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リサイクル率日本一のまちが「世界の未来をつくるラボ」になる。鹿児島・大崎町で、合作株式会社がはじめた“SDGsど真ん中”の仕事とは? #仲間募集

グリーンズ 求人での募集期間は終了しました。募集状況は合作株式会社にお問い合わせください。

缶・ビン、ペットボトル、プラスチック、新聞や段ボールなど。日々の暮らしのなかで、私たちは「リサイクルのため」にごみを分別します。でも、「どうリサイクルされているのか」まではくわしく知らなかったりしませんか?

鹿児島・大崎町では、各家庭でごみを27品目に分別。全国平均(約20%)の4倍にあたる約83.1%(2018年度)ものごみをリサイクルし、12年連続でリサイクル率日本一を達成しました(2006〜2017年度)。

この数字以上にスゴいのは、住民の誰もが「分別したごみがどう循環したのか」を知っていること。たとえば、生ごみや草木は自然発酵の力で堆肥化されて「おかえり環ちゃん!」という製品になって畑に還っていきます。聞けば聞くほど「そこまで考えられているなんて!」と驚くことばかりです(詳細は以下、本文にて!)。

これらの取り組みは、2015年9月に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(以下、SDGs)」の12番目「つくる責任、つかう責任」を達成するヒントになるもの。大崎町は、2021年1月に県内外の企業などと協働する「大崎町SDGs推進協議会」を発足し、「リサイクルの町から、世界の未来を作る町へ」の展開を進めています。

そんな大崎町に伴走するのが合作株式会社。全国各地の地域づくりに取り組んできた、齊藤智彦さん西塔大海さんが大崎町に惚れ込んで設立しました。

今回、グリーンズ求人では合作のプロジェクト・マネジャーと、その取り組みを伝えるメディア担当者を募集します。まずは、ふたりの“サイトウさん”をワクワクさせた大崎町についてご紹介しましょう。

ごみ焼却炉をつくるよりもリサイクルを選んだまち

大崎町は、大隅半島東部の人口1万3000人のまち。北部の台地には農畜産物を育む台地が広がり、南部は豊かな水産物に恵まれた志布志湾に面しています。マンゴーやうなぎの養殖でも有名で、食料自給率は少なく見積もっても2000%と言われるほど豊かです。

大崎町の基幹産業は農畜産業。ダイコン、ゴボウ、マンゴー、パッションフルーツなどのほか、ブロイラー(食用若鶏)は日本一の生産量を誇る

日南海岸国定公園の一部に指定されている志布志湾の救仁の松原。海岸沿いに約7kmに渡る防風林は、約240年前に塩害対策として住民によって植栽されたという

大崎町が「リサイクルのまち」へと舵を切ったのは、1998年のこと。その頃の小さな自治体の多くがそうであったように、大崎町ではすべてのごみを埋め立て処分していました。ところが、その埋立処分場が計画よりも早く埋まってしまうことが発覚します。

悪臭を放つ処分場を新たにつくるには、周辺住民の反対が予想されました。かといって、焼却炉を新設するとなると、大崎町の規模では約30億円の建設費に加えて、毎年2億円の維持管理費がかかると言われました。。残された選択肢は埋立処分場の延命化。大崎町はごみのリサイクルを選びました。

大きく変わっていく大崎町を、5期に渡って背負っているた東靖弘町長。「ごみの分別を続けることで、子どもたちの環境教育の面でも大きな効果があった」と話してくれました

大崎町役場では、職員に対してリサイクルに関する研修を徹底して実施。分別開始前の3〜4ヶ月間は、住民側の予定に合わせて約450回もの説明会を行ったそうです。住民側からは「衛生自治会」という組織が立ち上がり、集落ごとのごみ分別回収をサポート。当初は「缶・ビン・ペットボトル」の3品目だった分別品目は、現在は27品目にまで増えました。

こうした取り組みの結果、「数年でいっぱいになる」と言われていた埋立処分場は「あと40〜50年は大丈夫」という状況に。また、住民ひとり当たりのごみ処理事業経費は、全国平均(約16400円)の3分の2(10500円)に抑えられたのです。

