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アップサイクルのスペシャリストになれる!?循環型社会づくりの生態系が育つ田村市の「粕ペシャリスト」とは

この求人のグリーンズジョブでの募集期間は2023年9月11日(月)〜2023月10月8日(日)です。
募集の詳細については記事末をご覧ください。

クラフトビールを軸に循環型社会づくりに取り組む「株式会社ホップジャパン(以下、ホップジャパン)」をきっかけとし、サステナブルな事業の生態系が生まれはじめている田村市。

そんなまちが、ビールづくりの過程で発生する廃棄物=粕に新しい価値を付与し、生まれ変わらせる「アップサイクルビジネス」に取り組む起業型地域おこし協力隊、通称「粕(かす)ぺシャリスト」を募集しています。

粕を活用した食品の開発・販売や飲食店の運営など、事業の可能性はさまざま。「食の循環」や「アップサイクル」というキーワードにピンと来たあなたには、バチンとハマる挑戦が待っているはずです。

10/5(木)にこの求人のオンライン説明会を開催します。
興味ある方はぜひご参加ください。

イベントの詳細・申し込みボタン

挑戦が息づく、自然ゆたかなまち

今回の求人の舞台は、福島県田村市。33,000人ほどが住む田村市は、福島県中央の阿武隈(あぶくま)高原に位置し、夏は比較的涼しく過ごせる一方で、冬でも雪が降ることの少ない土地柄ゆえに、住みやすい気候の土地です。

もともと5つの町村(滝根町、大越町、都路村、常葉町、船引町)が合併して生まれた自治体であり、エリアによって暮らしの風景が変わるのも特徴のひとつ。携帯の電波もおぼつかないような山間地もあれば、買い物や医療、学校などの生活に困らない利便性の高い地域もあります。

東京駅から新幹線と在来線をつかって2時間ほどというアクセスの良さですが、地域の7割程度が森で占められる土地柄、生活するための自家用車は欠かせません。

阿武隈高原は、福島県内に広がる自然ゆたかな高原地帯。美しい景観や多様な植物・動物が存在し、観光やレクリエーションが楽しめる場所として、県内外から多くの人々が訪れます

市の一部が福島第一原子力発電所から半径20キロ圏内に位置することから、東日本大震災と原発事故の影響を大きく受けた田村市。市の一部が警戒区域になったこともありましたが、2014年には避難指示が解除され、復興への道を歩んでいます。

加えて、他の地方と同じように、高齢化や進学、就労世代の流出による人口の減少といった課題にも直面していますが、そういった課題をバネに、仕事の創出や定住しやすい環境づくりに力を入れています。

田村市の基幹産業は、自然ゆたかな環境をいかした農林業ですが、空き店舗の活用など、これまで地域にはなかった新たな仕事の創出にも力を入れています。

その空気に惹かれ、活動的な人たちが地域に集まりはじめており、今回の取材では「田村市はこれからさらに面白くなっていくのではないか」という期待をじわじわと感じました。

特に興味深いのは、ホップジャパンが運営する「ホップガーデンブルワリー」をきっかけに、循環型社会を育む生態系が生まれはじめていること。まずは、ホップジャパン代表の本間誠(ほんま・まこと)さんに、その兆しについて話を聞きました。

ビール醸造を軸にした循環型テーマパークをつくる

今回粕のアップサイクルに取り組む起業家を募集するのは、ホップジャパンの存在があったからこそなのだそうです。

そんなホップジャパンが田村市で事業を始めたきっかけは、東日本大震災の影響で一時避難地区となり、ほぼ休眠状態となってしまっていた公共施設「グリーンパーク都路」内の建物を一部改修し、クラフトビール醸造所「ホップガーデンブルワリー」を開設したこと。

緑あふれるグリーンパーク都路。広大な敷地には、ホップガーデンブルワリーのほか、ビールの原料となるホップを栽培する農園、田村市が管理するオートキャンプ場を始め、アウトドアを楽しむスポットも多数備わっています

海外産のペレットホップをつかうのが一般的な日本では珍しい、自社栽培の地産ホップをつかったクラフトビールの醸造で、ファンを獲得しているホップジャパン。ですが、ホップジャパンが取り組んでいるのは、ブルワリーの経営だけではありません。ホップなどの原料の栽培に取り組む1次産業から、できあがった商品を届ける6次産業につなげていくサイクルを市内で実現し、循環型社会を生み出す事業を目指しているのです。

さらにホップジャパンが取り組んでいるのが、1次産業の一歩手前に「0次産業」を位置付けること。麦芽粕や食物残渣などを肥料や飼料としていかすことで、資源の再活用に取り組むことを「0次産業」と呼び、クラフトビール醸造を軸にした資源の循環を生み出す仕組みをつくっています。

