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タイニーハウス、食育菜園、地産地消電力…映像作家ベン・マツナガさんに聞く、頼まれごとから始まる未来のつくり方

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Photo by Andrew Morrison

今、わたしたちはどこにいても、テレビやPC、スマートフォンで様々な映像を見ることができます。映画やドキュメンタリーを見て、気持ちが救われたり、共感したり、何かを始めたくなったり。大げさに言うならば、人生を変えてしまうきっかけになるほど、映像には大きな力がありますよね。

これからご紹介する「未来シネマ」は、映画やドキュメンタリーをわたしたちに届けてくれる、映像のつくり手によるプロジェクトです。

未来シネマが手がける作品には共通点があります。

それは、「未来を良くするお手伝い」をする作品だということ。

今回は、「未来シネマ」ベン・マツナガさんに、映像で伝えることから始まる未来のつくり方について伺いました。
 
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ベン・マツナガ
千葉大学・工学部画像工学科を卒業後、スターウォーズの世界に憧れてIMAGICAに入社。ロサンゼルスにてVFXのテクニカル・ディレクターとして映画つくりに携わる。6年間の勤務を経て、帰国しフリーに独立。3.11の震災をきっかけに、映像を通じてより良い社会つくりに貢献することを目的に「未来シネマ」を立ち上げる。現在、フリーの映像プロデューサー・ディレクターとして活動する一方、「未来シネマ」として映像をつくっている。

映像を通じて、人と人、地域、今と未来をつなぐ「未来シネマ」

未来シネマは、「未来を良くするお手伝い」をテーマに、様々な事柄や人を被写体にした映像作品をつくるプロジェクト。2013年、ベンさんのマイプロジェクトとして始動しました。

まずは、未来シネマが手がけた作品をひとつご紹介します。昨年、国際有機農業映画祭にて上映されたドキュメンタリー。東京都多摩市立愛和小学校での取り組み、エディブルスクールヤードの映像です。
 

畑から、キッチンから食を学ぶことで、子どもたちが共感と思いやり、忍耐と自立心を学ぶことを目的とした「食育菜園」、エディブルスクールヤード。愛和小学校での取り組みを3分にまとめたこの映像は、その魅力と価値を存分に伝えてくれています。

また、以前greenz.jpでもご紹介したタイニーハウスビルダー・竹内友一さんが、タイニーハウスの魅力を伝える次のステップとしてロードムービー「シンプルライフ・小さな家と大きな暮らし」を制作するにあたり、未来シネマがその映像を手がけることに。

現在公開されているダイジェスト版ショートムービーからは、タイニーハウスの魅力を伝えるだけではなく、シンプルに暮らすことの本当の意味を気づかせてくれる、そんな映像の世界が広がっています。
 
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今年5月、モーションギャラリーにて、ロードムービーの制作・公開へのファンディングを達成し、現在制作が進んでいる「シンプライフ・小さな家と大きな暮らし」。現地の撮影から編集まで「未来シネマ」が担当。

他にも、地域の小さなお祭りを記録した作品、新しいライフスタイルや地域の取り組みにまつわるストーリー、素朴ながらも暮らしや幸せの本質に寄り添ったドキュメンタリーなど、「未来シネマ」に登場するのは、私たちの日常ではなかなか垣間見ることのできない世界。映像に触れることで、新しい何かに出会ったり、感じたりすることができるところが大きな魅力です。
 
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小田原市根府川駅のそばで開催される”かしま踊り”を記録した映像作品。地域で廃校となった旧片浦中学校の校庭で野外上映された。
(c) Ben matsunaga

完成した映像は、ウェブで見ることができますが、地域の人を集めた上映会にて公開されることも。そこに登場する人たちが地域の人とつながるきっかけになることもあるそうです。
 
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”片浦・食とエネルギーの地産地消プロジェクト”の一環として、片浦電力が子どもたちと共に太陽光発電システムをつくり、そのオフグリッドした電気での上映会風景。
(c) Ben matsunaga