では、分別された資源ごみがどんなふうに循環しているのでしょうか? そのしくみも、ぜひ見ていただきたいと思います。

大崎町のごみ分別指導ポスター。現在では、ベトナム人実習生の増加に対応して、英語とベトナム語バージョンも用意されている

リサイクルのしくみがまちの豊かさをつくる

大崎町のリサイクルを引き受けているのは、中間処理施設「そおリサイクルセンター」です。プラスチック、缶・びんは検品を行なって圧縮してリサイクル業者へ。廃食油は軽油代替燃料に精製して、ごみ収集車を走らせる燃料になり、大きな家具でまだきれいなものは月1度の「掘り出しもの市」で販売しています(1品の値段は1000円!)。

そおリサイクルセンターの内部のようす

空き缶をアルミとスチールに選別してプレスする機械。この機械のおかげで分別品目を減らせている

ギューっと圧縮されてキューブ状になった空き缶

これらの資源ごみは、各家庭で缶・びん類だけでなく、お弁当についている小さな醤油の袋までも(!)洗って乾かし、指定のごみ袋に入れられています。汚れの少ない資源ごみの方がより高価で引き取られるからです。

生ごみや草木は、そおリサイクルセンターの関連施設「有機工場」に運び込まれます。草木は破砕機で砕いてチップにし、草木と生ごみを体積比で約3対1の割合で混ぜて保管場へ。よもぎの乳酸菌で消臭したのち、土着菌(地域に棲み着いている菌)の力で発酵させます。

草木チップ3〜4に対して生ごみ1を混合する混合場。この破砕機はなんと焼酎づくりのためにサツマイモを破砕する機械を使っているそう。さすが焼酎の本場!

発酵する草木と生ごみ。菌の活動熱で約80度にもなるため蒸気があがる。週一回切り返し(攪拌)で水と空気を与えることで発酵が進み約4ヶ月で堆肥化する。

週に一回切り返し(攪拌)で水と空気を与えながら発酵させること約4ヶ月。草木と生ごみは約10分の1にまで減って完熟堆肥になります。ちなみに、発酵プロセスを見守る作業員は「いきものがかり」と呼ばれているそう。たしかに発酵するごみを見ていると生き物を見ている気持ちになります。

堆肥は「おかえり環ちゃん!」という製品になり、大崎町の農地に循環しています。軽トラいっぱいの草木を運び込んだ農家さんが、「おかえり環ちゃん!」を積んで帰るなんてこともあるそう。このまちでの「リサイクル」や「循環」は、ただの言葉や概念ではなく、人々の暮らしにしっかりと組み込まれていて、まさに「持続可能なしくみ」になっているのです。

大崎町だからこそ世界に伝えられることがある

大崎町のリサイクルシステムは、他にもさまざまな効果を生んでいます。まず、リサイクルセンターに約40人の雇用を創出したこと。人口1万3000人のまちですから、この数字は決して少なくありません。年間約1000万円にもなる資源ごみの売却益の一部は、「リサイクル未来創生奨学金制度」としても活用されています。

また、衛生自治会は各町内のごみステーションでの分別を指導するだけでなく、地域のリーダーとしてベトナム人実習生の暮らしのサポートなども行なっています。さらに、2012〜2015年には、国際協力機構(JICA)を通じて、ごみ問題に悩むインドネシア・デポック市に「大崎システムの技術移転」を実施。この取り組みは高く評価され、バリやジャカルタでの支援にもつながりました。

リサイクルを通じて、住民が自分ごととしてまちづくりに関わっていき、世界の課題解決にまで大きく展開しているなんて……とワクワクしてきませんか? 合作の代表・齊藤智彦さんは、2018年に初めて大崎町を訪れたときの気持ちをこんなふうに話してくれました。

合作株式会社・代表 齊藤智彦さん。海外でアートを学んだ後、日本で地域政策に関する研究職を経て、日本各地で地域プロジェクトを実施していた

齊藤さん 役場の職員さんやまちの人たちの動きがすごすぎて。初めて来たときから「このまちはなんかあるぞ」と思ったし、すごく惹かれるものがありました。2回目にきたときに役場の職員さんにリサイクル施設を案内してもらうと、「これからの未来のために、世界に対して何をしていかなければいけないか」を自分の言葉で語られることに本当に驚きました。

このまちの人たちは、「ごみを分別することがこの世界を良くすることなんだ」とよくわかっていることに感動して、すごくワクワクして。こちらから大崎町の価値をもっと世界に広げるお手伝いをさせてもらえませんか」とお願いしたんです。

2019年1月、齊藤さんは大崎町の政策補佐監に就任。SDGsや未来のための計画づくりの仕事をはじめました。関われば関わるほどに齊藤さんの「ワクワク」は高まっていき、信頼する長年の友人であり仕事仲間だった西塔さんを、大崎町に招くことにしたのです。