ホップジャパンが考える循環のイメージ(提供:株式会社ホップジャパン)

本間さん ビール醸造の過程で出る麦芽粕には栄養がたっぷり残っていますが、通常は再活用されることなく、産業廃棄物としてお金をかけて処分されています。

ですがここでは、麦芽粕を畑の肥料や近くの牧場の飼料にすることで、1回の仕込みで出る200~300kgの粕を全て再活用できるようにしています。

ホップジャパン代表の本間さん

さらに本間さんは「0次産業」をいかした野菜づくりや畜産に加え、チーズなどの製造、それらの食材を活用したカフェ、地場産品の買い物ができる施設などをつくり、ビールをはじめとする食を入り口に、訪れた人に「食の循環」を体感してもらえる「循環型テーマパーク」をつくる構想を思い描いています。

「ローカルエコシステム(Local Ecosystem)」「アイデア(Idea)」「パーク(Park)」の頭文字を取って「LESIP」と名付けているテーマパークの構想(提供:株式会社ホップジャパン)

その一歩として、最近では敷地内で養蜂をはじめたのだそう。

東京オリンピック・パラリンピック開催時に、田村市がネパールのホストタウンになったことをきっかけに植えられたネパール原産の赤そば畑の近くに養蜂場をつくり、蜂蜜を採取。ゆくゆくは、その蜂蜜とビール酵母をつかってつくる「ミード」というお酒の開発も目指しているといいます。

本間さん ほかにも、そばの実と蜂蜜をつかったガレットを開発したり、ヤギを飼って草刈りをしてもらったり、チーズをつくったり、糞の発酵肥料を活用して野菜を栽培したり。その素材をいかした料理を提供するカフェもつくりたいと思っています。

そうやって、訪れた人に「食の循環」を体験してもらえるようなコンテンツをもっと増やすことで、「循環型テーマパーク」を実現していきたいんです。

循環型社会をつくる仲間を増やしたい

「循環型テーマパーク」の構想を実現するにあたって本間さんが重要だと考えているのが、循環型社会への思いに共感したプレイヤーたちが集まることだそうです。

本間さん 新しいことをやりたい人が集まり、共鳴しあってイノベーションが生まれていくシリコンバレーのように、循環型社会をつくる人や事業者の生態系をつくっていきたいんです。

この「循環型テーマパーク」がロールモデルになることで、ゆくゆくはほかの地域でも、その土地ならではの資源をいかした生態系が広がっていくといいですよね。

そうした循環型社会の実現に対する本間さんの強い思いの背景には、現代の消費社会に対する違和感があるといいます。

本間さん 大量のものをつくって、賞味期限が過ぎれば即廃棄、みたいな世の中は、続かないですよ。なんでそんな社会になってしまったのかというと、循環のプロセスが見えないからだと思っています。

昔だったら、お米をつくったら食料になり、稲藁が建材になり、衣服にもなり、最後には灰を畑にまいて…というふうに、ものが変わり、使っていく過程が見えたわけです。

でも今は、コンビニに行けば弁当が買えて、レストランに行けばちょうどいい量に切られたお肉が出てくる。プロセスの結果しか見られない世の中になってしまったがゆえに、その過程に関わる自然や資源を大切にしたいという気持ちも薄くなってしまったのではないでしょうか。

子どもの頃、親戚の家で鶏を狭い檻で囲い込む養鶏の様子を目の当たりにしたことで、動物の命を人間が歪ませてしまうことに疑問を抱いた本間さん。自然に負荷を与えない循環型社会の実現を目指す背景には、子どもの頃の経験が息づいています

本間さん 私たちは、誰でも笑顔になれるビールなどのツールを使って、「ものをつくるとは、循環のなかで生きることなんですよ」ということを示していきたい。そうすることで、ものや地球を大切にする仲間をどんどん増やしていけるのではと思っています。

ひとつの企業で活動するのではなく、循環型社会を実現するための生態系をつくろうと挑戦している本間さん。今回募集する「粕ぺシャリスト」も、そんな生態系の一員となる存在なのです。

地域おこし協力隊とは別に、現在ホップジャパンは醸造士を募集中だそうです

生活面・事業面でサポートする2つの団体

今回田村市が募集するのは、「粕ぺシャリスト」として、粕を利用したアップサイクル製品やサービスを創出する起業型地域おこし協力隊。最大3年間の任期中に、経営ノウハウの習得や製品・サービスの確立などの起業準備に取り組み、期間終了後の自立を目指します。

