あなたは、壁にぶち当たったとき、あるいは孤立を感じたときに、何を頼りにして立ち直ろうとしますか? 友人と話す。趣味に没頭する。散歩に出かける。きっと人それぞれの方法があると思います。
そんななか今回ご紹介するのが、環境問題や社会的孤立から人びとや自然が回復し再生するために持続可能な農業に取り組んでいるコミュニティガーデン「Sol Haven(ソル・ヘイブン)」です。
「心を耕す」
Sol Havenの中心的な活動は、「心を耕す」と名付けられた12週間のプログラムです。メンタルヘルスに課題を抱える人々を対象に、以下のようなアクティビティを通じて、自然や他者、そして自分自身とのつながりを取り戻すことを目指します。
「母なる自然の癒しの力を借りて、孤立やメンタルヘルスなどで社会的に弱い立場にある大人たちが学び、成長し、暮らしをつくっていけるようサポートしています」と話すのは、創設者のSammuel Yisrael(サミュエル・イスラエル)さん。
プログラムを通じて参加者の自己表現を促し、新しいスキルの習得をサポート。同時に、持続可能な農業の実践を通じて、環境保護の意識も高めていきます。
「Sol Haven」の取り組みは、個人の成長にとどまりません。地域社会全体の幸福(ウェルビーイング)の向上も重要な目標としています。
参加するメンバーの特徴として、メンタルヘルス、虐待、または依存症との戦いという共通の経験があります。だからこそ、そんな彼らに深いつながりと共感をつくり体験してもらうことを大事にしているのだとか。
プログラムを通じて、参加者は平均して5人の新しい友人ができるといいます。これは、「Sol Haven」の提供するプログラムが社会的孤立の解消につながるだけでなく、ひとりひとりの自信の回復やコミュニティを広げることに貢献しているといえるでしょう。さらに、地域の人々が共通の目標に向かって力をあわせることで、コミュニティ全体の活力も高まります。
私たちも誰かの人生に変化をもたらしたい
同じく創設者のNatasha Caton(ナターシャ・ケイトン)さんは、実は、かつてホームレスを経験したことがあります。
暮らしが著しく困難な状況に陥った当時を思い返して、ナターシャさんは「暗い場所から救い出してくれた人たちの愛に触れ、暗い場所から救い出してくれた人たちの愛にこそ、人生を変える力がある、と知りました」といいます。
ナターシャさんは恩返しを誓い、数々のボランティアに励むように。「私たちも誰かの人生に変化をもたらしたいと思った」と話し、自然との触れ合いや地域コミュニティの力の大切さを身をもって感じているそうです。
彼らは使われなくなった農場や庭園を再生し、持続可能な農業を実践。さらに心身の健康をサポートするプログラムを提供することにより、新しいコミュニティをつくりあげたのです。
持続可能なパーマカルチャーガーデンを運営しながら、同時に人々の心身の健康と地域コミュニティの活性化を同時に走らせる。このように、関わる人たち全員が再生される「Sol Haven」は、2023年に「Lush Spring Prize Youth in Permaculture」を受賞。彼らの活動は、新しいモデルとしてイギリス国内外で注目を浴びるようになりました。
自然の中で人々がつながり、互いに支え合う。
そんな心を耕し、地域を育む彼らの活動は、まず「居場所づくり」として現代社会が直面する孤独や環境問題への一つの答えといえるかもしれません。
そんななか「Sol Haven」が一歩進んでいると感じるのが、関わる人びとが生気を取り戻していく機会をたくさんつくっていることです。人の心を癒やし再生する場はどうつくっていけるのか、私はひきつづき考えていきたいと思います。