「動きがすごすぎるまちの人」のひとり、大崎町役場企画調整課の中村健児さん。一見クールだがまちの未来を語る言葉は熱く、協議会の取り組みをリードしている

ローカルを知り尽くしたふたりが選んだ「未来のフィールド」

齊藤さんに誘われて大崎町を訪ねた西塔さんもまた、まちの人たちとその取り組みに「すごくワクワクした」と言います。

西塔さん 今まで20以上の自治体とお仕事をさせてもらって、どこも好きだし思い入れがあります。ただ、自分の30代、40代の軸になる仕事としては、地域のためにも、日本のためにも地域の外にある企業ともつながる事業をやる必要があると考えていました。「それだけの引力をもつまちってどんなところだろう?」と思っていたなかで、大崎町の引力はすごかったんです。

大崎町の人たちはすごくまっすぐな目で、このまちから世界の未来を語るんです。しかも、夢として語るだけでなく、自分たちのつくりあげた仕組みをインドネシアに技術提供をしたという実績もある。ローカルからグローバルな視点をもてるのは本当にすごいことです。なのに、意外と知られていなかったのは、まちの人たちがあまりにも当たり前にすごいことをしているからだったのかも。「あ、見つけちゃった!」という感覚もありましたね。

西塔大海さん(左)。東日本大震災当時、気仙沼の避難所を運営。全国20以上の自治体の地域づくりのサポート、地域おこし協力隊に向けた研修などの実績がある

もともとお互いのプロジェクトを手伝いあってきたふたりは、大崎町との出会いが決め手となって会社を設立することに。西塔さんが「そろそろ一緒にやるんだよね? って空気になって。結婚にたとえるなら、プロポーズのない結婚かな」と言うと、齊藤さんは「住むのにいい家が見つかりました、みたいな感じだったね」と穏やかに応えます。

齊藤さん 「未来の社会を見れるいいフィールドがあったよ。このまちなら、世界につながる可能性もあるよ、大海くん!」って声をかけました。それに、大崎町から世界に向けたSDGsの取り組みを始めるには、大海くんなしにはやれないと思っていたんです。

合作としての仕事はじめは、2021年1月に動き出す「大崎町SDGs推進協議会(以下、協議会)」の立ち上げ。鹿児島相互信用金庫、MBC南日本放送、株式会社そらのまちとともに、合作もメンバーに名を連ねました。これから協議会では、何が始まろうとしているのでしょう?

SDGs達成のど真ん中でやれる仕事がここにある

2030年のSDGs達成に向けて、SDGs目標12に掲げられている「つくる責任、つかう責任(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)」に基づき、大崎町は「2030年までに使い捨て容器の完全撤廃・脱プラスチック」を目標に設定。使い捨て容器に代わる便利な手段を開発し、2027年までに80%の普及率を目指しています。

まるで夢のような話ですが、「大崎町ならできるはず」とふたりは確信しています。

齊藤さんたちが大崎町に関わる方々と一緒に練り上げてきた「未来の大崎町ヴィジョンマップ」

齊藤さん 大崎町では、使い捨て容器やお弁当についている醤油などの小袋まで全部洗って分別して、月一回の回収まで各家庭で保管しています。一般的には便利とされる使い捨て容器のお弁当のほうが、このまちの人にとっては不便なんですよ。もしリユースのしくみをつくれたら、このまちなら簡単に受け入れられる。しくみに対するフィードバックも得られるので、消費材メーカーの実証実験の場としてもニーズがあると思います。

西塔さん 20年以上にわたる取り組みのなかで、大崎町内だけでやるリサイクルは限界が見えています。ここから先は、外部の消費材メーカーとつながって、物流のしくみから考えないと進めない。そこで、協議会という受け皿をつくることで、複数の企業とのコラボレーションを同時に走らせることになったんです。

今回、合作で求人募集するプロジェクト・マネージャーの方には、こうした町と企業のコラボレーション・プロジェクトを担当していただくことになります。

SDGsの達成に向けて、国内ではさまざまな取り組みがはじまっていますが、大崎町ほどに明確な手応えをもって「この取り組みがSDGsの達成につながっている」と感じられるフィールドはなかなかありません。今回合作が求めているのは、ローカルでありつつグローバルな視点で、地域の取り組みから世界の課題解決に一緒にチャレンジする人。「SDGs推進のど真ん中」で仕事を共につくっていく仲間なのです。