やりがいもある一方で、孤独になりがちであったり、自分で責任を持って動き続けなければいけないという難しさもある起業。そこで「粕ぺシャリスト」に伴走するのが、田村市で地域活性化に取り組む「一般社団法人Switch (以下、Switch)」と、創業支援などに取り組む「株式会社MAKOTO WILL (以下、MAKOTO WILL)」です。

今回はSwitchの久保田健一(くぼた・けんいち)さんとMAKOTO WILLの後藤大志(ごとう・だいし)さんに、サポート体制についてくわしく話を聞きました。

Switch代表の久保田さん。久保田さん自身も、東京での会社勤めを経て地元田村市にUターンした移住者です

Switchは地域おこし協力隊となる方の生活面のサポートや地域とのつながりづくり、地域の情報提供、地域目線でのアドバイスをおこないます。もともと田村市で育ったり、生業を持っていたりと田村市と縁のある人たちが多く所属しているSwitch。だからこそきめ細やかなサポートができるのだそうです。

久保田さん 「人と適切につながれるかどうか」は、移住をする際の重要なポイント。でも自分でつながりをつくるのってなかなか難しいし、地域ならではの慣習や人間関係は、移住者だとなかなかわからないですよね。だからこそ僕らSwitchが、起業型地域おこし協力隊と地域をつなげるハブになりたいと思っているんです。

今回募集する起業型地域おこし協力隊は、市ではなく、このSwitch所属の契約社員となります。

Switchが運営する「テラス石森」。廃校となった小学校を活用したコワーキングスペースやオフィスになっており、地域おこし協力隊の方たちがここを活動拠点にすることもあります

生活面や地域とのつながりづくりなどを支援するSwitchに対し、MAKOTO WILLは事業面をサポート。定期的にメンタリングを行って、ビジョンの整理などのサポートをしたり、必要な資金を得る方法や事業計画づくりのノウハウなど、起業に必要な知識を伝えたりもするのだそうです。

後藤さん ここ数年、田村市へ移住したり、事業を起こしたりする方も出てきていますが、地域を盛り上げてくれるプレイヤーはまだまだ必要だし、余白もめちゃくちゃあるんです。

なかでも、「アップサイクル×起業」がテーマになっている今回の募集は、すごく大きな可能性があると思っていて。ホップジャパンさん自体が、田村市の貴重な地域資源ですし、本間さんが目指す循環型社会や生態系とうまく連携すれば、相乗効果でかなり面白い事業をつくれるのではと思っています。

MAKOTO WILLの後藤さん

一方で、起業にチャレンジするうえで欠かせないのが、「自分で考えて動く」という意識。SwitchやMAKOTO WILLの手厚いサポートはありますが、どんな一歩を踏み出すか考え、動き出すのは常に自分自身です。

後藤さん 僕らも一生懸命支援はするんですが、24時間ずっと付きっきりというわけにはいかないので、困難にぶちあたった時に、自分で解決しようと考えられるマインドは必要ではないでしょうか。今回の求人は、能動的に動ける力や、自分をマネジメントする力がある方に向いていると思います。

特に、地域の人からの「こんな土地が空いているよ」「あの人が手伝ってくれそうだよ」といった情報があって事業が動き出すことも多いので、着任1年目は、地域を知ったり関係性をつくったりすることに時間を使うのがとても大事なのだそう。

そうやって下地をつくったうえで、2年目や3年目に、まずは小さくても自分がやってみたいことを実践するフェーズに入っていきます。「カフェを開くつもりだったが、自分が目指すことを実現する手段はカフェではなかった」というように、やってみてはじめて気づくことも多いのだとか。そうやって軌道修正しつつ、起業の準備を進めていきます。

一歩足を踏み入れると、外観からは想像できない木をふんだんに使ったおしゃれな空間が広がるテラス石森。コワーキングスペースは地域おこし協力隊となる方は営業時間内であれば自由に利用することができます(提供:テラス石森)

後藤さん 会社を辞めてから起業をする場合、収入もなくなるので、なかなか事業計画を何度も修正するような余裕はないですよね。でも、起業型の地域おこし協力隊は、任期の3年間で失敗しながら試行錯誤できるんです。

しかも田村市は、移住者を拒絶することなく、やりたいことがすんなりできる土地柄。だからこそ、今回の募集はアップサイクルビジネスに挑戦したい人にとって、またとないチャンスだと思います!

