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金融資本では手に入らない豊かさをつくる。藤野地域通貨「よろづ屋」がただのお金じゃない理由。(後編)

NPOグリーンズの合言葉でもある「いかしあうつながり」とは、関わっている存在すべてが幸せになり、幸せであり続ける関係性のこと。それをみんながデザインできるような考え方、やり方をつくり、実践し、広めるのが、NPOグリーンズの新しいミッションだ。

とはいえ、それってどんなこと? 発案者の鈴木菜央も「まだわからない(笑)」という。「わからないなら、聞きに行こう」というわけで、鈴木菜央が「いかしあうつながり」「関係性のデザイン」に近い分野で実践・研究しているさまざまな方々と対話する連載。第5回目は藤野の地域通貨「よろづ屋」池辺潤一さん小山宮佳江さんです。

前編では、関係性をつくっていくためのツールでもある、地域通貨の価値について話が及びました。後編では、地域通貨がもたらす豊かさについて、対話が深まっていきます。

池辺潤一さん

小山宮佳江さん

ひとつのやり取りが生まれることで、複数のニーズが満たされる

鈴木菜央(以下、菜央) ちょっと話はまた変わるんだけど、地域通貨やっててすごく面白いなと思うのが、ニーズ(※)が満たされてる感じがするってこと。

(※)ニーズ: 命が自ら持続し、成長・繁栄するための「必要」「求め」。

人間って多様なニーズがあるじゃない? 一人ひとり多様なニーズがあって、ひとりの人間のある瞬間で見ても多様なニーズがあるし、時と場合によってもまた違う。人生を通じて満たしたい根源的なニーズもあるし、その瞬間に現れるニーズもあると思うんだけど、それが地域通貨って何百人という人がそのニーズをもとにやりとりして解決するから、みんなの幸せにつながっているな、と思う。

あと面白いのが、これは実際の例なんだけど、「林から切り出した重たい薪を運びたいから軽トラ貸してください」って書き込みがあって、軽トラを貸したんですね。その人にとっては薪が家にあれば薪ストーブで冬暖かくなったり、化石燃料を使う量が減って室内環境にも、地球環境にもいい。軽トラの貸し借りを通じて満たされる、ほかのいろんなニーズがあるなと思ってて。

一つはうちの駐車場にただ停車してた軽トラが誰かの役に立って嬉しいし、「薪ストーブが完成して冬になったら、温まりに来てくださいよ」という話に発展して、近所に、仲良しの人がほしいな、っていうニーズが満たされた。

僕の話だと、にわとり小屋を今週末までに完成させなきゃいけないってときがあって。「誰か手伝って」って地域通貨に書いたら、近くに住んでたけど全然知らなかった人が手を挙げてくれた。で、一緒ににわとり小屋をつくる作業を通して、にわとりの安全と豊かな人生(鳥生?)を願う心、誰かとにわとり小屋を共につくること(1人でつくるのはつらい!)が満たされただけじゃなくて、その人とめちゃくちゃ仲良くなって、いろんなプロジェクトを一緒に活動するようになった。その豊かさって半端ないなと思って。

自分が知らない業者に頼んでにわとり小屋を建ててもらうことでは生まれない、副次的なニーズが満たされると思ったわけ。それが地域通貨では常にあちこちでいっぱい起こってるんだよね。そんなデザインって、狙ってもなかなかつくれないんじゃないかなと思って。

小山宮佳江(以下、みかえ)さん 必ず何かプラスアルファがついてくる。ただの交換じゃないんだよね。

池辺潤一(以下、池辺)さん ニーズを満たされることがやっぱり豊かさにつながると思うんだけど、じゃあ自分にとって必要なニーズって何か問うたところで、意外とわからないもんだなと思っていて。

どれを満たせば自分が「豊か」って感じるんだろうみたいなことを一生懸命考えても気づかないけれど、今菜央くんが言ったみたいに関係を持つことで「あ、これがニーズだったんだ」って、満たされてから「これが足りてなかったんだ」って気づくことがあるなと感じてる。なんとなく満たされてないなと思ったときに、自分でそのどれを満たせばいいのか考えるよりも、関係を持つことでどんどん満たされていくみたいなことがあるかもしれないよね。

菜央 言葉にならなくても、さまざまなお土産がくっついてくる感覚。いろんな気持ちがやりとりされて。でもそれは意識もする必要もないし、言葉にしなくてもいいんだけど、そこにまさに豊かさっていう言葉がぴったりくるよね。単純じゃないんだよね豊かさって。豊潤で複雑なニュアンスが含まれてるんだよね。

2012年に開催された、よろづ総会・大交流会。「100%よろづ交流会」と題して、よろづのみでやりとりする交流会を開催しました。写真は、ハンドマッサージのお店で、みんなでハンドマッサージを受けているところ。

地域通貨は「翌日お届け」よりも効率が良い!?