つくるだけではなく、映像を通じて、人と人、地域、今と未来をつないでいくこと。それが「未来シネマ」プロジェクトの目的です。

たくさんのシェアはいらない。気づきが生まれる架け橋となる映像を。

これまで、数々のドキュメンタリーや映像を手がけてきた未来シネマですが、その背景にはどんな想いあるのでしょうか。映像制作のカギとなる被写体の選択基準について、ベンさんはこう語ります。
 
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「未来シネマ」ベン・マツナガさん

基準は、自分の想いに従ってまっすぐ活動をしている、ということです。

物事には良いこと悪いことがあると思うけど、僕は「良いことだけを見せよう」とは思っていなくて。かといって、悪い部分を敢えて表に出そうとも思っていません。撮りたい人や物事が伝えるべき大切なことを映像にして、届けたいと思っています。

「未来シネマ」の映像は、基本的にドキュメンタリー。当然のことながら、そこに映し出されるのは美しい世界だけではなく、どうしようもない現実に突き当たることもあります。

たとえば、ロードムービー「シンプルライフ・小さな家と大きな暮らし」の撮影でアメリカに行った際の、こんなエピソードを聞かせてくださいました。

シンプルライフに憧れて、いざ実践しようとしても結果として成功しなかったり、幸せではなかったり、そんな事例をいくつも見てきました。幸せな暮らしは、単に家を小さくするだけでは手には入らないんです。

根本として、どんな活動をしていて、どんな気持ちで生きていると人生が良くなるのか、未来がより良くなるのか。それらが垣間見える瞬間を作品として届けることが、未来シネマの役割だと思っています。

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神奈川県真鶴のアトリエで手製本、活版印刷などを用いた本や紙のものを制作している夫婦と家族のユニット”Bonami”のドキュメンタリー作品を撮るベンさん。日常の何気ない出会いが生む奇跡のような物語をベンさんの目線で紡いだストーリー。

未来シネマの作品を手がけるとき、ベンさんの心に常にあるもの、それは「幸せの方程式」というキーワードです。

”幸せになるための方程式に、答えはありませんよね。僕自身もその答えはわかりませんが、僕が興味を持つ被写体には、幸せに生きるためのヒントが隠されていると思っています。それを映像にすることで、誰かの気づきのきっかけになればと思います。

映像や動画が簡単にシェアできる時代。でも未来シネマの作品の目的は、たくさんシェアされることではありません。

その映像を通じて人や地域の関係がつながったり、気づきが生まれたりする架け橋になればと思うんです。そんな作品づくりをしています。

「頼まれごと」から始まった未来づくり 

2年前、「未来が良くなるためのお手伝い」というコンセプトを携えてスタートした「未来シネマ」ですが、実はベンさんは、より良い未来づくりや地域の課題への取り組みなど、「以前は全く興味がなかった」のだそうです。

6年間ロスで映画づくりに携わっていて、やっと自分の作品を手がける準備をしていた矢先に9.11同時多発テロが起こったんです。計画は中止、帰国して独立してからは、商業的な映像制作をしていました。

帰国後も、映画や商品PRの映像制作を生業とする一方で、食や農業への関心が少しずつ芽生えてきたというベンさん。「本当に豊かな暮らしとは?」「より良い未来とは?」という問いが浮かび、商業的な価値観で映像をつくることに違和感を覚えるようになっていた頃、東日本大震災が発生しました。

鎌倉に住むベンさんは、仲間とともに南相馬でのボランティアに参加しました。もともと記録を撮ることは考えていなかったものの、現地の状況を目の当たりにし、「この記録を持ち帰ることが何かにつながるかもしれない」と、友人のハンディカムカメラで現地の人たちの了承を得ながら撮影。報告会にて上映されました。

テレビには映ることのない現地の状況を伝えたその映像は、「まだまだ自分たちにできることがある」と多くの声を生み、人々が動き出すきっかけをつくることになりました。
 
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南相馬にて撮影された当時の画像 (c)Ben matsunaga

仕事としてだけではなく、社会や未来に貢献する方法として映像をつくることを意識し始めたベンさんに、もうひとつ「未来シネマ」を立ち上げるに至った、ある「頼まれごと」が舞い込みます。

