モクモクと立ち上る白い蒸気越しに見える、無邪気な笑顔のおじさん。
「誰やねん!」のツッコミ、お待ちしてました(笑) とっても楽しそうなこの方は、イリノイ州を拠点に事業を展開しているWilliam Rogers(以下、ウィルさん)。
実は“意外なもの”をアイスクリームに変える機械を開発したスゴイ人なんです!
その意外なものとは、なんと”お酒”。
彼は、どんなお酒でも注ぐだけでアイスクリームに変えてしまう魔法のようなマシーン「Below Zero(=氷点下)」を発明。凍らせたいアルコールドリンクからガスを除き、自身が発明した”NEA gel”と混ぜて機械に入れることで、約30分ほどでできあがるのだそう。
ビールもウォッカもカクテルもOK。しかもアルコール度数は変えずに、味はそのまま。しっかり酔えるアイスクリームが完成するというのです!
合言葉は、お酒をぺろり!
Below Zeroの掲げるコンセプトは、「Lick your liquor(舐めて味わうお酒)」。「本当にどんなお酒でもアイスクリームになるの?」という方のために、まずは、酔えるアイスクリームの代表レシピをいくつかご紹介しましょう!
左は、ココナッツとラム酒をベースにしたリキュールを使ったアイスクリーム。右は、スイカの味が印象的な甘みのあるビール(ミルクシェイクIPAビール)を凍結したもの。
暑さの残る夏の終わりに、パラダイス気分を妄想しながら爽やかに酔えそうです!
続いてこちらは、スミノフ(ウォッカ)とジャック・ダニエル(ウィスキー)をアイスクリームに仕立てた、コアなお酒好きも唸りそうな一品!
さらに「Black Lives Matter」がきっかけに生まれたビールもアイスクリームに大変身! ビールとは違う形で、人種差別を解決するためのムーブメントを後押しできるかもしれません。
もともと、デザートのケータリング業やアイスクリーム屋を営んでいたウィルさんが思いついた、どんなアルコールドリンクもアイスクリームに変身させてしまう「Below Zero」。
コロナ禍のステイホームを楽しむため?
あるいは、飲食店を助けるための施策?
ウィルさんがこのマシーンを開発したのは、どちらの理由でもありません。なぜなら、このアイデアを思いついたのはさかのぼること2009年。きっかけは同僚のひとことでした。
もともとエスプレッソ3杯分を凝縮したアイスクリームをつくろうとしていたとき、同僚が冗談で「これをアルコールでやったらどうだろう?」と一言もらしたんだ。その時オレの頭の中で電気が走ったんだぜ!
”運命の直観”からスタートしたお酒のアイスクリーム開発。試行錯誤を経て、2013年にはアルコールを凍結するための「NEA gel」という物質を発明し特許を取得。米国食品医薬品局(FDA)の認可も受け、実用化にこぎつけました。
現在「Below Zero」は、ケータリングイベントやマーケットへの出店、レストランやバーなどへのマシンを販売を展開しています。ちなみに、マシンの導入には6000ドルほどかかる、ということで、”アイスクリーム業界のフェラーリ”とも呼ばれているのだとか。
見事にアイデアを実現させたウィルさんですが、コロナ禍でケータリングの機会が激減したことを受け、現在は特にマシンの販売に力を入れているといいます。そうすることで、自らのレシピ以外に、マシンの導入先がどのようなアイスクリームをつくっているのを学ぶことができ、「Below Zero」の可能性が広がるからだそう。
特にウィルさんが感銘を受けているのは、主にローカルのビール工場が導入したこと。フルーツやスパイスなどを用いたフレーバーのビールをつくるブリュアーたちのアイスクリームレシピは、まるでシェフのレベルだと絶賛します!
オレたちは、これまで、物珍しさで面白がってもらえていた。そこにビールのプロたちが仲間に加わったことで、夢にも思わなかったレベルに引き上げてもらえたんだ。
ウィルさんとお付き合いのあるイベント関係者たちから聞こえてくるのは「彼の提案はいつもユニーク」「彼の提案なら一度は試してはみる」「参加者をいつも驚かせてくれる」「天才だよ」という声。
一見ただの陽気なおじさんに見えますが(失礼!)、地道に築いてきた周囲との信頼関係と彼への期待の高さを感じさせます。誰かを笑顔にしたいという情熱と遊び心で、新しいアイデアをしっかり実現してしまうところは「さすが!」の一言。
何より、周囲に幸せなサプライズを提供することの”天才”自身が一番楽しそうということに、幸せの秘訣をみたような気がしました。
[via goodnewsnetwork, Below Zero,Facebook, Metro.co.uk, Chicago Tribune, milwaukee journal sentinel, the drink business]
(Text: 片岡麻衣子、Kaori Hosoya、今野ひとみ、スズキコウタ)
(編集: スズキコウタ)