて、仕事をつくりだす人がいなかったんだ、と西粟倉にきて実感できました。

とにかく地域で本気で仕事をつくる人が増えてほしくて、定住を前提としない、起業型の移住支援プログラムの企画や、西粟倉ツアーを開催したり支援活動を行ってきました。結果、ローカルベンチャーは13社でき、その売上は8億円規模へ。更に雇用は117人増え、移住者は100人を超えました。

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森の学校のウェブサイトには、挑戦者たちのインタビューが掲載されています。

牧さん 西粟倉では2007年頃から、人件費を負担してでもゼロから起業する人の支援も行ってきました。(ローカルベンチャースクール)「そんなのうまくいくの?」と言われることもしょっちゅうですが、何とかなるようにみんなで頑張っています。

私の実感として、地域には仕事を始める余白がたくさんあると思いますね。そして西粟倉は、提案を受け入れてくれて、やりたいことをやらせてくれる場所です。地域にきて学ぶだけでは意味がないので、なんかやってみよう! と行動する人が増えてくれたらうれしいですね。

牧さんのトーク中には何度も「その人がやりたいこと」「とにかくやってみる」という言葉がでてきました。そして地域に関心が高まっている状況について「地域だからこそやりたい仕事ができるからじゃないか?」と考察していたこともとても印象的でした。

地域でゼロから仕事をつくる

牧さんと同じく森の学校の代表を務める井上さんは、東京で牧さんにスカウト(通称:人狩り)に遭い、2009年に西粟倉にやってきました。「全てが初めてのことだらけでした」と当時を振り返る井上さんには、移住後にゼロからどんな仕事をつくってきたのか? 話を伺いました。
 
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井上さん 移住当初は森の学校で元々計画されていた、西粟倉の木材を使用したモデルハウスをつくったり、空き工場をリノベーションして木材の加工工場をつくりました。

今まで西粟倉で林業といえば丸太を出荷することでした。丸太にはランクが付けられ、商品として流通しない木材は燃やしてしまうのが普通でした。しかし、品質が悪いと判断される木材でもアイデア次第で売れるんじゃないか? という視点の元、とにかく良い商品をつくってお客さんに直接木を買ってもらえる流通をつくりたい、と考えるようになりました。

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森の学校体育館には井上さんが担当したモデルハウスの模型があり、中に入ることができます。

井上さん そうして、通常なら流通しない木材を使ったわりばしや置くだけのフローリング「ユカハリ・タイル」といった商品を開発し、今でも森の学校いちのヒット商品となっています。更に、仕入れる木材も流通価格よりも高く購入し、且つシンプルな流通に再設計することで、通常の流通よりも約2割程度の利益を多く還元することで、西粟倉の林業者にも貢献できる仕組みにしています。

西粟倉ではとにかく、自分がこうだ! と思う小さなチャレンジを続けてきましたね。

もちろん失敗したこともあります。しかし、例え反対されても3年くらい言い続けること、思うことをとにかくやり続けることが、自分の暮らしと仕事を手にいれることにつながるんじゃないかと思います。

牧さんと井上さんは移住者でありながらゼロから事業を興し、西粟倉へ人が集まる基盤をつくってきました。そして「場」ができたことで徐々に人が集まりだしました。

次に紹介する家具職人の大島正幸さんもその一人。西粟倉へは百年の森構想と水が美味しいこと、人口が1500人しかいない、ということに惹かれてやってきたと言います。
 
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木工房ようびの代表を務める大島さんは、2009年に西粟倉へ移住、28万5000円の資本金で家具の製作・販売事業を始めました。大島さんには、人と森が豊かに循環するために行っている2つの取り組みについてお話を伺いました。

大島さん 1つ目の取り組みは、日本の素材でつくった家具を適正な価格で流通させることです。通常、家具はブナや楢を使うのですが、日本の森はヒノキとスギで成り立っています。 実はヒノキやスギは素材が柔らかいため、家具に使うのは難しいんです。なので新しいチャレンジとして、ヒノキで家具をつくろうと決意しました。

そしてヒノキで家具をつくっても壊れないノウハウをつくるため、4年半で150種類の家具をつくりました。その結果、ヒノキでも家具はつくれることがわかりました。

2つ目の取り組みは、とにかく良い家具をつくれる人を増やすことです。

そこでまず、基本口伝で伝えられる技術をマニュアル化しました。更に、家具職人が一人前になるまで通常6年かかると言われているのですが、ようびでは3年で職人を育てることができるカリキュラムを成立させました。

