3/10開講!大切な人とわかり合えるコミュニケーションへ はじめて学ぶNVCの教室(初級編)第6期

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自分にもできる医療機関支援を考えよう!コロナ禍で200社以上の企業の資源と医療現場のニーズをつなげる「ピースウィンズ・ジャパン」のいかしあう支援のカタチ

世界中が新型コロナウイルス感染症のパンデミックに陥ってから早一年。

日本でも再び爆発的に感染が広がり、2021年が明けてまもなく、一部地域に再び緊急事態宣言が発令。この記事の公開時点で3月7日までの延長が決まっています。まちの緊張感は一度目の緊急事態宣言時よりやわらいでいるようにも感じますが、日々のニュースが報じているように、すでに1年以上も感染者の対応にあたる医療機関はパンク寸前。崩壊の危機に面しているところもあるのが現状です。

そんな中、「医療機関を支援するために自分にできることはなんだろう」と、みんなで考えてみませんか?

そのヒントを得るべく、今回から始まる連載のテーマは「いかしあう支援のカタチ」。

キックオフとしてお話をうかがうのは、NGO「ピースウィンズ・ジャパン(以下、PWJ)」のお二人です。コロナ禍において、PWJでは企業の持つ資源と医療現場のニーズをつなげ、新しい支援のあり方を築いてきました。現在は200社以上との医療機関支援の取り組みが実現。これらの中には、寄付金だけでない新しい支援のカタチがたくさんあります。

グリーンズの企業自治体プロジェクト担当の植原正太郎が、PWJ企業連携担当の会沢裕貴さん新井杏子さんに、企業との取り組みについてお話を聞き、そのプロセスや関係づくりの方法を考えてみたいと思います。

ピースウィンズ・ジャパン
1996年から主に海外での人道支援活動をしてきたNGO。新潟中越地震をきっかけに国内の災害支援も行うようになり、現在では災害緊急支援プロジェクト「空飛ぶ捜索医療団ARROWS」を結成し、たびたび起こる災害現場へ駆けつけ、医療支援や物資支援などを行う。大きな特徴は「ヘリコプターを使った機動力の高い支援」「お医者さんを中心とした医療的な支援」「人道支援の経験をいかした物資支援」の3つ。コロナ禍でもいち早く医療機関への物資寄贈、クラスター発生施設などの支援を行い、現在に至るまで幅広い支援を続けている。

会沢裕貴さん(あいざわ・ゆたか)<写真左>
PWJコミュニケーション部 企業連携担当、兼、レスキュー隊員。
まちづくりのコンサルティング会社、NPO法人コミュニティ・オーガナイジング・ジャパンの勤務等を経て、2018年に入職。平時はファンドレイジングを担当し、緊急時には新型コロナウイルス感染症のクラスター発生病院での支援活動をはじめ、災害支援活動に従事している。
新井杏子さん(あらい・きょうこ)<写真右>
PWJコミュニケーション部 広報・企業連携担当。
民間コンサルティング企業を経て、新型コロナウイルス緊急支援が始まった2020年に入職。

コロナ禍で急加速!
企業の資源をいかした支援

2020年1月末、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、PWJでは、災害用に備蓄してあったものや、購入したものを合わせてマスク140万枚などを中国や国内各地の医療機関、福祉施設へ寄贈してきました。また、各地の病院で災害用トレーラーやテントを用いた発熱外来の設置支援、クラスター発生後のクルーズ船や病院への医療チーム派遣など、これまで災害支援で培ったノウハウやつながりをいかし、現在も幅広い支援を行っています。

一度目の緊急事態宣言が出た頃から、PWJの元へは「コロナ禍で困っている人のためにできることはないか」と考える大小さまざまな企業から相談が寄せられました。中には個人経営のお店からも問い合わせがあったそう。PWJではそれらを受け、「医療現場のニーズ」と「企業の持つ資源」とをマッチングし、さまざまな方法の支援を実施しました。