池辺さん 金融資本でやりとりされるサービスってなんとなく細かく切り分けていきがちですよね。サービス内容を限定して、それに対して「これがいくらです」っていう対価というか価値の表明みたいなものを明確にすることで取り行われてる。

けれどもそうじゃなくて、「私にはこれができます」ってひとつのことがきっかけで入っても、人とつながる中で「こういうサービスもこういうサービスもできます」ってニーズと結びつけば、実はどんどん何か提供したり、受け取ったりすることって、やっていってもいいんだよね。

でも金融資本の関係だと、お金払わない以上そこはやっちゃいけないみたいなことになってしまう。それだと実は、受け取る側も与える側もある部分は欲求不満のまま終わってしまうみたいなことがあるのかもしれない。

地域通貨だと、そこが芋づる式に、あれもこれも提供できるし共有できるし、みたいなことがつながって起こっていくことがすごく楽しい。

菜央 商品が安く早く届くみたいな機能だけ切り出せば、「翌日お届け」のオンラインショッピングのほうがいいかもしれないけど、その周りにある価値っていうのはないんだよね。労働環境とか地球環境という意味ではむしろだいぶマイナス。だけど地域通貨のやりとりには豊かさがくっついてくるんだよね。

みかえさん 例えば実際のやりとりで、「エディブルフラワーがあったらください。子どもの誕生日で、お花や果物が少ない時期だけど、ケーキにお花を入れたいから」という投稿があって。

ちょうどうちにナスタチウムがいっぱい咲いていたから「これ提供できるじゃん」と思って持って行ったら、子どもも一緒に受け取ってくれて。後になって「こんなケーキつくりました」って、ケーキを囲む子どもたちの写真が送られてきた。もうそれ見ただけで涙、みたいな。本当に嬉しいよね。

みかえさんが受け取った写真。赤いナスタチウムのお花が、ケーキを華やかに彩っています

菜央 幸せのシェアだね。うれしいね。ナスタチウムを自分だけのものと考えずに、みんなのものにしたら、ナスタチウムを通じてみかえさんも幸せになったわけじゃない? 素晴らしいね。

みんなが「翌日お届け」のオンラインショッピングで買ってるのは、「時間」なんだよね。すぐ届くっていうところに結構なお金を払っている。それは効率がいいように見えて実は単一の目的しか果たせない。

効率や時間をお金に換算して、時間がものすごく希少な資源になった現代で、一見効率が悪いように見える地域通貨は、幸せっていうゴールに向かうのには逆に効率がいいんじゃないかと思っている。

僕の地元のいすみ市の田んぼの真ん中におにぎり屋さんが立ってて、一瞬、「こんなとこで売れるのかな?」って思うんだけど、ものすごく売れてるの。地元の人がみんな買いにいくんだけど、その人が言うには「僕が商売してる相手は全部友達だから、仕事をしててもいつも友達と遊んでいるような感じなんだよね」って言ってて。地域で起業する、地域のつながりの中で生きるからこそできる、暮らしと仕事を重ね合わせていくことの豊かさなんだよね。そんな彼も地域通貨の主要メンバーの1人で、重ね合わせる実益と素晴らしさを知っているから積極的に地域通貨を盛り上げてくれているんだ。

地域通貨は、そういうものを考えたり、実感するきっかけになってるんじゃないかなって思った。さっきのエンデの「お金や時間の使い方を問い直す」っていうところにつながると思ったんだよね。

「よろづ屋」を支える“ゼロサムの仕組み”

菜央 ちょっと話が戻るんだけど、よろづ屋の活動をここ5年くらい観察している僕としては、大きな疑問があって。よろづ屋の活動に現れている地域通貨の「豊かさ」って、映画監督みたいな存在がいないのに、どういうふうにデザインしてきたのかな?