想像以上に、生活に不便はなかった

最後は、2023年4月に起業型地域おこし協力隊として着任した橋本剛(はしもと・つよし)さんに、日々どんな働き方や暮らしをしているのかを聞きました。キャンプ好きが高じて「いつかキャンプ場をひらきたい」という夢があった橋本さんは、現在起業に向けて奮闘中なのだそうです。

橋本さん 今は毎日土地を探しています。Googleマップで目星をつけて、実際に現場を見に行くことの繰り返しですよ。来年の4月までには土地を見つけて、再来年の4月から7月ぐらいにはキャンプ場をプレオープンしたいですね。

もともとキャンプやバイクが好きで、地方に引っ越したいという思いがあった橋本さん。子どもが生まれ、自然ゆたかな環境でのびのび育てたいと思ったタイミングで、移住を決めたといいます

着任してから4か月間、毎日のように土地を探し続けており、「他の仕事をしながらだったら絶対にできない」と笑う橋本さん。活動資金を得つつ起業準備に専念できるのは、起業型地域おこし協力隊の強みです。

また、土地を探している今は、土地を持っている地域の方との橋渡しをしてくれるSwitchのサポートがとてもありがたく、土地が見つかったあとの事業の立ち上げに伴走をしてくれるMAKOTO WILLの存在も、心強さがあると橋本さんはいいます。

左から、MAKOTO WILLの後藤さん、協力隊の橋本さん、Switchの久保田さん。普段からコミュニケーションを取り合っている三者の和気藹々とした空気が伝わります

現在、起業型と地域振興型、観光振興型をあわせて12名が活動しており、田村市の住民からも受け入れられている地域おこし協力隊。だからこそ、協力隊という肩書きも、起業に向けた後押しになっているそう。

一方で、自分で起業に向けて取り組んでいかなければならない孤独感に、くじけそうになることもあるといいます。

橋本さん サポートは手厚いですが、やっぱり自分で能動的に動くことが大事。SwitchさんやMAKOTO WILLさんができるのはあくまでサポートなので、自分が強い意志を持ってやっていかないと、起業は実現できないと考えています。

試行錯誤しながら事業の立ち上げに向けて奔走している橋本さんですが、田村市での暮らしは、移住前に想像していた以上に満喫できているといいます。

橋本さん 住まいを探すのは大変でしたが、移住してからの生活面で不便を感じることはありません。家から車で5分のところに、コンビニやドラッグストア、スーパーもありますし、子どもが1歳8か月なんですが、無料で遊べる遊び場が田村市にも周りの市にも複数あるから、子育て面でも恵まれていて。

市内には高校がひとつしかなかったり、隣の市までアクセスできる電車が1時間に1本しかないという環境ではあるので、子どもが高校に行くようになったら大変なこともあると思いますが、今は思っていた以上に生活に満足しています。

自宅から15分くらいのところにキャンプ場があるので、キャンプに行く回数も増えたと、楽しそうに語る橋本さん

空き家のリフォームや、住宅取得、引越しに関する補助のほか、移住支援金が一世帯最大200万円交付されるなど、金銭面のサポートが手厚く、さらに、Switchが共同運営する移住相談窓口や、空き家相談の窓口など、移住前の相談ができる場所も複数用意されている田村市。

ですが、橋本さんも後藤さんの紹介でやっと物件を見つけたと話すように、単身向けのアパートはたくさんあるものの、家族向けの間取りが少ないという課題もあります。そのため、協力隊の採用が決まった方は早めに移住の準備に向けて動き出すことが必要になりそうです。

仲間とともに、踏み出す一歩

「いつか、こんなことができたらいいのになぁ」とワクワクしながら思い浮かべるとき、同時に「じゃあ、お金はどうするの?知識もないのに?ひとりでできるの?」といった心の声が聞こえて、諦めてしまうこともあるのではないでしょうか。

ですが、田村市の起業型地域おこし協力隊は、起業資金の補助はもちろんのこと、地域とのつながりづくりにはじまり、経営のノウハウを学ぶ機会や、生活面のサポートなど、背中を押してくれる制度が充実しています。

なにより、食の循環やアップサイクル、循環型社会といったキーワードに興味がある方にとって、ホップジャパンをきっかけに育まれている生態系は、共に悩み、考え、試行錯誤できる仲間がいる貴重な場となりうるのではないでしょうか。

この記事を読んで、なんだかワクワクする! と感じた方は、ぜひ一度、説明会に参加したり、現地に足を運んでみてください。

(撮影・編集:山中散歩)

[partnered with 福島県田村市]

– INFORMATION –

今回募集する「粕ペシャリスト」のオンライン説明会を開催!

グリーンズジョブのメンバーが、今回の求人のリアルな情報を深掘ります。応募を検討している方は、ぜひお気軽にご参加ください。なお、当日参加が難しい方はアーカイブ動画の視聴も可能です。

イベントの詳細・申し込みボタン

田村市起業型地域おこし協力隊募集説明会

この他にも田村市では今回の求人説明会を予定しているそうです。
こちらも興味がある方はぜひご参加ください。
9/27(水)20:00-21:00
10/25(水)20:00-21:00
11/22(水)20:00-21:00