その支援内容を掘り下げてみると、直接的なお金の支援だけではなく、各企業が自社の資源をいかし、バラエティに富んだ支援を行っていることがわかります。代表的な事例を見てみましょう。

1. 自社商品を寄贈

一般向けの商品を取り扱うメーカーが、コロナ対応を行っている医療機関へ自社商品を寄贈するカタチ。

アルコール消毒による手荒れを防ぐために、自社商品のヴァセリンを病院へ寄贈(ユニリーバ・ジャパン株式会社)

2. 寄付つき商品の販売

アパレルやグッズを扱う企業がチャリティー商品を販売し、「売上から一定金額を医療機関支援事業へ寄付します」という表記で、消費者からの寄付を募るカタチ。

売上寄付金を使ってPWJがビニールガウンを購入し、必要とする医療機関へ届けた。夏のチャリティーTシャツが好評だったため、秋には第二弾「チャリティースウェットシャツ」を販売した。(株式会社アダストリアのブランド「JEANASIS」)

3. サービスの利用が寄付につながる仕組み

電子マネーアプリなどの企業が、自社のサービス内に寄付の仕組みをつくり、ユーザーの課金によって寄付金を集めるカタチ。

キャッシュレス決済アプリ画面のきせかえデザインの一つとして、医療機関支援への支援金が計上されるものを提供。この支援金でPWJがマスクを購入し、必要とする医療機関へ届けた。(PayPay株式会社)

4. ポイント交換プログラムの寄付活用

ユーザー向けポイントプログラムの選択肢に医療機関支援への寄付を設け、ポイントを寄付金に交換するカタチ。

「セゾンカード・UCカード」会員向けに、永久不滅ポイントを医療機関支援の寄付金に交換する支援を実施し、2020年6月で受付終了。(株式会社クレディセゾン)

他にも、商品ノベルティのマスクにPWJの支援活動がわかるQRコードをプリントしたり、自社のクラウドファンディングサイトでPWJを通じた医療機関支援の寄付金を集めたり、各企業の資源を医療機関のニーズにマッチングさせた多様な取り組みが行われ、現在もその動きは続いています。

本業を通じて何ができるか?
自社の資源を見つけることが要。

いかしあう支援のカタチが生まれる背景には、どのようなプロセスや関係性のつくり方があったのでしょうか。

PWJへ問い合わせのあった企業へは会沢さんや新井さんがヒアリングを行い、医療現場のニーズにマッチする支援方法を提案し、企業側で承認がおりれば支援が実行される、というのが実際の流れ。PWJから企業への支援報告も行っています。

新井さん 合計200以上の企業と取り組みをして、コロナ支援への関心の高さを肌で感じましたね。PWJを初めて知ったという方も多かったので、お互いを知りながら手探りでやり取りを進めました。

寄付に慣れている外資系企業などからは、早い段階でまとまった金額を直接寄付いただき、医療機関支援の初動の活動資金として重宝したのですが、「私たちに何ができるんでしょう」という相談ベースのお話も多くありました。特に医療と関連の薄い企業は、「自分たちの本業を通じて何ができるのか」と模索されていました。

いかしあう支援では、自社の資源を見つけることが要になります。先に紹介したさまざまな支援は、企業側の希望使途と、企業の持つ資源を活かした支援方法の掛け合わせから生まれたもの。以下の図からは、企業の持つ資源というのは、自社商品や社員だけでなく、ユーザーや集客拠点、販促活動やSNSにまで広がることがわかります。

新井さんが整理した図。みなさんも参考にしてみましょう。

新井さん 各企業がユーザーを巻き込んで支援の輪を広げてくださった。そういう意味で、金銭面だけではない、意味のある支援のカタチだったと思っています。コロナ禍は誰もが当事者となる身近な問題だったので、この機会に私たちをはじめて知ってくれた企業さんも多かった。このご縁を丁寧につないでいきたいと思っています。