僕がこの2つの取り組みに力を入れるのは、日本の資源を利用して暮らしが豊かになる人が増えてほしいからです。そして資源が適正な価格で流通することで、売り上げを森が整うことに使える。結果として雇用が生まれ潤う会社がある、そんな循環ができたら素晴らしい! と思っているので僕は今日もようびで働いています。

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ようびでは家具以外にもお皿や塵取り等の日用雑貨も販売しています。

2015年からは家具の輸出販売も開始し、最近では海外から買い付けにくる人がいる程注目されているようび。その原点には、家具で生活の豊かな時間を過ごして欲しい、という職人としての強い想いがありました。

(※2016年1月23日、木工房ようびの工房が火事で全焼するという事故がありました。こちらからどうぞご支援よろしくお願いします…!)

西粟倉には、大島さんの他にも技術を活かして働くデザイナーさんがいます。
デザイン事務所nottuo代表の鈴木宏平さんは東京でWEBを中心にデザインの仕事をしていましたが、3.11の震災をきっかけに家族で西粟倉に移住しました。

「地域でもデザインで食べていけるの?」

移住するまで鈴木さんは、デザインといえば東京! という気持ちがあったそうですが、果たして地域でもデザイン業は成り立つのでしょうか?
 
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会場は鈴木さんが運営に携わった、古民家をリノベーションした難波邸です。

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鈴木さん 結論から言いますと、地域でもデザインで食べていけます!
そう、今では胸を張って言えますが、東京からの移住後は田舎暮らしなのにデジタルデータしか扱えない虚無感に襲われたりもしました(笑)

しかし、妻が草木染めを始めたり、僕自身も中小企業のシャチョー(※鈴木さんは地域の社長を愛着を込めて岡山の発音で表現します。)と仕事をしたことをきっかけにデザインが一気に楽しくなりました。東京で下請けで仕事をしていた時と違って、結果も喜びもダイレクトにくるのでやりがいが全然違うんですよね。

そうするとデザインがどんどん楽しくなって、仕事も喜んでもらえることでシャチョーの知り合いを紹介してもらえることにつながりました。それに伴ってか、売上も東京の頃に比べて4倍となりました。

報酬もお金に限らず、ロゴデザインの対価として2年間温泉入り放題券や、Webページをつくってくれたら床材をあげますよ、といった「物技交換」が成り立ったりするのも地域の面白いところですね。他にも、整骨院のグラフィックデザインと引き換えに施述を無料でしてもらったり、お金を介さない価値の等価交換が成り立つのは地域ならではだなぁと思います。

今までご紹介した通り、西粟倉には移住してゼロから事業を興す人もいれば、元々磨いていた技術を地域で活かす人もいました。そして時には、地域に移住した事で今までの価値観ががらりと変わることもあるようです。

「税金を払うのが楽しいんですよね。」

30歳の時、岡山県に移住をした井筒耕平さんですが、西粟倉でバイオマスエネルギー事業を始めたことで、税金を払うのが楽しくなったんだそうです。それは一体、どういうことなんでしょうか?
 
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井筒さん 元湯の温泉を沸かすために利用している、薪を利用したバイオマスエネルギーを使うと、4つの利点があります。それは、

①燃料代が石油に比べて安くなる
②化石燃料の購入を減らすことで、地域から資金の流出を減らす。
③C材といわれる市場に流通できない木材を高めに仕入れることで地元の森林・林業に貢献できる
④CO2が減る、
というもの。

さらに、薪を燃やした灰は肥料や掃除に使ったりもできます。そんな利点のたくさんあるバイオマスエネルギーですが、使うためには村と行政の協力も欠かすことができません。

そして行政に対しては、入湯税や法人税を支払います。しかし、この払った税金は村が喜んでくれるためのエネルギーとして再び村内で循環することになるんです。西粟倉にきてバイオマスエネルギー事業を始めたことで、村の協働関係とお金の循環が目に見えるようになり、税金を払うのが楽しくなったんですよね。

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元湯の外観。バイオマスエネルギーで温める温泉の他に、美味しいコーヒーが飲めるカフェもあります。

