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パラグアイ大統領選の候補者を動かした、”名前がない”サッカー中継

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この世に生まれたのに、法的には存在しないことになっている子どもたちがいます。出生届が出されないままになっている子どもたちです。そんな子どもたちは、教育や福祉サービスが受けられません。そしてさらに、人身売買や児童労働などに巻き込まれるリスクも高くなります。

南米のパラグアイでは、1歳未満の24%もの子どもが、出生届が出されておらず、先住民では35%と、その割合はさらに高くなっていました。

すべての子どもたちが教育や福祉を受けられるように、ユニセフはこの問題をより多くの人に社会的な問題として考えてもらうことが必要だと考えました。その機会として利用したのが、大統領選のタイミングです。世論に働きかけ、大統領選の候補者たちに、この出生届の問題について行動を起こす意思を引き出そうとしたのです。

そのために実施したのが「NO NAME MATCH」です。南米の他の国と同じように、パラグアイでもサッカーは国民的な人気があるスポーツです。国民の注目が集まる、2014年のワールドカップ出場がかかったパラグアイ対ウルグアイ戦。その試合のときに、ユニセフはテレビ局2局とラジオ局4局に働きかけ、序盤、選手の名前がない生中継を行ったのです。


選手の名前の代わりに、背番号で実況中継されています。

どこかおかしい中継のあと、種明かしとしてメッセージがアナウンスされました。

その選手たちのように、私たちはみんな、名前と国籍が必要です。ところがパラグアイでは、4人に1の子どもが出生登録されていません。あなたの支持する大統領候補はこの問題をどう考えているのでしょう。ぜひ聞いてみてください。

このメッセージは約400万人ものパラグアイ人に届き、大統領選の候補者たちは、子どもたちに正式な身分証明を確保する意思を表明するとユニセフに約束することになりました。

いつもあるものを消す仕掛けで視聴者の注意を惹きつけ、メッセージを届ける。NGOと放送局の連携によるファインプレーが、奇跡のゴールを実現したんですね。

(翻訳協力:Mizuki Otani)