デザインっていう単語に付随するイメージからは違うかもしんないけど、正解があってそれに近づく感じではないよね。何がどうなるかわからない中で、誰も全体を知らない。

みんなで運営してて「どっちにいく?」みたいな決断をするときがいっぱいあったと思うんだけど、よろづ屋は、不思議なことに「事務局ってなくてもよくないか」とか「別に維持ぐらいでいいんじゃないか」とか「楽な方向に行ったほうが幸せなんじゃないか」とか。なんとなくそういう方向に進んでいったように思うんだけど。このデザインって何なんだろう?

池辺さん デザインっていう視点で見たときに僕が感じているのは、「よろづ屋」の明確な要素として“ゼロサムの仕組み”っていうデザインが結構重要だなと思っていて。

説明会で伝えるのは、最初は全ての人がまっさらの通帳を渡されてゼロからスタートするから、参加メンバーそれぞれがどんなにプラスを増やそうがマイナスを増やそうが、地域総体では常にプラスマイナス0なんだよ、ということ。

それを聞いてすぐにイメージを理解することは難しいかもしれないけど、やってるうちにじわじわと理解してくれるかなと思っていて。それが理解できたときに、いわゆる貨幣経済の金融商品と大きな違いなんだなっていうことが気づきのひとつとしてある。

もうひとつは、地域を俯瞰して全体を見たときに、プラスマイナスゼロであるっていうことが見える。こっちでプラスがすごくあったり、こっちにマイナスがあったりもしてるけど、全部で合わせるとゼロなんだっていうのを常に全員が俯瞰してみることができるっていうデザインなんだ。

プラスのほうが偉いとかマイナスのほうが偉いとかっていうことはないんだ。それぞれの持っている特性で、得意な人が伸ばせばよくて。俯瞰したときにそれぞれの得意がいかされあっていると、みんながニーズを満たされて豊かになっているんだよっていう、ゼロサムであるっていうことが大きくほかの経済と違う仕組みのデザインだと見てもらうと、違いがわかりやすいのかな。

「いかしあうつながり」であるということと、ゼロサムの仕組みであるということ。その原理をどうやってうまく伝えればいいかなって一時期はすごく考えながら、説明会での伝え方を検討してたかな。

菜央 1930年代の大恐慌のころオーストリアで地域通貨がすごく流行って広がったときに、結局政府から禁止令が出て地域通貨がなくなっちゃった(※)んだよね。

(※)1932年7月、世界大恐慌の影響で失業者で溢れかえったオーストリアのヴェルグルというまちの町長が時と共に減額していくスタンプ紙幣を発行、まちの経済が復活して税収も8倍に跳ね上がって、不況下で唯一繁栄するまちとして世界的に有名になった。ところが、1933年11月、オーストリア政府は紙幣発行は国の独占的な権利であるとして、町長を国家反逆罪で基礎し、地域通貨を廃止した。

僕らが今やってる地域通貨って、通貨発行権が全員にある仕組みなんだよね。力の源泉はみんなに一人ひとりにあるし、全員の残高を足し合わせたら0になるっていうことは、誰かが溜め込むことにも意味がないし、負債にも意味がない。全てはやりとりの中に価値があるっていう。

だから、「お金」というシステムを通じて社会をコントロールしたい側の視点から見ると、こういった地域通貨がもし本当にめちゃくちゃに広がったら恐ろしいだろうね。

池辺さん たまに質問で「法的にはどうなんですか」と言われることも。要は法律で、1千万円以上の貨幣価値の流通がある場合は、規制がかかる。それでいうと、円の法定通貨との価値の関連性がない「よろづ屋」の場合は、そもそも1千万円以上の流通って換算ができない。

「参加者の規模がどれだけ広がろうが、ゼロサムである以上、そこの法的な規制は関係ない世界でやってます、だから大丈夫でしょう」みたいな話をするんだけども、それって聞き方によっては、権力と離れた世界で繰り広げられるってことだから、自由度が大きく感じるというのも思いとしてあるだろうね。