以前は民間企業で働いていた新井さんは、「本業を通じて社会貢献をしたい」と考えている企業人も多いと身をもって感じているそう。誰もが感染者にも広げる人にもなりうるコロナ禍において、全員が「当事者である」という意識を持ったからこそ、支援に乗り出しやすかったのかもしれません。

まだまだ先が見えない今、「こちらからも積極的に企業さんへお声がけしていき、ますます負担の増えている医療機関への支援方法を模索したい」「もっとみんなの力を引き出していく関係づくりがしたい」と会沢さん。

会沢さん 今後、自然災害やパンデミックが増えていく中で、企業による寄付や支援はおそらく加速していくと思うんです。その中で「本業を通じて何ができるか」を考えていくことが、より求められるのではないかと思っています。現場にも身を置いている私たちが対話のパートナーになることで、リソースの最適なマッチングを生み出したいですね。

“いかしあうつながり”を実現させる、
平時からのネットワーク

PWJでは、これまでの災害支援でも、企業と連携して物資支援などを行ってきました。

例えば、2019年の台風19号で発生した長野県の千曲川氾濫による水害では、会沢さんは前日から隣県で待機し台風通過後に現場へ移動。避難所などのニーズをすばやく調査し、アパレル企業と連携して防寒具や下着などの支援物資を調達しました。

2019年の台風19号で発生した長野県の千曲川氾濫時の物資支援の様子。

緊急時にすぐさま企業と連携できるのは、平時から「リソースの獲得」を意識してきたからだそう。

会沢さん 何かが起きてから声をかけても実現できないことも多いので、さまざまな企業との関係を平時からつくっておいて、災害時に物資支援ができるフローを整えたり、すぐにクラウドファンディングを立ち上げられるような仕組みを準備したりと、すぐに動けるようなネットワークを構築しています。

コロナ禍における企業との支援でいかせたのは、PWJの資源とも言える、そのノウハウやつながりです。中でも、マッチングに不可欠な医療現場のニーズや課題は、PWJの医師スタッフを通じて医療機関への調査を行うことで、的確に把握することができました。

正太郎 PWJの活動は、企業の資源を引き受け、それを現場のニーズに応える形で被災地や医療機関に届けることで、社会全体で共助していくための仕組みをつくっているんだと思います。いわば「大きな共助」のためのハブとかネットワークの役割を果たしているイメージです。

「面白いキーワードですね」と会沢さん。今でこそ「企業と市民社会が連携して支援ができる体制をどう社会実装していくか」と考えて活動しているものの、PWJが“社会のネットワークの重要性”に気づいたのは、2004年の新潟県中越地震の時だったといいます。

会沢さん 長く災害支援をしているスタッフからは、「イオンさんの駐車場にテントを建てて支援活動をした時に改めて『私たちの活動は外部のリソースがないとできない』って気づいた」と聞いています。東日本大震災以降は、実際にいろいろな企業と連携するようになりました。

資源を自団体だけで用意するのは無理だからこそ、社会のネットワークを通じ、企業が普段やっていること・使っている場所=資源へ緊急時にアクセスし、支援にいかせる状態を目指しているそう。

会沢さん それらをいかに現場のニーズとつなげていくか、マッチングして調整できるか、というところが、私たちの企業連携の腕の見せどころなんだと思います。

正太郎 それって、グリーンズが目指している像とすごく重なっています。ぼくたちは「いかしあうつながりあふれる幸せな社会」っていうビジョンを掲げているんです。世の中にあるさまざまな資源がいかしあえる状態を社会全体でつくることで、真の持続可能な社会に近づけると考えています。

いかしあうつながりカード」っていう、4つのステップで誰もが“いかしあうつながり”をデザインできる、考え方の補助ツールみたいなものがあるんですが、PWJさんのプロセスって、まさにその4つのステップと同じなんですよね。