大崎町SDGs推進協議会が拠点を置く「リビングラボ(仮称)」は、企業や事業者とのプロジェクトを同時に進めていく“創発の場”になる

西塔さん プロジェクト・マネジャーには、新しいプロジェクトの要件定義をして、立ち上げから運営ができる方に来てほしいです。地域でも、企業でもいいのですが、そういうプロジェクトの経験がある人が望ましいです。広報・メディアリレーションには、大崎町と僕らの取り組みをしっかり理解して、伝える力のある人に来ていただけるとうれしいですね。

今、協議会では「リビングラボ(仮称、社会実証実験推進室)」という、協働のためのオフィスの設計に取り掛かっています。そこは、協議会のメンバーが働く場所であると同時に、ここから生まれた製品やサービスを展示する場所にもなる予定。合作のメンバーになる人は、リビングラボの場づくりから一緒に考えていくこともできます。新しい場づくりも楽しそう!

「合作」という新しいプロトコルをつくりたい

「合作」という言葉は、社名であると同時にこの会社のコンセプトでもあります。最後に、ふたりが「合作」によってつくりたい未来について聞いてみましょう。齊藤さんは、もともと彫刻をつくっていたときの感覚になぞらえて話してくれました。

齊藤さんはアート(彫刻)、西塔さんはサイエンス(物理)という、異なる文脈をもつふたりの「合作」がはじまろうとしている

齊藤さん 美しさは単独で決まらなくて、人であれば体の部位、振る舞いや佇まいなどその人をかたちづくるいろんな要素のバランスでできています。なので、ひとつの点が決まれば自ずと次に置かれる点は決まってくるんですね。

僕は、大崎町と「合作」する人や企業との関係性のバランスを整えながら、美しい社会の関係性のあり方を紐解いて、構築していきたい。大崎町でこれからつくる「合作」のかたちが見えてきたら、必然的に次の「合作」も見えてくるかなと思います。まずはここで、「合作」できる人をしっかり増やしていきたいです。

この社会は、一人ひとりの関係性が無数に編み合わされた総体としてあるもの。ときに歪んでしまうこともある、その関係性のバランスを取り直して構築しなおしていくこともまた「合作」なのだと齊藤さんは言います。

西塔さん 僕は、そんな智さん(齊藤さん)の隣で、人が生きていく場所としてのローカルで、未来にむけてちゃんと社会にインパクトを残せる仕事を生んでいきたい。今までも、そういうつもりでたくさんの仕事に関わってきたけれど、次世代の仕事づくりを考えたときに、外から関わるのではなく自分の会社で、人を受け入れながらやっていきたいと思ったんですよね。

僕はもともと物理学の研究者を目指していたサイエンスの人で、ともさんは彫刻をしていたアートの人です。全然違う文脈をもつこのふたりだから、他の人たちが「合作」するときのプロトコルをつくれるんじゃないかと思っています。

穏やかに、でもとても情熱的にこれからの仕事を語るふたりが一緒に働きたいのは「だいたい機嫌がいい人」、そして「自分を大切にして、家族を大切にして、社会を大切にする人」。「この仕事は面白すぎて、うっかりすると自分や家族の優先順位を下げてしまいそうだから」と西塔さんは笑いました。

「この人たちと働くのはすごく面白いよ!」と心から言えるおふたりです

自分たちの日々の暮らしにある「ごみを捨てる」という行為から、自分と社会の関わりを実感して、地域からこの世界の未来をつくるーー正直に言えば、「ホントにそんな仕事あるの?」と目をこすりたくなるような求人だなと思いました。でも、これはホントの話なんです。

もし、この記事にワクワクしたなら、“サイトウさん”たちや大崎町の人たちと一緒に働くことを、ぜひ検討してみてください。また、もしも「きっと、あの人なら大崎町に興味をもちそう」という知り合いがいたら、この記事をシェアしてください。あなたが送るメッセージからも、持続可能な世界へとつながる関係性が生まれるかもしれません。

(写真: 東花行)

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説明会のお知らせ※イベントは終了しました

合作株式会社は今回の求人についてのオンライン会社説明会を開催予定。代表の齊藤さんと西塔さんから、この仕事の面白さや条件面など、1時間ほど話を聞くことができます。求人に興味がある方は、ぜひ参加をご検討ください。

【開催日程】
① 1月16日(土) 21:00〜22:00
② 1月23日(土) 21:00〜22:00
③ 1月30日(土) 21:00〜22:00

【開催場所】
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【参加費】
無料