さっき言ったみたいに、権力とは切り離された“自分たちがやってる実感”みたいなものを強く持てるっていうのが、特徴として大きいかな。

地域通貨は、人間らしい空気が吸える領域をつくる

菜央 初めて地域通貨に参加してしばらく経って、ふと日本円を見たときに、違った見方になるよね。

greenz.jpのテーマは「いかしあうつながり」なわけだけど、いったいぜんたい、その「いかしあうつながり」ってやつは、どうやってつくれるのか? というのが僕のここ数年の追いかけているテーマなんです。最終的には、個人レベルでも社会レベルでも、誰でもつくれるような形、デザイン言語、デザイン思考みたいなものをつくりたいなと思って。

すべての資源、人間が生きていくのに必要な飲み水、空気、家、服、食べ物、教育、学び、成長。これを全部「お金」、細かく言えば法定通貨を通じてしか手に入れられない世界って、みんなをコントロールしやすいんだよね。

僕は陰謀論とかあんまり信じてないし、誰か悪いやつがいるって言うつもりはないんだけど、これまでの歴史上で人民が本当に自由だった時代なんか1回もないわけで。時代時代で違うけれど、僕らは今、こういうシステムの中で日々お金に向かって走り続けるように仕向けられてる、と思っていて。

そこからいかに自由な領域を増やすか。もちろん法定通貨は超便利だし、法定通貨がなくなったら困ると思ってるけど、でも、みんなあまりにもそこに頼りすぎてるよね。そういう意味で、地域通貨はそこから抜け出して、人間らしい、空気が吸える領域をつくっている。

お金の圧力がかからない領域があれば「ああ、僕の人生の幸せって何だったっけな」とか、「みんななんか楽しそうにやってるから、僕もこんなことやってみようかな」とか、「なんか暇だからこれ手伝ったら喜ばれるかな」とか、「こういうことをやってみたいんだけど、誰か仲間を作ったら一緒にできたらいいかな」とか、そういう発想になれる。

そういう意味でも、地域通貨は面白いなって思ったりしてる。

どうやら日本の地域通貨は独自の進化を遂げていて、ブラジルでの地域通貨の話も聞いたけど、全然違う。ジェイ・トンプト(※)にも「トットネスよりも日本のほうがうまくいってるよ。教えてくれ」と言われて。

(※)ジェイ・トンプト: 環境ビジネス活動家。 ライター。 経済学修士号をモンテレイ国際研究所で取得。またサン・ホセ州立大学で哲学を修学。これまでコンサルタント業を始めとする多様な地域ビジネス、リ・エコノミー・プロジェクト、トランジションタウン・トットネスなどにかかわってきた。 最近は起業と地位経済の実行に関する理論的アプローチの構築に取り組んでいる。

「よろづ屋」とそれを参考に僕らが始めた「いすみの地域通貨 米(まい)」の祖先は安房マネー(※)だと思うんだけど、この進化の系統図は結構面白いことになってるんじゃないかな。世界的にも。

(※)安房マネー:千葉県南部(鴨川市、館山市、南房総市、鋸南町、など)の通称「安房」の地に住む人々が、おもに参加している地域通貨。

地域通貨の可能性はかなり多様だと思った。僕は専門家じゃないからたくさんの事例を知らないんだけど、聞いた話では、ブラジルのセアラ州の州都フォルタレザ市という街では低所得者の生活向上を目的に、住民自身が運営を行うパルマス銀行が地域でしか使えない地域通貨を発行していて、融資もしているそうだし、スペインでは2008年の世界金融危機以降、お互いのスキルを時間単位で交換する「時間銀行」がだいぶ盛り上がっているらしい。

そんな中で、僕らがやっている地域通貨のカタチって、なかなか個性があるなと思うんだよね。日本らしい発展の仕方をしているのかなって。

パーマカルチャーの原則と地域通貨

みかえさん あと私、地域通貨の仕組みはすごくパーマカルチャー的というか、自然界と同じような仕組みなんじゃないかなと思うのね。多様性を認め合うっていうところとか。

菜央 中心がないとか。

みかえさん うん。利益とかじゃなくって、生きるためにお互いが資源を使い合えるような。すごくパーマカルチャー的ないい例なんじゃないかなっていう気もする。

菜央 地域通貨を通じた助け合いの輪が広がるのをみていると、確かに地域にレジリエンス(しなやかな復元力)をもたらしているしね。パーマカルチャーの原則を見てると、面白いことに、ほぼほぼ当てはまるんだよね。