① 現状を感じる、観察する
=コロナ禍で医療機関が逼迫している現状に気づく

② みんなのニーズを明確にする
=医療現場のニーズ・課題の把握、「支援したい」という企業のヒアリング

③ すでにある資源(リソース)を見える化する
=企業の資源を見つける。

④ 関係性をつなぎなおす
=企業の資源と現場のニーズをマッチングする

会沢さん まさにそうですね。④は特に「どうやってお互いがいい状態になるか」という視点で支援活動をしていることを言語化している気がします。私たちは「お互いに支援する側にもされる側にもなる」という考えを大事にしているので。避難所で被災者の方に作業を手伝ってもらうこともあるんですよ。支援され続けるだけって実は辛くて、「役に立つことが嬉しい」というのがあるんですよね。

いちばん大事な資源は
「何とかしたい」という“思い”

今回、企業が支援に取り組んだのは、CSRなどの担当部署からの発案ではないものも多かったといいます。別の部署のミーティングからアイデアが出たり、顧客からの問い合わせをきっかけに企業が顧客と一緒に支援していく関係をつくったりしたケースもあったとか。

正太郎 今回の企業連携が成立したのって、企業側の人材に、自社の資源を医療機関の支援にどういかせるのか真剣に考え、組織の垣根を越えた対話をしようとした人がいたのが大きかったのだと思っています。

商品による支援だけではなく、顧客との関係性をいかした支援の事例も伺っていると、「コーディネーター」のようなバランス感覚がありながら、熱い思いも持った人が社内にいることが大切なんだと思います。これまでの部署や顧客との関係も越えてしまうような人がいることで、支援のあり方も豊富になったんでしょうね。

では、会沢さんや新井さんは、企業の担当者にどのような印象を受けているのでしょうか。

会沢さん 「何かしたいんですよ」「本業としてやれることはないか」と、お金の寄付という域を越えてやろうとする担当者さんがいらっしゃったのが印象的でした。

結局、一番大事な資源って“思い”なんだろうなって、すごく感じましたね。「何とかしたい」っていう思いがあるから、自分たちの資源の再発見につながっていく。私たちからは「こういうのが必要とされてますけど、何かないですか」って投げかけるだけで、あとは企業側から動き出してくださったんです。

新井さん 「うちの会社ってこういう理念で始まっていて、こういうことを大事にしている」と丁寧に背景を説明してくださる方もいましたし、トップの方ご本人が連絡をくださるケースもありました。熱量をすごく感じましたね。特に、外資系やサスティナブルな社会づくりに思いが強いところほど、そういう傾向がありました。

正太郎 自社の利益を追求するだけでなく、社会全体を豊かにしたいとか、より良い社会をつくりたいという理念があるからこそ、自社のリソースを使って支援する企業も多かったんでしょうね。グリーンズも“いかしあうつながり”を掲げる団体として、有事の時はPWJさんと何かできたら嬉しいですね。今こうしてつながりができましたし。

企業とはいえ、結局は個人の集まり。一人ひとりが「何かしたい」と思った時に、社会との接点である職場で行動を起こすことは、ごく自然な流れなのかもしれません。

冒頭の「医療機関を支援するために自分にできることはなんだろう?」の答えにつながるヒントが、この鼎談を通して見つかったでしょうか。

会沢さんや新井さんのお話からは、一人ひとりの「支援をしたい」という思いを、自らはたらく企業を通じて、また一消費者として実現する可能性を感じることができたのではないでしょうか。

私はかつて、顧客のお買い物が支援につながるチャリティーショップで働いていました。そこで大切だと感じたのは、顧客とのコミュニケーションです。自分たちの思いや寄付金による支援内容を普段から伝えることで、顧客の関心や参加意欲が高まり、何かが起きた時まっさきに「できることはないですか」と声をかけてくれる存在になるのです。

今回の支援をきっかけに、各企業のみなさんが顧客とどのようにコミュニケーションを育んできたのか、次回からの企業担当者のインタビューではそんな話題にも展開していくのではないかと、期待が膨らみます。

(撮影: 鈴木智哉)

– INFORMATION –

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