「働く」で社会を変える求人サイト「WORK for GOOD」

greenz people ロゴ

社会課題は音楽で解決できる? インドの女性ラッパーが歌う、土壌汚染に苦しむ人々へ捧げる曲『Kodaikanal Won’t』が生み出したインパクト

2016年4月17日に公開した記事を再編集してお届けします!

みなさんは音楽を聴いているとき、どんな歌詞や歌手の思いに共感したことがありますか?

落ち込んだときに背中を押してくれたり。
楽しい気分をもっと盛り上げてくれたり。
疲れているときにリラックスさせてくれたり。
音楽には、いろいろな力がありますよね。

そんな音楽の力を借りて、ある社会問題を解決しようというキャンペーンが、インドのコダイカナルという小さな町で行われました。

この町には、かつて、大手家庭用品メーカーであるユニリーバの温度計を組み立てる工場がありました。温度計を生産する過程で、地下には身体に有害な水銀が廃棄され、労働者たち、そしてそこに暮らす人たちの身体にも悪影響を与えていたのです。この水銀による土壌汚染によって、45人の労働者と12人の子どもたちが命を落としたと言われています。(出典元

環境活動家たちの働きかけもあり、2001年にユニリーバは、この工場を閉鎖。しかしながら、汚染された土地、そして被害を受けた労働者と住民たちには何の手当ても行われなかったのです。

それから10年以上ものあいだ、住民たちはユニリーバに対し、直接的に抗議をしてきたそうですが、解決に向けた動きは進まぬまま。そこでインドの市民活動を支援するNGOである「Jhatkaa」が、ユニリーバにこの問題に対する解決策を求めるキャンペーンをはじめました。

これに参加したのが、女性ラッパーのSofia Ashraf(以下、ソフィアさん)。このキャンペーンで彼女は、アメリカのラッパーNicki Minajの有名な曲『Anaconda』をリメイクし、『Kodaikanal Won’t』という曲を制作。自分で一から曲をつくるのではなく、もともと有名な曲をリメイクすることで、より多くの人たちに聞いてもらえるものを目指したのです。

『Kodaikanal Won’t』で歌われていることって?

ソフィアさんは曲の中で、コダイカナルという地にユニリーバの工場が建てられ、その工場で廃棄された水銀によって、たくさんの人が今も苦しんでいるという、実際に起きたストーリーを描いています。

サビの部分で彼女は、ユニリーバに対してこのように繰り返し、訴えかけています。

”Kodaikanal won’t step down until you make amends now.”
”コダイカナルは、あなたたちが償いをするまで諦めない。”

”Unilever. Clean up your mess.”
”ユニリーバ、あなたたちの起こした問題をどうにかして。”

この曲の動画がYouTubeに投稿されると、やがて大反響に。現在までにおよそ360万回も再生され、9万5千人以上もの著名を集めることになりました。YouTubeのコメント欄には、世界中からたくさんの応援の声も寄せられました。

あなたは素晴らしい女性ね。この曲は、この問題に関心を持ってもらうためにとってもいい方法よ!フェイスブックでシェアするわ。この問題についてもっとたくさんの人に知ってもらう必要があるもの。

信じられない。今この動画を見てこの問題について知ったよ。こんなに力強い曲で不正を訴えることができるなんて、本当にすごい!

そしてついに、ユニリーバの代表、Paul Polmanさんからも、ソーシャルメディアで以下のようなコメントが届けられたのです。

私たちは、コダイカナルの問題に取り組む必要がある。一刻もはやく解決策を見つけるつもりでいます。

こうして、何十年も解決できなかった環境問題を音楽の力で解決したソフィアさん。多くの人々からの大反響に対し、このように話します。

多くの人びとは、私が何者なのか、ラップがどれほど下手か、このリメイクはふさわしくないのではないか、ということばかりに目を向けていました。けれど、それよりも多くの人たちがこの問題に目を向け、それについて話し合ってくれました。

私は、意識的に社会活動家ラッパーになろうと思っているわけではありません。私はただ、自分自身が問題だと思うことをテーマにして歌をつくっているだけです。私が歌っていることは全て、私自身の思いなのです。

インドの女性ラッパー、ソフィアさん

ソフィアさんは、たくさんの人の共感を生み出す方法を考えて、有名曲に自分の思いを乗せて発信しました。自分一人では実現できないことも、同じ思いを持つ人たちと一緒なら、実現できる可能性は十分にあると、ソフィアさんは教えてくれたのです。

音楽をつくってみたり、詩を書いてみたり、あるいはこうして記事を発信してみたり。私たちが思い描く未来を分かち合う方法は、きっといろいろとあるはず。みなさんも、この機会に自分のビジョンを表現することに挑戦してみませんか?

(Text: 神本萌)
[via GOOD, Hindustantimes, DNA India, Jhatkaa, YouTube retrieved April 2016]