いかしあう関係性をデザインすることを目的にしているパーマカルチャーでは、デザインの原則は(流派による多少の違いはあるけど)10ある。greenz peopleに向けて配布している「いかしあうデザインカード」に、その原則が全部入ってる。このデザイン原則を活用しながら、持続可能な暮らしや社会をデザインしていくんだよね。

こんな感じで10枚のカードにまとまっているから、ちょっと地域通貨をカードを使って分析してみようか。

菜央 たとえば原則の中でも一番つかいやすい原則は“多機能性を持たせる”。

地域通貨って、「これです」っていうふうには捉えられない活動じゃない? 福祉っぽい側面もあるし、人のつながりをつくる活動でもあるし、ゴミを減らす活動でもある、みたいな。まさに、一つの活動でたくさんの機能を果たしていると言えるよね。

あとは……“エネルギーをうまく貯めて循環させる”のだって、まさにモノというエネルギーをそれぞれが溜め込んで、不要になってゴミに出すんじゃなくて、コミュニティの中でぐるぐる回すみたいなことは、まさにエネルギーの循環だよね

“多様性をいかす”や、“重なり合う豊かさをいかす”なんて、まさにドンピシャで当てはまるね。若者、ご年配、子どもがいる人、いない人、昼間働く人、夜働く人、IT強い人、DIYできる人、サラリーマンの人もいれば、大工の人もいれば、農家の人もいれば、いろんな人がいて、その違いが重なり合って、それが豊かさにつながってる。いろんな人がいるから、いろんな問題や難しさがあっても、いろんな方法で解決するよね。この豊かさはそれぞれが孤立している限り、実現しないんだな。

パーマカルチャーのデザインの原則に、ほぼ当てはまってる。すごいなと思った。

足元の暮らしからの変化を、コミュニティで仕掛ける

池辺さん よろづを割と一生懸命やってた初期の時代から、10年過ぎて落ち着いて振り返ってみると、僕らよりも後に移住してきた人たちは年齢的にもちょっと若くって、その人たちがいろいろ新しいことをはじめてるね。

その周りに新たな移住者がすごく高いエネルギーでいろいろやってる、とふっと気づくと、ちょっと僕なんかは低空飛行モードに入ってて。そんなにエネルギーを使わずやっていて、世代の壁とまではいかないんだけど、今メインですごくエネルギー高くやってる人たちよりは少し引いちゃったな、みたいな感覚がある。それはそれで面白いなと思いつつ、また僕らも何かやりたいなって。

今、僕らの世代が話しているのは、地球温暖化の問題をどうしていけばいいんだろうかということ。人間の活動によってこの問題が起こったのだとしたら、人間が取り組んでいかないと、私たちはこの地球に住めなくなってしまうよね。実際『ドローダウン』(※)という書籍を読むと、暮らしに直結してるところにもたくさんの解決策があるように感じる。

※『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』ポール・ホーケン著『ドローダウン』は、地球温暖化を逆転させる100の方法を紹介した書籍。

そもそも藤野では、地球温暖化の解決方法としてトランジション藤野(※)の活動が始まって、そのなかのワーキンググループとして地域通貨「よろづ屋」が生まれたんだよね。

地球温暖化のような大きな問題でも、その始まりは私たちの暮らしだから、僕たちにできることを暮らしや地域の活動からやってみることが、環境を変えていく確実な方法なのだと思っています。

(※)トランジション藤野は、2009年に始まった藤野の市民活動。地域通貨の他にも、藤野電力や医療と健康、気候変動を考える会など、様々な会が活動している。

菜央 社会をつくるのは、暮らしからだよね。

環境や社会問題に対するアクションはもちろん価値があるけど、やっぱり僕らの日々の暮らしが環境や社会課題を支えてるんだよね。

その“暮らしから”って言ったときに、地域通貨ってそれを大きなコミュニティでできる、すごく良い仕掛けなんだなっていうのを、あらためて思った。

今日は地域通貨の表向きの話ではなく、「地域通貨って何なの?」みたいな話をずっとしたいなと思っていたので、できて嬉しかった。心に残ってるのは、“お金や時間の使い方を問い直す”っていうことかな。地域通貨を通して、僕らが生きている社会そのものを考え直すきっかけになっているというところがすごく面白かったですね。ありがとうございました。今度は藤野に行って、一晩中話したいな!

(編集: 福井尚子)
(編集協力: 板村成道)