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元湯の温泉暖める薪ボイラーは新潟より取り寄せたものだそう。

一方、元湯では、油搾り体験,タップダンス、足つぼ、ヨガ教室、更にはお年寄りのための介護予防教室の開催など、温泉以外にも人が気軽に集まれる環境があります。

そこにはこんな想いが。

井筒さん 移住の鍵はとにかくハングリーに事業を成功させることですし、僕もそう思います。

しかし元湯の女将が「移住者は挑戦者じゃなきゃいけないの? 普通の人も居させてほしい」と言って、はっ! としたのですが、それもそうだよな、とも思うんです。

なので、挑戦者じゃなくても、やりたいことがなくても居てもいい西粟倉、というのを僕らは目指しています。

私は井筒さんの話を聞いて、女将の言葉にはっとした後、とてもほっとしました。

今までの講師の方の話を聞くと、移住後はまず仕事を始めないといけない気がしていたのですが、みんながみんなできるわけでもないと思います。なのでやりたいことがまだわからない人が、安心していれる場所が地域にあることはとても嬉しいことだと思います。
 
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元湯に入って正面、女将のことば。

西粟倉には豊かな森の資源があり、資源をエネルギー源や床材や家具にする。それで得たお金を森を整えることに使い、仕事と資源がぐるぐる循環する環境があることが実感できました。そして豊かな循環の周りには人が集まり、更に環境が豊かになることにつながっていく。

様々な角度で学びのあった講師の方のお話を聞いた後は、それぞれのコースに分かれて、自分はどんな暮らし・仕事がしたいんだろう? とじっくり考えました。

暮らしコース

暮らしコースは「自然とも人も、地域ともつながる暮らし」をデザインするワークショップを行いました。講師である井筒耕平さんの暮らしと仕事を見学させていただいたり、薪を使った温泉の釜炊き、ご飯炊きなど、自然と暮らしのつながりを体験しました。

また、参加者それぞれの暮らしの理想を考えたり、風土、自然とのつながり、人との活かし合う関係性をどのようにつくれるか? 暮らしのデザインワークショップなども。
 
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材木所にはC材と呼ばれる間伐材がたくさん集まります。C材は商品として流通できない代わりに、薪ボイラーの資源として活用されます。

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機械を使っての薪割り体験! 土台に乗せるだけでたちまち真っ二つに割れます。

夜は「理想の暮らしについて」をテーマに、今日から始められることはなんだろう? 3年後自分が取材された記事を書いてみる、といったワークショップも行いました。
 
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ワークショップを始める前に「今どんな気持ち?」を確認。まずは自分とつながります。

仕事コース

仕事コースは、「地域外でお金をもらう仕事」「地域にお金を落としてもらう仕事」「地域内のお金を循環させる」を考える3つのチームに分かれ、チーム毎に資金調達方法も含め、事業を興こす地域、地域で仕事をつくるプランを具体的に考えました。
 
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地図を使って地理を参考にしたり、地域おこし協力隊での経験をシェアしたり、白熱した時間が続きました。

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チームには1人ずつファシリテーターが付き、考えたプランをより具体的にするためのサポートが入ります。

あっという間の最終日!

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最終日はチーム毎に3日間で学んだ内容を発表し、地元のお母さんたちがつくってくれた美味しいご飯で打ち上げパーティー! 学びと美味しいご飯だらけのキャンプは幕を下ろしました。
 
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何を食べてもおいしい! 地域で取れた素材ごはん

ソーシャルデザインキャンプは今回が初めての試みでしたが、とにかく学びと体験がぎゅぎゅっと詰まった3日間となりました。最終日の発表も、笑いあり・深い頷きありの時間となり、最後の最後までメモ帳が手放せませんでした。

参加者の方からも「野生に帰りたい」「事業プランへの指摘が厳しくて刺激的」「予想を超えて人生がテーマだった」といった感想がありました。

2回目のソーシャルデザインキャンプは3月25日(金)〜3月27日(日)、舞台を長野県小布施に移して開催されました。(告知記事はこちらから読めます。)

西粟倉も小布施も、地域の資源を活かして様々な活動が行われていて、地域の中の人はもちろん、外から来る人にも開かれた場所になっています。

地域の暮らしや仕事について何かピン! とくるものがある方は是非訪れてみて下さいね。

(Text: 並木香菜子)