友人が住んでいる地域で、土地開発の計画が打ち出されたんです。自然豊かな場所で、違法性もあったことから計画に反対する動きが生まれました。そんな時、友人から、この計画に反対する思いを伝えるための映像を撮ってほしいと頼まれました。

ベンさんは9分ほどの映像を制作。インターネットで公開すると、すぐに100を超える再生回数となりました。土地開発は再度議論され、結果として中止。今でもそこは緑が多く生い茂る豊かな場所として残っています。

自分の映像で中止になったとは思ってないんですが(笑) でも、とても感謝されて、素直に嬉しかったんです。こうやって映像を撮ることで、自分にも良い未来をつくる手伝いができるんじゃないかなと思ったんですね。

映像をもっと活用して、より良い未来をつくっている人たちや事柄を紹介すれば、より良い未来づくりの手伝いができるのかもしれない。そう強く想ったとき、「未来シネマ」という言葉が浮かんできたそうです。
 
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不当な宅地開発に反対する地域住民の思いを綴ったショートドキュメンタリー。未来シネマとして活動するきっかけとなった作品 (c)Ben matsunaga

それ以来、フリーランスで映像制作を手がける傍ら、「未来シネマ」として、いくつもの取り組みや実践者を撮り続けてきました。2015年7月現在、未来シネマが手がけた映像は、全8本。これからも数々の「幸せの方程式」で、私たちに気づきのきっかけを与えてくれることでしょう。

自分にできることで、それぞれの未来づくりを。

映像をつくり、上映会をすることで、顔と顔の見える関係が生まれ、何かが動き出す。そんなプロセスとゴールを見守ってきたベンさんに、数々の未来づくりの現場を目の当たりにして、思うことを伺ってみました。

タイニーハウスやパーマカルチャー、被写体を通じて学ぶことは本当にたくさんあります。それが、自分へのご褒美だと思ってます。

でも、例えば、パーマカルチャーでがっつり農業をやるのは、やっぱり自分にはむいてないなって気づきもあったり(笑) 僕には、映像をつくることがあってるから、映像で伝えたいと思うんです。

「たとえ実践者でなくても、伝えることもまた、未来をつくる手伝いになる」。そう話すベンさんの言葉には、「小さなことでいい、誰でもできることがある」というメッセージが込められているような気がしました。
 
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最後に、「自分に何ができるかわからない」というあなたに、インタビューで印象的だったベンさんの言葉を贈ります。

頼まれたことをまずはやってみたらいいと思う。頼まれるっていうことは、あなたができそうだから頼まれたのだから。自分では気付かないかもしれないけど、頼まれたことがあなたのできることかもしれないから。

「頼まれごと」から自分のできる未来づくりに辿り着いたベンさん。未来をつくる、というと、なにか大それたことのように思うこともあるかもしれませんが、そのきっかけは、人からかけられた何気ない言葉の中にあるのかもしれません。

自分にできる未来づくり、そのヒントは未来シネマが生み出す映像の端々に散りばめられています。まずは気になったテーマから、未来シネマの作品を覗いてみませんか?

– INFORMATION –

 
未来シネマ・映像一覧
Bonami
https://vimeo.com/124199318

愛和小学校エディブルスクールヤード / 国際有機農業映画祭用3分ビデオ 2014
https://www.youtube.com/watch?v=iwrpiPkuXME

Welcome ! 食育菜園教室~Yes Garden~ / 国際有機農業映画祭用3分ビデオ 2012
https://www.youtube.com/watch?v=G5Bh9pkeKWc

片浦食とエネルギーの地産地消プロジェクト
https://www.youtube.com/watch?v=Ckvi0BdKMLY

小嶋歯科医院
https://www.youtube.com/watch?v=MS7DDP-SXDU

【タイニーハウス関係】
TINY HOUSE WORKSHOP JAPAN 2014
https://vimeo.com/119533812

simplife / traveling the west coast
https://vimeo.com/128745487

simplife / Time with Tammy & Logan
http://simp.life/movie/movies/tammylogan/